怠惰の大罪を背負ったけど何の因果か同時に娯楽神の加護を授かったおかげで働いたら負けの無敵状態になってゲーム三昧

きゅーびー

始まりは突然に8


 「あれ……いつの間にか寝てたな……眠い……怠い……腹減った」
 やけに眩しい日差しで半強制的に布団の上で目を覚ます、起き抜けの体は空腹を訴えてくるが頭がぼーっとして体が重い、昨日もネトゲ中に睡魔に抗えず布団に潜りこんでいたらしい。

「今何時だ?」
 布団の上で上体を起こし頭が覚醒していくのに合わせてを時計に目を向ける。
「8時か……とりあえず飯の準備しないと」
 毎朝ではないが、昔からの習慣もあり朝食は出来るだけしっかりと取ろうと、朝食の準備の為に台所へと向かおうと布団から起きようとして、ふと昨日の出来事を段々と思い出す。
「そういえば昨日世界がヤバイって……ステータス」
 昨日の事は夢だったのかと思い、思わずステータスと唱える。
「夢じゃない……!夢じゃない!」
 視界に現れた自分のステータス画面に、昨日の事が夢じゃないとわかると一気に頭が覚醒し、今日やろうとしていた事を頭の中で整理していく。
(昨日の事は夢じゃなかった、今日やるべきことは世界や国の動向と一般人の反応、ダンジョンの確認、店長への連絡、食料の確保、それから美奈への連絡……最低限こんなもんか?)
 今日の予定を頭の中で立て、この時間なら大丈夫だろうとテレビの電源を点けて携帯で店長の名前を探し、店長の電話に電話をかけようとして、テレビから聞こえてきた声でテレビに目を向ける。


『繰り返します、日本政府からの会見は、本日の18時に行われる予定です、安相首相から国民の皆様へ今後の日本政府の方針等が説明されるものとされていますが、薬師寺さんどう思われますか?』
『どうも、漫画家の薬師寺です、そうですねぇ会見のタイミングが世界各国よりも遅いのが気にはなりますが政府としても、馬鹿さんの上げた動画についての事実確認や今後の動き方とか検討している最中でしょうから、今後の日本としての方針とか、スキルや加護なんていうことについて詳しく説明して頂ければと思いますかね』
『そうですね、世界中の方達に一斉に同じ声が聞こえ、更にはスキルや加護というものの存在があの動画の方が言っていた通り存在するのであるならば、あの声の方が仰られていたダンジョン、モンスター、魔法、今まで、空想の物だったこれらが現実になってくるという可能性が高まりますから、今後の世界の動向や日本政府としての動きがますます大事になってきますからね』
『まぁなんにせよ、今日の18時からの会見次第でしょうね、日本は世界のどの国よりも国民が冷静だったのが、救いですよホントに』
『日本以外の諸外国では暴動なんかも起きていますからね、今後も国民の皆様には冷静な状態でなるべくいつも通りの生活を心掛けて頂きたいと思います、す……さてこの時間からは今日のお天気のコーナーです、竹達さーん!』
『はーい!』

 テレビにミュートを掛けながら、結構世界で色んな動きがあったのに日本は平和だなと感心しながらも、馬鹿はやっぱり目を点けられたのかと多少の同情をしつつ店長に電話をかける。
 数回のコールを挟み聞き馴染みのある声が電話越しに聞こえてくる。
『はいもしもし、拓美君?どうしたの?』
「あ、店長おはようございます、こんな朝早くにすいません」
『そんなに早くは無いから大丈夫だけど、どうしたの?』
 今までさんざんお世話になった店長に、優しくこちらの事を気遣ってくれる声に、こんな事を言うのは気まずいなと感じながらもバイトを辞めるか休業しようと思っている旨を店長に伝えるべく、重たい口を開く。
「実は……」
 言おうとして言葉に詰まる。
 店長とは俺が高校のバイト時代からの付き合いで、同じ高校の1つ上の先輩で、まだ高校生バイトの店員同士だった当時から変わらず優しい先輩との関係が壊れるかもしれないと、不安に駆られ急に恐くなった。
『……昨日のあの声でなにかあったの?』
「っ!」
 何かを察して、こちらを気遣うように遠慮がちな声音に胸がドキリとする。
「……昨日のあの声を聞いて、バイトをしばらく休むか、辞めようと思っています……すいません」
『そっか……わかった!今日から長期の休暇ってことにしとくから、なにかあったら必ず連絡してね!』
 先輩の何も聞かないでいてくれる優しさに不安は無くなり感謝の言葉を伝える。
「ありがとうございます……また、連絡します……」
『うん、じゃぁまたね……』

 働いていた会社を辞めて実家に戻って、自堕落な生活していた俺を見かねてバイトに誘ってくれた先輩にいつか恩返ししようと心の底から思った。

 ☆ ☆ ☆

「さて……美奈にも連絡入れとかないとな……今仕事中か?メッセだけ送っておくか」
 自分よりも優秀な妹に、さして心配もなく一応連絡はしとかないといけないなと思い、メッセージを送る。
(昨日は大丈夫だったか?こっちは大丈夫だぞ……とこれでいいか)
 メッセージを送るとすぐに既読になり、自分のメッセージに負けず劣らずな簡素な文だけが返ってくる。
(返信早いな、仕事中じゃないのか?……えぇと、こっちも今の所大丈夫、状況次第では実家に帰る……大丈夫そうだなまぁなにかあれば電話してくるだろ)
 肉親故の信頼か、妹が大丈夫と言ってるなら大丈夫なんだろうと安否確認もそこそこに朝食の準備に取り掛かった。

 ☆ ☆ ☆

「ごちそうさまでした」
 白米と目玉焼きとインスタント味噌汁の簡単な朝食を終えて、洗い物を流しに置いてから、出かける準備を整える。
(財布と携帯があればいいか、とりあえずスーパーに行って、日持ちしそうなものを中心に買って……飲み物は念のためペットボトルの確保用にも多めに買う……それとアイテムボックスは外では使用しない、ではでは、買い出しに行こうかね商品残っとけばいいけど……)
 近所のスーパーが品薄状態になっていなければいいなと思いながら、玄関で車の鍵を持って家から出る。
「いってきます」
 玄関の施錠を2度程確認して、愛車のコンパクトカーに乗って近所のスーパーへと向かう。
 道すがらいつもと違う様子は無いかとゆっくりと観察しながらスーパーへと向かうがこれといって町に異常もなく目的地のスーパーの駐車場へと車を停めて店内へと入っていく。
(やっぱり考えることはみんな一緒なのか、レトルト系と缶詰系はお一人様5個までだし、水も2Lが5本まで、逆に野菜と生鮮系は結構あるな、検証の為にも多めに買って帰ろう……調味料も大きいサイズのを選んで……一応お菓子も買って、後は野菜と果物の種を買えば良いかな?)
 買いたいものを揃えてレジに向かう、店内で何人か店員と揉めている人を尻目にそそくさと会計を済ませ、大量の荷物を袋に詰め店内を後にする。
(店員さんも大変だな、まぁこんな時だし不満があるのは分かるけど……あぁは成りたくないな……よし!帰ろう!)
 どうでもいいことは忘れ、愛車に荷物を積み、町の観察にも変化は無いため生鮮食品が少しでも傷まないように、来た時よりも早く家へと戻る。
「ただいま」
 家に着くなり、荷物をアイテムボックスに収納する、生鮮食品は半分を冷凍庫、半分はアイテムボックスにしまってから、昼食の準備を行う。
(昼はチャーハンでいいか……米だけはまだまだいっぱいあるし)
 近所のお米農家さんから直接買ったり、貰ったりするお米が家に大量に保管されている安心感も手伝って、簡単に素早く作れるチャーハンを作って食べる事にした。

「ごちそうさまでした」
 食器を流しに置いて、インスタントのコーヒーを飲んで一息入れた
「んー!一仕事終えたし、ダンジョン行ってベルに会いに行くか」
 なんだかんだで用事を終えて昼食を済ませると13時を回っていたので腹ごなしも兼ねてベルの所に顔を出しに行くことにした。

 ☆ ☆ ☆

 昨日よりも格段に歩きやすい山を進み目的の<怠惰ダンジョン>のコアルームの扉を開け放ち昨日ぶりのベルに声を掛ける。

「おーいベルー?」
『マスター!不用心過ぎます!己の肉体もマスターへの連絡手段も持たない事がこんなにも歯痒く苦しい事だとは思いませんでした!マスターへの連絡手段の確保だけでも早急に行います!』
「え?なにをそんなに憤ってんの?」
『何を暢気にして居られるのですか!自覚が無いのですか?今朝から何回も<怠惰の業>が発動しておられたんですよ?その度に、一時的に拠点化も解かれ、再度拠点化を繰り返しておりましたし、ダンジョンの管理権限も何度も解かれては取得しを繰り返しておりましたよ!私が自我を持っていて、管理権限を持っていたから良かったものの最悪の場合<怠惰ダンジョン>は消滅していたかも知れないんですよ!もっとご自分のスキルについて知っておいてくださいませ!お願いしますマスター……マスター自身がこのダンジョンのマスターで無ければ私は自我を得た意味がありません!』

「マジかよ……」


「怠惰の大罪を背負ったけど何の因果か同時に娯楽神の加護を授かったおかげで働いたら負けの無敵状態になってゲーム三昧」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く