元天才選手の俺が同級生の女子野球部のコーチに!
白星vs友愛!
バシッ!!
今日は山登りで足腰を鍛えるトレーニングしてきたはずの梨花だが、いつもと全く変わらないフォームで足腰の粘りもあるし球を見る感じ相当調子が良さそうだ。
「へー。目つきが鋭くて近寄りづらかった西さんだっけ?こんないい球投げる投手だとはね。白星も弱いと聞いてたけどよか投手がおるんやね。」
「犬山さん審判に話しかけても情報は盛らせないよ?」
「そんなことせんわい!まぁお手並み拝見ばい。」
そういうとウキウキな気分で犬山さんが左バッターボックスに入った。
主審として梨花がマウンドに経つ姿を見たが、女の子とは思えない位の威圧感がある。
まだまだ荒々しいが、時折見え隠れする研ぎ澄まされた雰囲気が俺が好きな投手の雰囲気だ。
問題があるとしたら、梨花と七瀬のバッテリーとしての熟練度が低くくて、2人はあまり性格的にも野球観もあまり合わないみたいで、ブルペンもほとんど柳生が梨花の球を受けている。
「プレイ!!」
梨花はキャッチャーのサインに首を振って自分の投げたい球を絶対に投げたいというタイプではない。
中学ではチームメイトからずっと爪弾きにされていたからこそ、白星ではキャッチャーを信じようという固い決心がこちらに伝わってくる。
「ストライク!!」
1球目はやや甘めの高めのストレートから入ってきた。
七瀬が何を考えるか分からないが、初球からは振ってこないと思ったのだろうか?
このチームの特徴として初球からガンガン行くという情報は知らないのだろうが、性格とかをみて消極的に来るとは思えない。
「いいボール来てるよ!その調子!」
七瀬は投手としてリードするようになってまだそこまで経たないが、なにやら少しだけ考え方が変わったようだ。
投手と捕手は夫婦と呼ばれることもあるし、投手は捕手のサイン通りに投げる為に練習していると言ってもいい。
けど、それは捕手が投手のことを全て分かっていてあげていることが前提となる。
投手は捕手の言う通りに投げておけばいいとか少しでも舐めた考えがあると投手は分かるのだ。
中学の時チームを辞めて俺の変わりに正捕手になったであろうアイツはそういう捕手だった。
だからこそ俺は投手もしていたのにも関わらず、抑えや中継ぎばかりで先発としてフルに投げることが少なかった。
何故先発をしなかったかというと絶望的に捕手のアイツと合わなかった。
俺も捕手で相手の打ち気などを雰囲気で察することが出来るからリードは俺が主体でしたいと言ったが、投手は捕手の言う通りに投げろと俺が投手の時は頑なにリードはアイツがしていた。
七瀬はちゃんと投手のことを考えてリードするようになってるし、すぐにはいいリードは出来ないだろうが梨花もそれは分かっている。
「ストライクツー!!」
115km/h前後くらいのストレートを犬山さんは2球連続で見逃した。
1球目はストレートのキレにやや遅れていた感じがしたが、2球目はしっかりと合わせてきたがスイングはしてこない。
犬山さんはワンコと呼ばれているが、それは外からワンワンと吠えるワンコから最上さんがあだ名をつけたかと思ったが、今の打席を見る感じワンコと言うよりも猟犬のような鋭さを感じられる。
『猟犬か。最上さんもよく考えてるな。』
3球目。
バッテリーは3球目勝負するつもりだ。
この合宿ではあまり無駄玉というか釣り球を投げられる状況ではないから、追い込んだらボール球なしで真っ向勝負が求められる。
『速い。いい球だ。』
120km/h位は出てるだろう梨花はここでそこそこ本気のストレートをインコース高めに投げ込んできた。
コースもギリギリのストライクゾーンのパワーのあるボール。
ガギィィン!!
犬山さんはインコース高めの厳しいコースにきっちりと反応して引っ張ったが、やや根元で詰まらせた。
だが、流石友愛の選手だ。
少々詰まっても強引に振り切って強烈な打球が一塁線へ。
「橘!」
桔梗は一塁線ギリギリの打球をスライディングしながら身体を半身にして好捕。
そのままベースを踏んでとりあえずワンアウトを取った。
「ワンアウト!梨花どんどん行こう!」
桔梗は大きな声で梨花を鼓舞してボールを投げ返した。
梨花と桔梗はこれまでそこまで仲良くなかったが、姉の試合を見に行ってから意気投合して一気に信頼関係が築かれたみたいで見ていて安心する。
「桔梗!ナイスキャッチ!」
犬山さんはかなり悔しそうに自分のバットを拾って当たったところはどこかバットをクルクル回して確認している。
「ワンコ、結構詰まってたん?」
「いーや。思ったよりも芯の近くで捉えてたけどかなり詰まらされた感じ?よかボール来とる。最上んも舐めてると普通に抑えられるばい。」
「ほー。それならよか勝負できそうやん。橘だけかと思ったらこんな投手がおるとは思わんかったわ。」
ネクストバッターズサークルに入ろうとしている3番の最上さんに犬山さんがしっかりと忠告している。
こういう所はちゃんとチームメイトとして最善を尽くしてるし、茶化したりしないようだ。
2番打者も初球のストレートを読んでいたのか強振してきてボテボテのショートゴロに打ち取ってツーアウト。
「ツーアウト!最上さんを抑えて気持ちよく1回終えよう!」
「七瀬。よかこというやん。抑えられればの話やけどな。」
普通なら試合中で話したりしないが、まぁ姉妹校で仲良くなってるしおふざけというよりも、真剣勝負を楽しんでる感じで注意するのも野暮ったいと思って好きにやらせることにした。
「最上、ベラベラ話さずにさっさとかかってこいや。」
「西、昨日から一言も話してないのに初めて話す相手に言う言葉じゃないと思うんやけどな。」
会話をする流れなんだろうが、梨花は元々ベラベラ話すタイプでもないし、しかも試合中で尚更会話するつもりもないのか投げ返されたボールを無視していてマウンドをならしている。
最上さんはなにか更に言うかと思ったが、あっさりと会話するのを止めて右バッターボックスに入って軸足を固定するために土をかなり深く掘ってしっかりと固定されている感じになるようにしている。
バッターは軸足がしっくり来るまで足場をならすが、稀に穴と思えるくらい掘って固定する選手がいるが、最上さんがそのタイプみたいだ。
深く掘るのがいいとは俺はあまり思わない。
掘りすぎると固定されすぎて体制が崩された時に軸足を移動させて柔軟に対応出来ないと思っている。
最上さんは体制を崩されない自信があるのか、しかしこのレベルのバッターになってくると自分のスタイルがしっかりと定着しているので、ここまで深く掘っているのと掘らないのでは結構目線の高さが変わってくるだろう。
いい雰囲気だ。
投手の梨花からも絶対に負けられないという雰囲気と打者の最上さんの絶対に打つという雰囲気。
練習試合だからこそ個人対個人の勝負を2人は楽しんでるんだろうし、守っている野手もそれを分かっていて水を差すようなことを言わない。
「プレイ!」
1番困っているのが俺の目の前にいる七瀬だ。
何を要求したらいいのか迷っているようで、梨花はポリシーで変化球はスプリットしか投げられない。
ここまでストレートしか投げていないけど、多分ストレート押しすればまずヒットは打たれる可能性は7割くらいはあるだろう。
少々詰まらせることが出来ても彼女のパワーなら長打は打たれるだろうし、女子用の金属バットならスタンドということも考えられる。
七瀬は少し考えた後にサインを出した。
迷いながらのサインだったから流石の梨花も首を横に振る気もしたがあっさりと首を縦に振った。
綺麗なフォームというよりも躍動感のある身体の全身のバネを生かしたフォームは梨花にはよく合っている。
「ストライク!」
アウトコースギリギリの120km/hくらいのストレート。
最上さんからは雰囲気がわからない人でも分かるほど打ち気を感じていたが、手を出してこなかった。
打てない球と思ったのか、打ち気はあったが一応様子見をする為に1度打席でボールを見たかったのか。
2球目も同じようなコースに投げてきたが、さっきよりは明らかにボールとわかる球。
この球も全く反応せず見逃して1-1。
「西ぃ!ストレートだけで抑えられると思っとんじゃなか?」
「…………。」
あくまでストレートで勝負してるバッテリーに変化球投げないと打たれるとわざわざ忠告してきている。
梨花は完全に無視してるし、七瀬はどうしようか迷っている。
最上さんは相手を挑発して制球を乱した所を狙い打ちするバッターには見えないが、ここまでマウンドの梨花を挑発するとは意外だった。
サイン交換をしているが、1度、2度、3度と首を振って4度目のサインで梨花はやっと頷いた。
ストレートかスプリットのふたつしか投げないのに3回首を振って投げるボールは2つに1つなのだ。
多分だが、ストレート、スプリット、ストレート、スプリットでスプリットで首を縦に振ったような気がする。
梨花の性格ならスプリットでカウントを稼いで最後はストレートでねじ伏せたいと思っているのだろうが、七瀬がそれをさせてあげられるかは分からないが。
後ろにいるといらない心配ばかりして、自分が思っていることと全く違うことを考えているかもしれない。
3球目。
バッテリーが選択したのはやはりスプリットだった。
スピード十分で途中まではほぼストレートの軌道で最後の最後で折れるように落ちる。
理想的なコースから理想的な落ち方をしている。
が、最上さんはそんなことをお構いなく思いっきり踏み込んで強烈なフルスイングしてきた。
ブンッ!!!!
スプリットに完全にバットは空を切っているがその強烈なスイングは相手をビビらせるのに効果バッチリだろう。
その張本人の梨花には全く気にもしていないが…。
「いいねぇ。フォークか?いや、スプリット…。他にはどんな球投げて楽しませてくれるんか楽しみさね。」
「楽しみにしてる所悪いんじゃけど、私はこの2つしか投げん。」
「あぁ!?ストレートとスプリットだけ?そんなんじゃ簡単に抑えられんばい。」
この打席だけで言えば梨花はまだ奥の手が残っている。
だが最上さんはそれを初見で弾き返せるレベルの打者だ。
俺からしたらどちらでもいいと思っているし、打たれたら打たれたでいい経験になると思う。
4球目は絶対に全力ストレートしかない。
梨花もそのために追い込むためにスプリットを投げたんだろうし、梨花には自分のストレートが誰よりもいい球を投げている自覚がある。
梨花の雰囲気が更に鋭く完全にここで勝負するという雰囲気が体全身から溢れている感じだ。
バッターボックスの最上さんも相当集中しているし、多分この感じだとストレートを狙っているんじゃないだろうか?
4球目。
やはり梨花達が選択したボールはストレートだ。
コースはど真ん中の高めで甘いコースではないが、厳しいコースでもない。
『かなり速いな。見た中で一番かもな。』
高校に入る前の中学生の時に測ったときのMAXは121km/hだったが、高校に入ってMAX126km/hまで伸びているし、この球も127〜8km/hくらいは出てるかもしれない。
多分全国の高校1年の投手でストレートのスピードだけならトップクラスだろう。
後は制球、フィールディングが難点だ。
今はまだ細かいことよりもストレートとスプリットを高校最高レベルまで持っていって、それで壁にぶつかったり躓いた時にひとつずつ改善していく方針で俺はいくつもりだ。
「きたっ!!」
最上さんは完全にストレート狙いで思いっきり踏み込んで、強烈なフルスイング。
カキィィーン!!!
自己最速であろうストレートと、タイミングバッチリで渾身のフルスイングがぶつかった1球は、真夏の眩しすぎる太陽に届く位高々と打球が上がった。
俺はその瞬間どちらが勝ったかは分かったから、打球を目で追うのをやめて最上さんと梨花のことを眺めていた。
結果はショートフライだった。
梨花の早いストレートとノビで打ち損じたのだ。
「ざまぁみろ。」
梨花は最上さんに対してニヤリと笑うまでは良かったが、最上さんに対して中指を立てていた。
女の子としてはお行儀がよろしくないが、梨花だから仕方ないというかなんというか…。
「西ぃ!試合中に流石に相手チームの選手に中指立てんのはどうかと思うんやけどな!おいっ!無視して帰っていくなや!」
「うっさいのぅ!負けたんだから大人しく守備につかんかい。」
「東奈っ!コーチとしてあれをあのまんまにしてよかとか!?」
コーチとしてと言われるとちょっと耳が痛い。
しかし、梨花はこちらに来てからあのきつい性格が爆発してるところを見た事がない。
今日は最上さんに対してこれまでの鬱憤を晴らすようにやりたい放題してるようにも見える。
息抜きとかを兼ねて少しだけ最上さんには耐えてもらおう。
それとなく軽く注意しておけばいいだろうし。
あまりいい事とは思えないが梨花と同じく俺も開き直って気にしないことにした。
「後でちゃんと言っておくけど、選手の性格まで変えるのはコーチの仕事じゃないから期待せんでね。まぁ、とりあえず守備についてね。」
「確かにそう言われたら言い返す言葉もなか。やけどちゃんと言っとかんといけんよ!」
俺は仕方なく梨花を呼びつけることにした。
建前だけでも怒っておかないと申し訳ないか。
「梨花。ちょっとこっちに来て。」
「言いたいことくらいわかっちょる。じゃけん怒るのは後にしてや。」
「そんな別に怒る訳じゃないけど…。最上さんならまだ百歩譲っていいけど、他の相手にはダメだからね?」
「わかっちょる。久しぶりの高揚感と開放感のせいでエキサイトしただけじゃ。」
「まぁそれならいいよ。後、いいストレートやったね。練習の成果が出てるし、このまんまの調子でいこう。」
「おうよ。空振り取れると思ったんじゃけど、取れなかったからもっと練習するわ。」
そういうこと全く気にする様子もなくベンチへ戻って行った。
梨花は良くも悪くもマイペースで、野球のことになると更に超がつくほどのマイペースとなる。
まず帽子を普通に被らずに後ろ向きに被っている。
野球のルール上別に前向きに被らないといけないというルールはないのでいいが、そもそも梨花は帽子がめちゃめちゃ嫌いらしく本当なら被りたくないみたいだ。
ユニホームは身体の線が分かるくらいピシッとしたユニホームが好みで、体重が変わらなくてもユニホームの大きさで分かりずらい自分の体型の変化が分かるらしい。
「それはそうとして…。」
友愛のベンチの方はなにやら揉めているみたいだ。
「私がちゃんと抑えてあげないとこの貧打じゃ試合にならないから抑えてあげよう。」
「初回だけで何言っとんや。さっさとマウンドに上がって用意せんかい。」
「けど、私が投げないと試合にならないよねー?どうしようかなぁ。」
「彩!ふざけてんのならまだよかけど、本気で言ってんならグランドからさっさと出て行け。」
「ちーさん怖すぎー。みんなに喝入れようとしただけなのにこんなに怒るなんて酷いよー!」
「分かりずらいんや!お前のボケか喝かどっちかわからんやつは!」
何やら少しだけ言い合いし終わって、一ノ瀬さんは最上さんに尻を蹴飛ばされてマウンドに上がった。
梨花を見た後なのか、マウンドにあがってもイマイチ緊張感の伝わってこない一ノ瀬さん。
ここまで投球練習を1度も見た事がなく、高浪監督に彼女には練習の指導はしていいけど、投球に関しては一切なにも言わなくていいって言われたことを思い出していた。
投球練習を開始してすぐに分かったことがあった。
彼女のストレートにはノビがあまりなく、キレは少し感じるが質のいいストレートを投げている訳では無いようだ。
変化球はいくつか投げているが、タイミングをずらす緩い球は少なく、やや横にスライドしたり、縦に落ちたりとスピードがあって変化量が少ない球を好んでいるようだ。
そして1番の特徴があった。
投げ方が毎回違う。
しかも素人がみてもわかるレベルで上から投げたり、横から投げたりしている。
だが、どこから投げてもスピード自体も変わらないし変化球もスピードと変化量が少し上下したり、曲がる角度が少し変わったりと些細な変化なのだろうが、実践になるとこの少しの違いが大きな違いに感じられるのだ。
1番打者に定着しつつあるかのんからの打席だが、本来なら相手の球種を確認したりして次の打者たちに情報を落とすための役割があるのだが、そういった考えはなくとにかく自分が塁に出ることだけしか考えていない。
そういうバッターは4番、5番、6番辺りにおいてすきにうってもらうのがいいのだが、かのんは卓越した足の速さと盗塁技術をもっている。
そういった選手が中軸から後ろにいるとせっかく盗塁してチャンス広げたのに後続が打つかないということになりえる。
なら3番はどうか?
かのんが3番は悪くは無いが、安定性を考えると個人的にはもっと率が高くて狙ってゴロを打ったり、フライを打ったりできる打者がいた方がチームとしては安定するだろう。
2番も少しだけありかとも思ったが、バントさせないと考えたとしてもなしだ。
かのんは今時点の実力で年間3割は簡単に超えてくると思う。
だとしたら、1番バッターが4割打ったときにかのんがランナーに出た時に前のランナーが邪魔になるのだ。
盗塁しようとしても前にランナーがいたらどうしようもなくなってしまう。
ノーアウトランナー一塁から毎回ヒットで1.3塁に出来るならいいが、もちろん四死球で出塁することもあるし、そもそもうちに4割打てて足の早い選手なんていないのだ。
「かのん!いつも通りガツーンといけー!」
ベンチからとても通る声で応援しているのは夏実で、今日は七瀬がキャッチャーと投手をする兼ね合いで先発に起用することにした。
相変わらずベンチからみんな声を出していても、夏実の声だけは個別に聞こえるくらいに声量と声の綺麗さが際立ってくる。
かのんは多分初球からいくだろう。
一ノ瀬さんは投球練習一球もボール球を投げていなかった。
細かいコントロールが出来ないから真ん中付近に集めているのか、それともたまたまなのか。
たまたまで7球もど真ん中付近にボールを投げられるとは考えずらい。
「プレイ!」
バッテリーのサイン交換も終わり1球目を投げようとしている。
かのんからは必ず打つという強気の雰囲気で、一ノ瀬さんからも一応強気の雰囲気らしきものは感じられる。
その初球。
「ストライク!!」
かのんは完全に打ちにいっていたがバットを振り始めた瞬間に急にバットを止めた。
球種は多分ツーシーム。
ストレートと思って振りに行ったが、途中でツーシームと思ってバットを止めたのだろうか?
いや、それならツーシームと分かっていたということになる。
もしツーシームと分かってたらツーシームに合わせてスイングしてくるだろうし、ストレート待ってて緩いカーブ来て体勢崩してでも振りに行くようなバッターがスイングを途中でやめたのが気になった。
そして2球目。
今度はアウトコースギリギリに決まるツーシーム。
さっきはややシュート回転だったが、今回はスライダー気味の外から内へやや変化するボール。
かのんはそのツーシームを逆らわずに流し打ち。
少し先っぽだったが、振り抜いたおかげか強烈な打球が3塁線へ。
「うおぉおお!!!」
雄叫びを上げながら最上さんはかのんの打球に豪快に飛び込んでいった。
素晴らしい反応とその身体のバネを使ってまさかのナイスキャッチだが、打球は手前でワンバウンドしていたので一塁送球が残っている。
真横に飛んだと言うよりも斜め後方に無理矢理飛んだせいか体勢が悪く、起き上がって投げるまでにやや時間がかかっている。
その間にも最初から2塁を狙っていたかのんは凄いスピードで一塁へ走っていた。
起き上がって投げようとしている最上さんに一瞬かのんが目に映ったのだろう、かなり慌てて一塁へ送球。
流石にいい肩をしている。
あの体勢からかなり鋭い送球をしたがやや焦ったか少し送球が右へ逸れた。
「セ、セーフ!」
ジャッジはセーフ。
かなり際どいタイミングでファーストの樹林さんの精一杯身体を伸ばしたが、かのんの足がほんの少しだけ勝っていたみたいだ。
「マジかよ!弥生ちゃんと見とったとか!?」
一塁審判の弥生さんと呼ばれる子に抗議しているみたいだが、首を横に振るだけだった。
 
次の打順は2番は天才的なバットコントロールを持つ氷だ。
ツーシームやカットボール系の相手を打ち取る系のボールは最も得意にしている。
繊細なバットコントロールが必要だが、氷にはその技術はもう高校生1年生のレベルではない。
かのんはかなり大きなリードを取っており、氷は今回は右投手の一ノ瀬さん対して左バッターボックスに入っている。
かのんのリードを氷は確認して多分盗塁のアシストをするつもりなんだろう。
自分がカウントで追い込まれても三振しない自信があると言っていたから、かのんが一塁でちょろちょろしてる間は盗塁するのを待ちながら相手の球を確認すると思う。
一ノ瀬さんはかなり大きなリードのかのんを気にして1度、2度、3度と牽制球を入れたが戻るのが早いかのんは牽制で刺されるとは思えなかった。
「彩!まだ1回ばい!ランナーは軽く気にするくらいでバッター勝負さ!」
一塁の樹林さんはボールを返す時に一ノ瀬さんに声を掛けている。
人の言うことを聞かなそうな一ノ瀬さんだが、まだ牽制を続けるつもりなのだろうか。
と、思っていたら相当早いクイックで初球を投げてきた。
セットポジションに入ってから1秒ギリギリのボークラインだったが、今回は見逃すことにした。
「ボール!」
かなり際どいインコース高めに来たが、ボークを見逃したことを考えてボールコールをした。
一ノ瀬さんは俺のジャッジに不満そうだが、文句を言われたらボーク見逃したと弁解しよう。
俺はまだ言われていない文句に対して完璧な言い訳を考えついていた。
それにしても今のも変化は少なかったが、ツーシームだった。
ストレートをほぼ投げずにツーシーム連投…。
俺はそもそもツーシームと思っているこの球はツーシームでは無いのではないかと思い始めてきた。
かのんの2球はツーシームだったとしても、盗塁が考えられるこの場面ならツーシームじゃなくてストレートなんじゃないか?
盗塁する気満々の1塁ランナーを刺すにはキャッチャーが2塁へ送球しないといけない、その時にツーシームだと変化量が多かった時に捕球ミス、ミスしなくてもいつもと違うところで捕球してからボールを握るまで動作にもたつくかもしれない。
1番は2塁に投げる時に座ったまま捕球して、立ち上がって投げるキャッチャーなんていない。
中腰にして、身体を半身にして投げる体勢を作ってから捕球しに行く。
この時、本当は完全に捕球することが重要なのだが送球に頭を持っていかれすぎると、変化したボールに対応出来ずにパスボールが最悪でかのんならそのまま3塁を狙っていくだろう。
難しく説明したつもりは無いが、ざっくり言うと盗塁してくる相手に捕球が難しい変化球を初球から選ぶだろうか?
高目を選んでいるところから盗塁警戒は確実にしてきている。
それなら俺がツーシームと思っていた球はムービングファストの可能性がある。
いや、可能性じゃなくてほぼ100%ムービングファストだ。
高浪監督が投球にアドバイスしないでと言ってきたのは、この天然が生み出した癖球を直さずに生かす方向なのだろう。
これで全ての疑問が解消された。
天然で自由なピッチングをこれまでし続けてきた結果がこのボールを生み出した可能性が高い。
俺が色々と考えている間にも試合は進んでいて、1度牽制した後に2球目を投げようとしているところだった。
一ノ瀬はクイックもかなり上手かったし、かのんのスタートはいつもよりは遅れていたがいいタイミングでスタートしていた。
「「走った!!」」
キャッチャーは2塁送球の為立ち上がって投げる体勢になっているが…。
カキィーン!!
やや高めのど真ん中ストレートを氷は見逃さなかった。
甘い球を完璧に三遊間へ流し打ちしてかのんもそれを確認して次の塁を狙っている。
「もういっちょ来たぁ!!」
絶対ヒットコースと思っていたが、野球観なのか野球勘なのか不明だが、いつの間にかショート寄りにポジショニングしていた最上さんがまたもダイビングキャッチ。
「千鶴!セカンド無理!こっち投げんね!」
樹林さんが大声で最上さんにファーストに投げるように指示。
三遊間に転がってそれをダイビングして立ち上がって身体を1度1塁側反転させないといけない。
その間にも氷はファーストに向けて猛ダッシュしているが…。
「あれは遅すぎて無理だろ…。」
最上さんは氷の足の遅さに今度は冷静にファーストに体勢を整えて強烈な送球。
「アウトォ!」
「千鶴!サード狙われとる!」
ショート側でダイビングして捕球してファーストに投げたまではいいが、サードの位置とショートの位置からサードまでがやや遠かった。
かのんはそれを確認したのか盗塁してスピードそのまま猛然と3塁へ突っ込んで行った。
最上さんはすぐに気づいてサードに戻ろうとしているが、かのんのスピードもやはりいいスピードをしている。
最上さんはサードベースに戻りながらボールを要求しているが、ファーストからサードまで走っている相手にボールを投げるのかかなり難しい。
どうにかファーストの樹林さんはサードに送球したが、ピンポイントでの送球はやはり出来なかった。
最上さんが走ってサードに向かっているが、サードベース側に投げすぎていた。
かなり体勢を崩しながらボールを捕ったのはいいが、タッチしに行かないといけない。
かのんはサードベースの外側を走っている。
体勢を崩したのを見て1番タッチまで遠いところを走ってスライディングしていた。
「くっ!」
タイミングは際どい。
ホームベースから見たら少し分かりずらい位置のプレーになった。
3塁の塁審は青島さんがしており、どうしても身内には少し厳しいジャッジになりがちだが…。
「セーフ!!」
最上さんはこのジャッジに対しては何にも言わなかった。
こっちから見たら際どいように見えたが、タッチが届かなかったとかかのんがタッチを寸前で避けた可能性もある。
氷は完全にヒット1本損したが、かのんの積極的というか暴走というか微妙なところだが、その足でワンアウト3塁のチャンスを作ったのは事実だ。
3番は梨花にしているが、打撃がいいとかではなくて途中交代するという前提で3番に置いている。
打撃のセンスは無くはないし、身体能力の高さとセンスだけで打っている。
打者として練習すればいいレベルになるだろうが、投手1本で下手な筋肉をつけたくないからという理由で打撃練習は程々にしかしない。
梨花にとっては細かいバットコントロールが必要な一ノ瀬さんようなタイプは苦手だろうが、攻略方法はある。
「ファール!ストライクツー!」
梨花は何ふり構わずフルスイングしている。
だが、結果的にそれが1番の攻略方法なのだ。
金属バット相手に詰まらせてたり、打ち損じを目指す投球は金属バットに対して滅法相性が良くない。
金属は木製のように折れることは無いし、女子用の金属バットは特にボールが飛ぶように設計されている。
一ノ瀬さん達バッテリーは早くも梨花の打撃能力がそこまで高くないのを見抜いてるみたいだ。
それにしても梨花に対しては相手の意図通りにファールを打たされている。
出来ればボテボテのゴロか少し芯に当てて外野フライならかのんがホームに突っ込んでくるだろう。
ガキィン!
そのどちらでもないやや振り遅れて詰まった打球がふらふらとライト方向へ。
かなり絶妙な打球がセカンド、ファースト、ライトトライアングルのど真ん中へボールが飛んでいる。
「「私が捕る!!」」
3人は全員ボールを諦めずに追っているが、声を被っていて聞こえてないみたいだ。
このままみんなが突っ込むとかなり危ないプレーになるが大丈夫だろうか。
そう思っていると、ファーストとセカンドは追いつかないと追うのを諦めてライトの犬山さんが俊足を生かして突っ込んで来る。
「うわーー!!」
華麗にダイビングキャッチと思ったが、グラブに掠っただけでボールを捕球出来ずに犬山さんの前にコロコロとボールが転がっている。
「梨花ナイスバッチー!」
「上手く詰まらせたねー!」
梨花は詰まって少しだけ手が痺れたのか両手をヒラヒラと振っている。
打点を上げたこと自体は嬉しそうだが、それよりも詰まらされて手を痛そうにしている。
一ノ瀬さんは点を取られたことを少し不服そうにしているが、特に焦る様子もなく精神的には落ち着いていそうだ。
ここで白星の4番の桔梗がバッターボックスへ。
1年生チームとか関係なく4番を任されるだろう桔梗は多分だが、卒業するまでレギュラー落ちする事はないと思う。
桔梗は高校に入ってから技術的に取り組んでいることは特にはない。
というよりも桔梗も基礎的なところを鍛え直しているのだ。
実践練習が多いから気づいていないだろうが、桔梗には俺が見て完璧に合格を出せるほどのしっかりとした土台の作り直しから始めている。
桔梗はプロ野球選手になりたいとかなりたくないとかそういうことは言っていないが、彼女の実力があってそういう道に進むとなるとそういった野球の基礎は完璧にしておいて、後は実戦経験あるのみだ。
桔梗は右打席に入っていつ通りにリラックスしたフォームで構えている。
打撃フォームについては特に注文を付けるところもないし、ほかの基礎的なところが終わってから本当に細かいところを直していくようなレベルだ。
一ノ瀬さんのような投手は多分だが苦手ということはないと思う。
桔梗は130km/h超えるストレートでも普通に反応して打ってくるし、力負けることなく振り抜いてくる。
桔梗は梨花の詰まり方を見て何か勘づいているだろうし、ムービングファストまでは気づけていないかもしれないが、ツーシーム系やカットボールなどの詰まりやすい球を投げているのには気づいているだろう。
桔梗はかのんとは全く真逆でかなり消極的な打者だ。
だからといって初球から甘い球を投げてきたらそれは確実に捉えてくる。
あまり振ってこないのと、ボール球をほとんど手を出してこないとなると中々掴みどころがなく投げずらいのだ。
バシッ!
「ボール。ツーボールワンストライク。」
初球からかなり際どいところにストレート、スプリット、カットボールを投げてきているが、桔梗はスイングする様子もなくただ突っ立っているだけだ。
友愛のバッテリーもかなり慎重にならざるおえなくなっている。
桔梗のことは多分最上さんから聞いているだろうし、しかも午前中の打撃練習もベースを崩さずに強烈な当たりを打ちまくってた。
だが、打撃練習だけではバッターとして実践でどんな思考を持っているのか、何が得意なのかなんていうのは長い時間観察していないと分からない。
ここまで投げてきているボールでウィニングショットと呼ばれるような球を投げてきていない。
多分、色んな方向に球を曲げて相手を翻弄させて打ち損じを狙うというスタイルからなのか、変化の大きいを投げようとしていない。
多分球種も多く投げられるだろうし、変化球も変化量は小さいがスピードもあるし、キレも感じられる。
だけど、それだけで金属バットを持った格上の相手を抑えるのは厳しいと思う。
カキイィィーン!!!
インコース低めに投げてきたこの試合初めて投げてきたシンカー系の変化球をフルスイング。
桔梗はインコースに来る球を狙っていたのか、初見の曲がりが小さいシンカー系の変化球を完璧に捉えた。
ここまでフルスイングする桔梗も珍しいというくらいかなり強めのスイングで、打球も最上さんにも負けないくらいの打球から左中間へ飛んでいる。
「ホ、ホームラーン!!」
俺が朝外野に引いておいたラインを越えたことを、2塁の塁審が確認して指をくるくると回している。
普通の球場より3m余裕を持って線を引いておいたので、そのラインを越せば文句なくホームランだと言える。
グランドが広すぎるので、ライナー性の打球が外野を抜けると全てホームランになるのでゴロでラインを越えた場合はツーベースというルールも設定してある。
そんなことお構い無しに左中間に引いてある95mくらいのラインを軽々と越えて、100mは間違いなく飛んでいるだろう。
女子のバットとボールを使って俺が打つと140m位は軽々と飛ばせれるし、最長でいえば先週150m以上は飛ばした打球があった。
ここまでしないと球場を小さくしないとホームランは出ないし、小さすぎる球場は長打もなくなって見ていて面白くないから道具は高性能になっていっている。
投手はきついかもしれないが、それでも工夫したり切磋琢磨しているのでそれはそれで女子野球のいい形だと俺は思っている。
「ホームイン。」
桔梗の完璧な一撃で3-0。
桔梗の一撃で一ノ瀬さんのモチベーションが明らかに下がっているのが分かる。
やられたらやり返すと燃えるタイプでは無いみたいだ。
逆にサードにいる最上さん筆頭に桔梗の豪快な一撃を見て、野手の方は負けられないという強い気持ちが伝わってくる。
思ったよりも一ノ瀬さんに上位打線はついていけているが、下位打線はどうなのだろうか?
「桔梗!ナイスバッチ!」
「梨花も詰まりながらだけどいいバッティングだったよ。ピッチング頑張ってね。」
「お二人共ナイスバッティングです!」
ホームベースで梨花と桔梗がハイタッチをしている。
バッターボックスの近くで桔梗のバットを拾って2人を迎えている円城寺。
「円城寺さんも豪快にいった方がいいよ。当てにいかない方がいい。」
「分かりましたわ!皆さんに続いてあたしも打ちますわ!」
今日五番サードに入っている円城寺。
金髪と端正な顔立ちをしているが、性格自体はとてもおしとやかで正義正しい女の子というよりも女性という感じだ。
彼女は見た目に似合わずにユニホームの下はハードトレーニングで鍛えられた肉体があって、このチームでは珍しく器用ではなくその女子とは思えないパワーを生かした選手を目指している。
スイングスピード自体は桔梗と同等レベルあるが、やはりボールを飛ばす、捉えるというスイングスピードだけではない技術はまだまだと言ったところだ。
足が絶望的に遅いので、サードかファーストかキャッチャーだがファーストには桔梗がいるし、キャッチャーには柳生と七瀬がレギュラー争いしているところにキャッチャー初心者がくい込むのは無理と思ってサードにコンバートしてもらった。
まだサードとしては中々おぼつかないこともあるが、投げ方を矯正したお陰もあるのかサードからの送球は安定して見ていられるものになっている。
ガキィン!
「ファール!」
一ノ瀬さんのボールに詰まらされてはいるが、パワーで逆に押し込んでファールも強い打球が飛んでいる。
しかし2球で追い込まれてしまった。
ここまで一ノ瀬さんが投げたボール球は僅かに2球だけしかなく、一切無駄の無い投球を続けている。
パワーで押し込んでるとはいえ完全にしてやられているが、円城寺さんは桔梗のアドバイス通りにフルスイングで動くボールに対応している。
3球目。
ほぼサイドスローと言っていいくらいの横投げから投げてきて、クロスファイア気味で投げてきたので投球の角度もあって、横から横滑りするようなスライダー。
「うっ。」
横投げから背中から入ってきたボールに少しだけ腰が引けた円城寺は、インコースのボールからストライクに入ってくるスライダーを見逃した。
「ストライク!バッターアウト!」
円城寺には悪いがこれはかなりいい投球術だ。
打ち気があるところに打者の背中から入ってきてインコースのギリギリのスライダーは相当打ちずらいし、フルスイングする為に踏み込むからこそ余計に背中から来る球に対応できない。
これが最上さんや桔梗のレベルならファールに出来るだろうが、まだまだ経験値や天性の才能を持つ2人にはまだまだ技術的な面では追い付けそうにない。
ツーアウトランナー無しでショートの美咲がバッターボックスに入ってきた。
「お願いしまーす!!」
俺にもキャッチャーにもピッチャーにも元気よく挨拶しながらバッターボックスへ。
この仕草は昔から変わらないらしく、とりあえず皆に元気よく挨拶して仲良く野球をやってきたみたいだ。
中学生の頃は福岡最弱チームと呼ばれながらもエースで4番でキャプテンもやっていた。
頭が良くて運動神経が良くない幼馴染達と野球をやるのは大変だったみたいだが、チームに入ったことも一切後悔していないらしい。
美咲はこのチームで最もなんでも出来る選手の1人だ。
投手出身だが、ファーストとキャッチャー以外のポジションは無難に全てこなせるし、内野の守備はグラブ捌きと送球の安定度で言えば本職の選手たちよりも上手いかもしれない。
外野はどこも同じくらい守れるが、特に上手いという訳では無いが同じようにどこでも守れるのが凄い。
打撃は公園の打撃練習から大分欠点が補われてるみたいだが、明らかに実践不足というかいい選手との対戦が少なかったせいか、いい投手と当たるとどうしても対応しきれないところが目立ってくる。
小中と野球をやってきてずっと弱小チームで大会を勝てない、練習試合でも強いところと試合ができないというのが重くのしかかっているのかもしれない。
梨花や海崎先輩の2人とのシート打撃だと明らかに打てないことが増えてるので、出来るだけいい投手との対戦をさせてあげたい。
そういう点ではこの一ノ瀬さんとの対戦はいい練習になるだろう。
キィン!
「ファール。ワンボールツーストライク。」
美咲はどうにか一ノ瀬さんの変化する球に上手く対応してるように見える。
バットコントロールでどうにかしようとしているが、それがかえってスイングを鈍くして詰まった時に無理矢理持っていくことが出来ない。
「うーん。色んな方向に曲がるから捉えられないな。」
練習試合だから勝ちにこだわるというよりもこうやって選手たちが考えて実行して、成功すれば一番いいが失敗してもそれもまた経験として蓄積させればいいのだ。
4球ファールにして、ワンボールツーストライクからの6球目はここまであまり使ってこなかったというか使えないのか分からないが、比較的ノビのある綺麗なストレートがインコース低めへ。
カキィン!
「うわっ。上げちゃった。」
曲がってくるというのが頭にありすぎたのか、ボールの下を叩きすぎて完全に打ち損じた内野フライ。
「アウト!スリーアウトチェンジ!」
「みんなナイスだよー!守備も気合い入れていこうね!」
「「おぉーー!!」」
美咲は凡退したので守備の準備をしているのを見た夏実が、皆に一声かけてチームを鼓舞している。
最初は実力が足りていない夏実がWキャプテンの1人ということに少しだけ疑問のある選手もいたが、こういうちょっとした気配りの積み重ねや、献身的なプレーと見ると少しずつ皆がキャプテンとして納得してついて行こうと思うのだろう。
「美咲ちゃん、これグラブね。粘って惜しかったから次は打てるよ!その前にしっかり守ろう!」
「夏実ありがと。今日は私がキャプテンなのにごめんね?」
「一応私もキャプテンだから気にしないで!」
そういうと2人とも自分のポジションへ駆け足で向かっていった。
初回は上位打線が上手く機能して一気に3点を取る効率のいい打撃を見せた白星ナインだが、このまま強打の友愛が大人しくしているわけも無い。
「まだ試合は始まったばかりだから、お互いに頑張れ。」
初回から白熱しそうな雰囲気の試合は、これから夏の暑い日差しに負けないような展開になっていくのであった。
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