怠惰の大罪を背負ったけど何の因果か同時に娯楽神の加護を授かったおかげで働いたら負けの無敵状態になってゲーム三昧

きゅーびー

始まりは突然に11


 ベルに別れを告げ<怠惰ダンジョン>を後にし、興奮冷めやらぬままに家に戻り早速アバターの検証をする為に鼻歌交じりに自室でアバターを取り出し自身は布団に寝転がる。
「準備よーし!夕飯には少し早いが早速実験だな!アバター操作!」
 検証が主目的ではなく、アバター操作自体が主目的に変わりつつある程にテンションは高く鼻息を荒げながらアバター操作を開始した。
 視界はもちろんアバターメインに切り替えコアルームで行ったように動作確認を行っていく。

「動作確認良し!いやーマジで凄い!フルダイブ型VRってこんな感じなんだろうなー!世界に感謝!いやーこの年になってこんなにテンション上がる事なんてそうそう無いぞ!」
 興奮したままに部屋で一人布団に寝転がり自分そっくりなアバターを前にして独り言も増えていくが、ふとアバター自体は声が出ていない事に気付く。
「そっか、アバターは喋らないのか……なんかシュールな光景だな確かにアバターの口も動くし呼吸もしてるから、本当にもう一人の自分がそこに居て動いてるのに、にも関わらず声が出てるのは本当の自分の体だけ……これなんとかなんないのか?あまりにも不便だし味気ないな」
 アバターからは発声出来ないという不満点はあるものの、アバター操作に段々のめり込んでいく。
「まずは、服を着ないとな……アイテムボックス」
 アバターの目の前に黒い靄を作り手慣れた動作で黒い靄に手を突っ込む。
「あれ?おかしいな、すり抜けた?」
 黒い靄に手を突っ込むがアバターの腕はそのまま黒い靄をすり抜けていく。
「アバターではアイテムボックスは使用不可ってことか……まぁしょうがない自分で出すか」
 アバターではアイテムボックスの使用が出来ない事実に多少もやもやしたものを感じるも自分の体を動かし服を取り出し、アバターで服を着ていく。
「良し!気を取り直して……料理しますか!」
 アバターで上下スウェットに着替えてから台所に向かいながら今日の献立を考える。
(今日はなにを食べようかな……とりあえず米でも炊きながら考えるか)

 ☆ ☆ ☆

 米を炊飯器にセットし終えて、電子レンジで解凍していた鶏もも肉を熱したフライパンの上に油を引いて焼いていく。
 その間に大根をおろし金で擦っていると、おろし金に指が引っかかるのを感じ指を見つめる。
(痛ッ……くは無いのか、それにしても不思議な感触だな血も出て無いし確かに思いっきり擦った感触はしたけど、痛覚はフィードバックしてこないし肉体的疲労も全く無い……正直ありがたいけど)
 痛覚と肉体的疲労も感じないアバターに感謝しつつ料理を完成させ机の上に並べた状態で意識を本体に戻す。
「よーし!完成!……なにはともあれ飯食ってから、もう一回ベルの所に行かないとな」
 居間に向かい並べられた夕飯を尻目にアバターの指先を確認してから、アイテムボックスに収納する。
「傷は付いてるけど出血は無し、でもこれ修復とか出来るのかな?まぁいいや飯食おう、いただきます!」
 白米、焼いた鶏肉と大根おろしにカボス醤油、アイテムボックスから袋詰めのカット野菜を取り出し袋の口を開けてゴマドレッシングを直接ぶち込み適度に馴染ませながら料理に手を付けていく。
「おろしとカボス醤油最高だったな!ごちそうさまでした」
 夕飯を腹いっぱい食べて幸せな気分のままインスタントコーヒーを片手にまったりとした時間が流れていく。
「もうすぐ日も落ちるな……ぼちぼち綺麗な夕焼けでも見ながらベルに会いに行きますか」
 コーヒーも飲み終え、赤い大きな懐中電灯を片手に家を出る、昔から変わらない夕焼けを眺めながらゆっくりとダンジョンへと歩いて行く。

 ☆ ☆ ☆

「おーい、ベルー!」
『はい、マスター』
 落ち着いた声音でベルが返事を返してくれる。
「どうだった?<怠惰の業>は発動しなかったか?」
『はい、マスター!大丈夫です<怠惰の業>は発動しませんでしたよ』
「おぉー!やっぱり!これでとりあえずは安心だなダンジョン内でなら特に問題も無く活動出来そうだ、まぁ油断せずこれからも色々検証しながらやっていこうな!」
『はい、マスター!こちらもDPに多少余裕が出来ましたので、DPを使ってマスターとの連絡手段を入手しましたので試してみても良いですか?』
「いいね!もうそんな事が出来るのか凄いなベルは!ちなみにどんな手段を使うの?」
『はい、マスター!マスターの領土が素晴らしいおかげです、沢山の資源をDPに変換させて頂きましたし、野生動物や昆虫等のおかげですね!季節も春で良かったです!』
 興奮した様子のベルが矢継ぎ早に言葉を紡いでゆく。
『それでですねマスター!DPを使ってスキル<念話>というものを取得したのですが、これは互いに<念話>を持っていないと使えないみたいなので一度私に触れていただけませんか?そうしましたらこちらでマスターにも<念話>を付与致しますので!』
「ほー!念話か、いいねーいかにもテンプレっぽくて!」
 ベルの元まで歩いて行きベルに触れる。
『はい、マスター!これで<念話>を付与出来ました!確認してみてください!』
 触れてすぐにベルから報告される、ステータス画面を開いて確認するとスキル欄に<念話>が追加されていた。
「<念話>増えてるよ!それでこれはどう使うの?」
『念話したい相手を意識して喋りかけるイメージです』
《どう?こんな感じ?》
《はい、マスター!聞こえます!こちらの声も聞こえますか?》
《おぉー!凄い凄い!聞こえるよ!ちなみにこれ有効範囲とかってわかる?》
《いいえ、マスター。有効範囲については検証が必要かと思われます》
《なるほど、じゃあ一回家に戻りながら念話してみるよ!》
《はい、マスター!》
 念話の有効範囲を確認しながら家に帰る。
《とりあえず家までは有効範囲内だな、ところで……これって<怠惰の業>が発動したら意味なくない?》
《はい、マスター!そのことで相談がありまして、実はマスターのお傍に護衛兼連絡役としてモンスターを配置したいと思うのですがどうでしょうか?》
《そういうことか……まぁいいんじゃない?あんまり大きかったり家を荒らしたりしなければ》
《ありがとうございます!候補が3体居るので、説明いたしますね?》
 ベルからモンスターの候補を聞いていく。
《まずはデビルバトラー、カテゴリーは魔人型いわゆる悪魔の執事です》
《そうきたか……次は?》
《続いてはニンジャキラーデビル、カテゴリーは魔人型いわゆる忍者殺しの忍者です》
《あっ……はい最後は?》
《最後はメイドラキュラ、カテゴリーは魔人型いわゆるドラキュラの家事使用人です》
《メイドラキュラで》
 即答だった、もはや一択であると思われる候補にベルがふざけてはしゃいでいるのかと勘繰った程だった。
《では、メイドラキュラを生成してそちらに送りますね、<怠惰ダンジョン>の最初のモンスターですし、戦闘力も高いのでコア守護者に設定しますね》
《あぁ……良く分からんが分かった、名前とかって付けた方がいいのかな?》
《ネームドモンスターには能力値や成長値に恩恵がございますし死んだ場合でも再生成可能になりますので、で名付けは良い考えかと、ですがネームドモンスターはダンジョンの総階層分しか行えませんので現状メイドラキュラにしか行えませんがよろしいので?》
《名前を付けるというのは重要なことなんだな……いいよ、メイドラキュラに名前を付けるよ現状モンスターは一体しか居ないし自分の傍に居てくれる人に名前がないのは寂しいしね》
《わかりました、では生成しましたのでそちらに送ります<念話>だけ付与しておきましたので、名付けをよろしくお願いしますマスター》
 こうして<怠惰ダンジョン>初のモンスター<メイドラキュラ>が誕生した。




「では、ご主人様の元へ向かいますねベル様」

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