怠惰の大罪を背負ったけど何の因果か同時に娯楽神の加護を授かったおかげで働いたら負けの無敵状態になってゲーム三昧

きゅーびー

世界が変わっても人間そんなに変わらない3


 念願の生エルフのステータスを確認して最初に思ったことは優秀だという事、彼女らは全員加護持ちで魔法スキルを所持していた。
「全員加護持ち……<植物神の加護>か」
『はい、マスター。ちなみに彼女達のカテゴリーは亜人型、植物との親和性が高い亜人ですので全員が<植物神の加護>を生まれつき保有しているそうです、中には例外も存在するそうですが』
 感心しているとエルフ達の恐らくリーダーが心配そうな表情で再び口を開く。
「児玉様……どうでしょうか私達は?……お役に立てそうですか?」
「勿論だよ!文句の付けようもないよ!ついでにスキルと加護の説明を分かる範囲で良いから教えてくれ!」
 代表でリーダー(暫定)に説明をしてもらい英美里にメモを取ってもらう。
 実際にステータスを見れば分かると思うが、想像よりも優秀な彼女らエルフに不満などあろうはずが無かった。


  エルフ(リーダー) LV1

 スキル 水魔法/弓術/剣術/魔力操作/ファーマー

 加護 植物神の加護


・水魔法 水属性の魔法を行使する場合、効果上昇
・弓術 弓類を扱う場合、能力値上昇
・剣術 剣類を扱う場合、能力値上昇
・魔力操作 魔力を扱う場合、操作性上昇
・ファーマー 農業、畜産を行う場合能力値上昇


 植物神の加護
・鑑定(鑑定対象の情報が分かる)
・同類言語理解(同類の言語が理解出来る)
・アイテムボックス(自身に所有権のある物を収納出来る)
・植物の英知(植物に関する知識の理解力上昇、植物との親和性上昇、植物系魔法使用可能)


 魔法に関してはそれぞれのエルフで得意な魔法が違うらしく、リーダーは水魔法の適正が最も高くスキルとしても現れているらしい。
 他のエルフ達は、土魔法、風魔法、光魔法のスキルを所持していた、リーダー含め全員が他の属性の魔法も扱えるみたいだが、適正が低いと魔法の効果は全然違うらしい。

「ちなみに植物魔法もみんな使えるんだよね?」
「はい、<植物神の加護>がありますので使えます」
 気になる事を更に質問していく。
「普通は使えないの?」
「はい、魔法は適性が無ければ使えませんので、ちなみに植物魔法は少々特殊で<植物神の加護>が無ければ扱えない<固有魔法>という分類になります」
「<固有魔法>か……かっこいいな!水魔法とかはなんて分類なの?」
「はい、火、水、風、土、光、闇、これらの魔法は<属性魔法>と言って適性があればスキルや加護に関係なく使えます」
 その後も魔法についていくらか質問して、実際に魔法を使う所を見せて貰うことになった。
「ここでは危ないので外でお見せしますね!」
 ベルに良い場所が無いか聞いてから、ベルをコアルームに残し山の中で広場のような開けた場所へ英美里の先導でエルフ達を伴って移動する。

 ☆ ☆ ☆

「ここなら大丈夫かな?」
 バスケットコート程の広さがある広場へと移動してきてリーダーに確認する。
「問題ありません!では早速……ウォーターランス!」
 直後リーダーの目の前に長さは大人一人分は優に超える程の長さで太さは一番太い所で大人の腰回り程の水で作られた円錐形の槍が現れる。
「これが魔法!スゲースゲー!なんで浮いてんの!っていうかランスの造形カッケー!」
 語彙力も低下し、美しい魔法を目の前にして只々童心に帰る。
「では……行け!」
 リーダーの合図の後にウォーターランスは目にも止まらぬ速さで広場の地面に着弾し、辺りに大きな爆発音と水が弾けるような音が響き渡る。
「おいおい……予想をはるかに超える威力なんだが……」
 予想以上の威力に頬が引き攣る。
「これでもだいぶ威力は抑えておりますよ?」
 着弾地点を見やると、広場に軽自動車がすっぽりと収まりそうな大きさのクレーターが出来ていた。
「本来水魔法であればもっと威力を出せますが、他の属性魔法であればこの程度が威力の限界になりますのでこの程度に抑えました!」
 褒めてほしそうな人懐っこい純真な表情でコチラを見てくるリーダー。
「お、おう凄い……ですね」
 この程度がどの程度か良く分かる魔法の実演に冷や汗を流しながら、言葉少なめにリーダーを称賛する。
「地面が抉れてしまいましたので、土魔法で埋めてきます」
 土魔法が得意だと言っていたエルフがクレーターの側まで駆けていき一瞬でクレーターを元通りにしてこちらに戻ってくる。
「では続いては私が」
 風魔法が得意なエルフが声を掛けてくるがそれを遮る。
「ちょっと待って!もういいよ!魔法がどんなものか良くわかったから!ありがとう!一旦ベルの所に戻ろう!」
 早口で捲し立てるようにベルの所に戻ろうと提案し、再び英美里の先導でベルの待つコアルームへと帰還する。

 ☆ ☆ ☆

『マスター!おかえりなさい!』
「ただいまベル!」
 ベルの元気な声を聞くと安心して元気が湧いてくる。
「魔法凄かったよ!」
『はい、マスター!魔法の実演も終わり、こちらも畑と田んぼの準備が出来ましたので、彼女達を仕事に就かせても良いですか?』
「分かった、これからはベルから色々指示があると思うけど、お仕事頑張ってね!」

「「「「「はい!」」」」
 一斉に大きな返事が返ってきて少し圧倒されるも仕事に向かうエルフ達を笑顔で見送る。

「ベル!英美里!」
 焦りながら落ち着きなくベルと英美里に話しかける。
「エルフ強すぎない?」
『いいえ、マスター。まだそれ程ではありませんよ、今のエルフが100人居ても英美里には敵いませんし、マスターのスキル効果の影響もありますのでこれからの成長に期待ですね!』
「そうですね、まだ私の足元にも程遠いので、彼女達には是非とも頑張って頂きたいですね!」
「あっ……ソウナンデスネ」
 エルフが強すぎると思っていたら英美里の方がもっと強かった、この<怠惰ダンジョン>においての最弱が決定し、俺は心の底から感謝した<怠惰の従者>(自身の支配下にある者の謀反率低下)という神スキルに。

「もう俺必要無いんじゃね?」
 優秀な家族が増えて嬉しくなり、思わず呟きながらも記憶を呼び起こす。
 告白して振られた事、上には上が居ると思い知らされた事、努力は才能を超えられないと悟った事、そもそも努力出来るという事自体が才能である事、今思い返せばどれもこれもどうでもいい事ばかりで面倒臭くて青臭い。

『いいえ、マスター!私達には貴方が必要です!居てくれるだけで良いんです!』
「そうですよご主人様!たとえご主人様が何も成さなくとも、私たちが代わりに成し遂げます!」
 力説する彼女らの言葉を聞いて更に嬉しくなる。

 人より優れて居なくても、誰よりも弱くても、家族が優秀であるならばそれは俺にとっての幸福である。
 それは妹が生まれてきてからずっと変わらない。

 児玉拓美は<怠惰>である。
 自分で何かを成す事を諦めているから。
 自分以外の可能性に期待できるから。
 なにより自分が何もしなくても良いから。
「ありがとう!お前らに任せておけば安心だよ!」

 ☆ ☆ ☆

 ベルにアバターの新機能も報告し、新しい家族も増えて仕事に向かいやる事も無くなったので家に戻ろうとベルに別れを告げる。
「ベル!そろそろ帰るよ後は任せた!」
『はい、マスター。DPに余裕が出来れば<ダンジョン鶏><ダンジョン豚><ダンジョン牛>を追加していきますが構いませんか?』
「畜産か……それって確か県の農林水産なんたらに申請しないといけなかったような……畜産はちょっと待ってくれ、色々と調べてからじゃないとバレた時面倒だ」
『バレなければ良いのでは?』
「そりゃそうだが……牛とか豚とか遠目からでもバレるだろ?」
『ではダンジョンの階層を増やしてそこで畜産を行いましょう、外部から侵入されなければバレる事はありません!』
 やる気満々なベルの提案にどうするべきか悩む。
「新しい階層の入り口って何処にできるの?」
 リスクはなるべく避けたい俺はベルに質問する。
『はい、マスター。新しい階層はこの洞窟に繋げてコアルームの場所も新しい階層に移します』
「それだと距離的にベルに会いに来る時に面倒じゃない?」
『<ダンジョン階層転移門>というものがありますのでそれを使えば今よりも手間は減りますよ!』
「詳しく!」
 ベルに<ダンジョン階層転移門>について説明して貰った。

・行ったことのある転移門に転移出来る
・設置場所は任意で決められる
・転移には使用者の魔力が必要
・誰でも使用出来る
 
「めちゃくちゃ便利だけど、これってダンジョン攻略者の為にあるような機能じゃない?」
『いいえ、マスター。これは本来ダンジョンを管理するものが管理しやすくする為の機能です、ですが設置すれば悪用出来るのも事実です』
「でも、攻略者にはありがたい機能だよね?」
『はい、マスター。ですのでこの転移門は見つけにくい場所に設置するのが基本です』
「なるほどね……何処に設置するかが重要なのか、それで何処に設置する予定なの?」
『はい、マスター!新階層は作ってから考えますが、まずはコアルームとマスターの部屋に設置したいと思います!』

「却下で」



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