妖狐な少女は気ままにバーチャルゲーム配信がしたい
第13話 新衣装とデータの受け渡し
むくり。
ボクはベッドから起き上がる。
学校は祝日でお休みで世間も同様にお休みだ。
つまり割と暇な一日ということになる。
そんな日はいつものメンバーが当然のように家にやってくるわけで。
「いよっ、来たぜ」
先頭の酒吞童子以下五名はいつも通り我が家にやってきた。
今回はみなもちゃんと黒奈、そして雫ちゃんも一緒だ。
いくら広めなボクの部屋と言ってもなかなかの密集具合だ。
ボクを入れて十名がひしめいている。
「暮葉様おはようございます!」
「暮葉おはよ~」
「暮葉、おはおは」
「おはよう、雫ちゃんにみなもちゃんに黒奈」
元気に挨拶する雫ちゃんたちボクのお付き三人組。
彼女たちは特に来る理由なかった気がするけど、なんで来たんだろう?
ちなみに酒吞童子たちはキャラクターデータの配布があるのでうちに来ている。
まぁそうでなくてもうちに来るんだけど。
「酒吞たちは配信設備の設置できた? お母様たちが送ってたと思うけど」
さっそくソファーで寛ぐ酒吞童子たちに声をかけた。
彼女たちは六人と三人で纏まって集まっていて、それぞれにのんびりと過ごしている。
「昨日全部終わったぜ? 俺たちは全員纏まってるから確認も楽だしな」
酒吞童子と大江山四天王、それとスクナの六名は同じ家に住んでいる。
広めの土地を亜寿沙さんが買い、そこに鬼たちで住める場所を用意したのだ。
まぁ簡単に言えば寮みたいなものだけど。
ボクも何度か行ったことはあるけど、とてもいい場所だと思った。
ちなみに温泉も設置されているのでやや郊外にあるわけだが。
とはいってもボクたちの住んでいるこの街も、どちらかというと都会寄りではないのであまり変わらないと思う。
「それはよかったよ。はいこれ。データが入ってるUSBメモリーだよ。着せ替え関連も入ってるけど、わからなかったらボクたちに聞いてね」
「おう、ありがとな」
「ありがたく受け取るよ」
「暮葉ちゃんありがとう!」
「感謝」
「ふふ、これで皆で遊べるね」
「おー、これがあれかー」
嬉しそうな茨木たち、そして興味深そうにそれをUSBメモリーを見るスクナ。
これで皆と一緒に遊んだり配信できると思うと、なんだかボクも嬉しくなってくる。
「そういえば暮葉もUSBメモリー持ってるみたいだけど、そっちは何なんだ?」
ボクが手に持っているUSBメモリーに興味を示した酒吞童子がそう聞いてきた。
「あ、これ? 葵姉様から渡されたボクのお着替え用データだよ。見る?」
そう言うと返事を待たずにボクは自分のパソコンにUSBメモリーを差し込むと、格納されているデータを呼び出した。
「これが皆とお揃いのブレザーの制服バージョンで、こっちがなぜかあるスクール水着バージョン。これ絶対使わないんだけど。それでこっちが……アイドル衣装!? 昨日の件に絡めたのかな。で、こっちが浴衣。浴衣と小袖ってあまり変わらない気がするけど気にしたらダメか。あとこれが狐さんキグルミパジャマかぁ。これはリアルにも欲しいなぁ」
今回渡されたのは五種類の着替えデータだ。
「なんか随分あるな。身内の強みってところか」
「しかし水着は可愛いね。でも少し本人に準拠しすぎているような」
「これはセンシティブってやつよね~。消されちゃう!」
「つるぺったん」
「これはこれでかわいいよー!」
「暮葉っぽさがと~ても出てるとおもうよ~」
皆言いたい放題だ。
しかし金熊童子のつるぺったん発言は許さない。
「じぃっ」
「許してほしい」
ボクのジト目攻撃に耐えられなくなった金熊童子は早々に降参して許しを求めてきた。
「今回は許してあげるけど、次回はだーめ」
ボクはにっこり笑って金熊童子にそう伝えた。
「暮葉怖い」
「怖くない怖くない。ところでみんなで配信するときにさ、なんかゲームでもやらない? それで罰ゲームはスクール水着を着せて――」
「一歩間違えればイジメに見えるから気を付けたほうがいいかな、暮葉」
ボクの提案に茨木童子が懸念を示してきた。
考えてみれば当然か。あまりよくない光景かもしれない。
「うっ、そうだよね。ごめん」
まぁ皆で遊んだ時にやる罰ゲームは別に考えるとしよう。
合同配信まではまだ少しかかるから、それまでに決めればいいよね?
「それにしても暮葉様の新しい衣装、可愛いものも多いですよね。このブレザータイプの制服なんて白いニーハイつきじゃないですか! 現実でも穿きませんか?」
雫ちゃんが画像を見ながらやや興奮したようにボクにそう言ってきた。
なんだか目つきが怖いんですけど……。
「いやほら、現実ではハイソックスで十分だから……」
「暮葉暮葉、あたしも暮葉のニーハイ姿見たい!」
雫ちゃんの言葉に影響されたのか黒奈まで同じようなことを言い出し始めた。
「黒奈は小さめで可愛いからスクール水着とかも似合いそうだよね~」
でもどっちかというとワンピースの水着が一番似合と思っている。
体形はボクと似たようなものなのでまず間違いなく似合うだろう。
言っていて悲しくなるけど。
「あたしが似合うということは暮葉も似合うということ、つまりお揃い。嬉しい。嬉しいよね?」
「ぐぬぬ」
黒奈の返しにボクは思わずぐぬぬとうなってしまった。
しかも黒奈はボクにそのまま嬉しいか聞いてきたのだ。
主語を付けないで。
「暮葉が言うなら着るけど暮葉も着る。そこ大事」
「えぇ~? 黒奈は恥ずかしくないの?」
ボクは薄着になるの恥ずかしいのに黒奈は平気そうに言う。
「あたしも恥ずかしいけど、暮葉とお揃いなら大丈夫。一人だったら絶対嫌」
「あ、そうなんだ」
黒奈も一応恥じらう気持ちはあったようでよかった。
「ま、まぁ、ボクたちの現実の話はおいといて、今後の配信にこの衣装のどれかを使うことになるからね。とりあえず次の配信はこのブレザータイプの衣装にしてみようか」
これ以上は藪蛇になりそうだったので、次に使う衣装だけ決めて早々に画像を閉じることにした。
まぁでも、ニーハイくらいは穿いてみてもいいかもしれないね。
慣れないから恥ずかしいけど。
それからボクたちはしばらくああでもないこうでもない言いながら衣装や配信について話し合った。
とりあえず一緒に配信するときは初回はお揃いの制服姿でやってみようという提案があったのでそれでいくことにした。
ちなみに、酒吞童子たちに渡したデータには水着や夏祭り衣装、アイドル衣装なども同梱されているらしい。
それにしてもアイドル衣装かぁ、やっぱり歌わなきゃいけないんだろうか。
そう考えるとボクは若干憂鬱になった。
「そういえばよ、暮葉は歌どうするんだ? 昔みたいに歌うのか?」
「ん~。昔なら何も考えずに歌えただろうけど、今はどうだろう」
「そっか。まぁしょうがないわな。ただお前の歌は皆好きだってことは忘れるなよ? 周りが期待しすぎたせいで潰れたけどよ」
ボク自身は歌は好きだし昔はよく歌っていた。
歌がうまいともいわれたし、声がきれいだともいわれた。
大事にされているという自覚はあるし、それに応えなきゃいけないということもあって、昔は色々と頑張っていたものだ。
でもいつしかそれが重圧になって苦しくなっていった。
原因はもちろん自分の弱さだろう。わかってる。
だけど結局辛くてボクは逃げ出した。
それからしばらくは引きこもり、友達以外との接点は減らしていった。
その結果出来上がったのは、今ここにいる人見知りのボクだった。
まぁそんなボクだけど、今はこうして配信出来ているわけだから少しはマシになっているのかもしれない。
でもやっぱり歌えるようになるまではもう少し時間がかかると思う。
いつかは皆と一緒に歌うことが出来るようにがんばってみようかな。
          
ボクはベッドから起き上がる。
学校は祝日でお休みで世間も同様にお休みだ。
つまり割と暇な一日ということになる。
そんな日はいつものメンバーが当然のように家にやってくるわけで。
「いよっ、来たぜ」
先頭の酒吞童子以下五名はいつも通り我が家にやってきた。
今回はみなもちゃんと黒奈、そして雫ちゃんも一緒だ。
いくら広めなボクの部屋と言ってもなかなかの密集具合だ。
ボクを入れて十名がひしめいている。
「暮葉様おはようございます!」
「暮葉おはよ~」
「暮葉、おはおは」
「おはよう、雫ちゃんにみなもちゃんに黒奈」
元気に挨拶する雫ちゃんたちボクのお付き三人組。
彼女たちは特に来る理由なかった気がするけど、なんで来たんだろう?
ちなみに酒吞童子たちはキャラクターデータの配布があるのでうちに来ている。
まぁそうでなくてもうちに来るんだけど。
「酒吞たちは配信設備の設置できた? お母様たちが送ってたと思うけど」
さっそくソファーで寛ぐ酒吞童子たちに声をかけた。
彼女たちは六人と三人で纏まって集まっていて、それぞれにのんびりと過ごしている。
「昨日全部終わったぜ? 俺たちは全員纏まってるから確認も楽だしな」
酒吞童子と大江山四天王、それとスクナの六名は同じ家に住んでいる。
広めの土地を亜寿沙さんが買い、そこに鬼たちで住める場所を用意したのだ。
まぁ簡単に言えば寮みたいなものだけど。
ボクも何度か行ったことはあるけど、とてもいい場所だと思った。
ちなみに温泉も設置されているのでやや郊外にあるわけだが。
とはいってもボクたちの住んでいるこの街も、どちらかというと都会寄りではないのであまり変わらないと思う。
「それはよかったよ。はいこれ。データが入ってるUSBメモリーだよ。着せ替え関連も入ってるけど、わからなかったらボクたちに聞いてね」
「おう、ありがとな」
「ありがたく受け取るよ」
「暮葉ちゃんありがとう!」
「感謝」
「ふふ、これで皆で遊べるね」
「おー、これがあれかー」
嬉しそうな茨木たち、そして興味深そうにそれをUSBメモリーを見るスクナ。
これで皆と一緒に遊んだり配信できると思うと、なんだかボクも嬉しくなってくる。
「そういえば暮葉もUSBメモリー持ってるみたいだけど、そっちは何なんだ?」
ボクが手に持っているUSBメモリーに興味を示した酒吞童子がそう聞いてきた。
「あ、これ? 葵姉様から渡されたボクのお着替え用データだよ。見る?」
そう言うと返事を待たずにボクは自分のパソコンにUSBメモリーを差し込むと、格納されているデータを呼び出した。
「これが皆とお揃いのブレザーの制服バージョンで、こっちがなぜかあるスクール水着バージョン。これ絶対使わないんだけど。それでこっちが……アイドル衣装!? 昨日の件に絡めたのかな。で、こっちが浴衣。浴衣と小袖ってあまり変わらない気がするけど気にしたらダメか。あとこれが狐さんキグルミパジャマかぁ。これはリアルにも欲しいなぁ」
今回渡されたのは五種類の着替えデータだ。
「なんか随分あるな。身内の強みってところか」
「しかし水着は可愛いね。でも少し本人に準拠しすぎているような」
「これはセンシティブってやつよね~。消されちゃう!」
「つるぺったん」
「これはこれでかわいいよー!」
「暮葉っぽさがと~ても出てるとおもうよ~」
皆言いたい放題だ。
しかし金熊童子のつるぺったん発言は許さない。
「じぃっ」
「許してほしい」
ボクのジト目攻撃に耐えられなくなった金熊童子は早々に降参して許しを求めてきた。
「今回は許してあげるけど、次回はだーめ」
ボクはにっこり笑って金熊童子にそう伝えた。
「暮葉怖い」
「怖くない怖くない。ところでみんなで配信するときにさ、なんかゲームでもやらない? それで罰ゲームはスクール水着を着せて――」
「一歩間違えればイジメに見えるから気を付けたほうがいいかな、暮葉」
ボクの提案に茨木童子が懸念を示してきた。
考えてみれば当然か。あまりよくない光景かもしれない。
「うっ、そうだよね。ごめん」
まぁ皆で遊んだ時にやる罰ゲームは別に考えるとしよう。
合同配信まではまだ少しかかるから、それまでに決めればいいよね?
「それにしても暮葉様の新しい衣装、可愛いものも多いですよね。このブレザータイプの制服なんて白いニーハイつきじゃないですか! 現実でも穿きませんか?」
雫ちゃんが画像を見ながらやや興奮したようにボクにそう言ってきた。
なんだか目つきが怖いんですけど……。
「いやほら、現実ではハイソックスで十分だから……」
「暮葉暮葉、あたしも暮葉のニーハイ姿見たい!」
雫ちゃんの言葉に影響されたのか黒奈まで同じようなことを言い出し始めた。
「黒奈は小さめで可愛いからスクール水着とかも似合いそうだよね~」
でもどっちかというとワンピースの水着が一番似合と思っている。
体形はボクと似たようなものなのでまず間違いなく似合うだろう。
言っていて悲しくなるけど。
「あたしが似合うということは暮葉も似合うということ、つまりお揃い。嬉しい。嬉しいよね?」
「ぐぬぬ」
黒奈の返しにボクは思わずぐぬぬとうなってしまった。
しかも黒奈はボクにそのまま嬉しいか聞いてきたのだ。
主語を付けないで。
「暮葉が言うなら着るけど暮葉も着る。そこ大事」
「えぇ~? 黒奈は恥ずかしくないの?」
ボクは薄着になるの恥ずかしいのに黒奈は平気そうに言う。
「あたしも恥ずかしいけど、暮葉とお揃いなら大丈夫。一人だったら絶対嫌」
「あ、そうなんだ」
黒奈も一応恥じらう気持ちはあったようでよかった。
「ま、まぁ、ボクたちの現実の話はおいといて、今後の配信にこの衣装のどれかを使うことになるからね。とりあえず次の配信はこのブレザータイプの衣装にしてみようか」
これ以上は藪蛇になりそうだったので、次に使う衣装だけ決めて早々に画像を閉じることにした。
まぁでも、ニーハイくらいは穿いてみてもいいかもしれないね。
慣れないから恥ずかしいけど。
それからボクたちはしばらくああでもないこうでもない言いながら衣装や配信について話し合った。
とりあえず一緒に配信するときは初回はお揃いの制服姿でやってみようという提案があったのでそれでいくことにした。
ちなみに、酒吞童子たちに渡したデータには水着や夏祭り衣装、アイドル衣装なども同梱されているらしい。
それにしてもアイドル衣装かぁ、やっぱり歌わなきゃいけないんだろうか。
そう考えるとボクは若干憂鬱になった。
「そういえばよ、暮葉は歌どうするんだ? 昔みたいに歌うのか?」
「ん~。昔なら何も考えずに歌えただろうけど、今はどうだろう」
「そっか。まぁしょうがないわな。ただお前の歌は皆好きだってことは忘れるなよ? 周りが期待しすぎたせいで潰れたけどよ」
ボク自身は歌は好きだし昔はよく歌っていた。
歌がうまいともいわれたし、声がきれいだともいわれた。
大事にされているという自覚はあるし、それに応えなきゃいけないということもあって、昔は色々と頑張っていたものだ。
でもいつしかそれが重圧になって苦しくなっていった。
原因はもちろん自分の弱さだろう。わかってる。
だけど結局辛くてボクは逃げ出した。
それからしばらくは引きこもり、友達以外との接点は減らしていった。
その結果出来上がったのは、今ここにいる人見知りのボクだった。
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