元天才選手の俺が同級生の女子野球部のコーチに!

柚沙

基礎の重要性!





合同合宿2日目。




彼女達の朝は早く朝起きたらすぐに朝食前のウォーキングとストレッチ。


俺はというと特にすることもないので、グランドにきて今日の練習のメニューの用意をしていた。




今日は午前中は2箇所でシート打撃を行う予定で、合宿場なのでバッティングマシンとかがないのが少しだけ打撃練習の効率が良くないとは思うが、それなら打撃練習ではなく実践練習をしたら良いだけなのだ。






「おはようございます。昨日の練習はとても考え方として参考になりました。ありがとうございます。」






そう言いながら俺の元にやってきたのは副キャプテンの青柳先輩だった。


あんまり気にしたら負けだと思っていたが、とても胸が大きく薄着するとそれが更に目立って目の毒である。






俺の印象だと少しだけ女の子っぽすぎるから副キャプテンに向いてないのかと思っていたが、あれだけ強いの1年のキャプテンの最上さんと1歩も2歩も下がった副キャプテンっていうのも上手く機能してるように思えた。






プレーも見たが、バランスのいい選手で少しだけぽっちゃりしていても足の速さもそこそこ速いみたいだし、守備も肩も平均以上のレベルはもちろんある。




打撃に関しては強打のチームの中で平均レベルだが、確実性のある打撃をやっているようだ。




ゲッツーを喰らわない、右打ちをする、犠牲フライを打ちに行くなどスイングの割にはやってることは堅実で不動で2番打者を任させれてるのもよく分かる。






「いえいえ。青柳先輩ならあれくらいは理解してそうでしたし、コーチとしては当たり前ですからね。」






「いやいや。あんな基本的なことを基本的なボール回しで再認識させれるのは教え方が私は上手いと思う。守備練習が好きじゃないうちのメンバーたちが積極的にプレーしてるのを見たらそう思っちゃってね。」






「まぁあれは監督たちから解き放たれて、半分は遊びと本気が混ざってたから積極的に楽しそうにやってたんだと思いますよ?」






「そうかもしれないけど、私達にとってはいい影響だったと思う。いくら打ちまくっても適度な守備力は必要じゃないかな?佐世保に負けたのだって結局はエラーとか投手力が無さすぎてほぼ自滅で負けた。あれだけ打っておいてあれだけ打たれてエラーすれば負けるよ…。」






「チームの方針に疑問を持ってるってことですか?俺も少しはその気持ちもわからなくは無いですけど、そういうことを思って自主的に練習をする選手を監督は求めてると思いますよ。監督は投手出身でしたよね?それなら自分のバックが下手でエラーするのは1番嫌だったと思います。なら、なぜ練習させないかというと青柳先輩みたいに思う選手が出てくるのを待ってるんじゃないですかね。」








俺は高浪監督の真意はわからないが、俺がもし投手で監督なら友愛みたいなチーム作りをするとは思えない。
やらないといけないとしたら、守備を重視して個人的に頑張ってる選手を試合に使うんじゃないかと思う。






あれだけ打撃練習すれば高水準の打撃の選手は何人が増えるが、スタメンでそこから選手を選ぶとしたら何が基準になるかといえばスタメンを選ぶ時は足の速さや、守備の上手さになってくると思う。






打撃練習ばかりしてるのに打撃力ではなくそれ以外から選ばれると分かったらどう思うのだろう?
ほかの練習を始めたいと言うだろうが、チームの方針は打撃中心なのだ。




ならどうするか?
数少ない守備練習、走塁練習で誰よりも意識して練習する以外に方法はない。
それか自主練でノックを打ってもらうとか工夫したり、努力する他ないのだ。








「そう監督が思ってるならみんなに伝えて守備練習を…。」






「それはやめた方がいい。それが真意なのかは俺も分からないですし、チームがバラバラになるかもしれませんよ?頑張って打撃練習してるのに選んでるのは他の所からとか思えば打撃のチームとして機能してるのもしなくなって、結果チームはバラバラで曖昧なチームになるのを望んで無いでしょう?」




早まってしまったかと思ったのか、少しだけなにかを考えるように黙ってしまった。




それにしてもあれだけ食いついてきたということは相当チームになにか思うところがあるのだろう。
これは高浪監督に話を聞いた方がいいかなと思ったが、それが原因で干されることがあったら青柳選手に申し訳無ない気持ちも大きい。






「まぁこの話はあまり人言うことでは無いと思いますよ。もし守備を鍛えたいと思うなら練習後や自主練でやるのが1番だと思います。」








「うん。わかった。なら一つだけ聞いていいかな?」






「俺が答えられることならなんでも聞きますよ。」






「みんなに自主練で守備練習とかをやらせるにはどうしたらいい?」






多分そう言う質問が来ると思っていたがそれが一番指導者として難しいと思っているところだ。


俺たち白星の1年生たちは良くも悪くも俺の事をかなり信頼してくれている。
だからこそ、俺が足りないと思う練習を嫌々でも真剣に取り組もうという姿勢を感じられる。






「最上さんはこの事を知ってますか?」






「え?千鶴?いや、千鶴は知らないけど…。」






「多分ですけど、青柳先輩が思ってるよりも最上さんは野球に対しては真摯で、この事を伝えたらなにか考えてくれたり行動してくれると思いますよ?監督には伝えずにどうにかしたいとはちゃんと伝えた方がいいですけどね。」






あんまり納得していないようだ。




けど、俺から見た最上さんと青柳先輩から見た最上さんは決定的に評価が違うみたいだ。


いつも近くにいる青柳先輩の方がよく見てると思うから俺が間違ってる気もしなくはないが、彼女は剛健と呼ばれるくらい男らしいのもあるが、チームメイトが悩んでるのを放っておくとも思えない。






「納得してないみたいですね。けど、自分で少しやってみてダメだったら最上さんに話をしてみるのがいいとおもいます。」








「うーん…。わかったよ。優秀なコーチでも選手達を説得したりするのは難しいみたいだね。」




俺もそれには心当たりがあるので、俺も青柳先輩も気まづい訳ではなく顔を見合わせて苦笑いしていた。






午前中の打撃練習は投手ではない選手達がマウンドよりもかなり前から投げ込んでストレートを打ち返す練習を永遠と繰り返した。


午前中は質より量と言わんばかりにグランドのどこを見渡してもバットを振り続ける選手達だが、こんな3時間くらいの練習でもかなり明確な打撃能力の差が出ている。






友愛の2年生は1年半くらいずっと鍛えられてきたのかスイングスピードが全然違うし、バットコントロールは絶望的な差はないが詰まった打球が内野フライになるか外野フライになるかじゃ全然違う。




白星の選手がが芯を食った打球が長打コースだったら向こうは確実にスタンドにぶち込むだろう。
白星の選手たちはほとんど気づいていないが、友愛の選手が使っているバットは男子用のバットだ。




あのモデルのバットは確か軽量型で800gぐらいのバットで、男子用なので反発係数も低い為ボールもかなり飛びづらいがそれを感じさせないくらい飛ばしている。




長打を打つ力はダントツで最上さんがずば抜けている。


2年の体格のいい選手とかよりもボールを飛ばす力だけで言えば桁外れの力がある。


打球音が他の選手と違うし、俺が確認しただけでも男子用のバットでレフトスタンドに2本ホームランを打っていた。




桔梗も負けじとホームランを打てるが、本人自身の性格のせいなのかホームランバッターになりたがっていないような気もする。








「皆さん集合してください。」






高浪監督がみんなに集合をかけて午後からの予定を話そうとしてる。






「とりあえず午後からは1年と2年分かれて試合してみようと思います。明日からはレギュラーと控えで試合をやっていこうと思いますので、投手はあまり投げすぎないようにしたいので、球数制限をつけるのでそこらへんはバッテリーは気をつけてください。」






午前の練習が終了。




あれだけ永遠とバットを振らせれていたら、打撃練習が好きだの楽だの言っている選手でもかなりバテるだろう。


トスバッティングでも素振りでもフリーバッティングでも緩いスイングするのだけは厳禁らしい。




友愛の選手は慣れたように全力で打撃練習を起こっているが、白星の選手はかなりバテてるようだったが、何人かは素振りでもいつも手を抜かずにやってる選手達は練習にもついていけてるみたいだった。






「あー。疲れたっちゃけど。」






「凛。お疲れ様。」






「東奈くん、お疲れ様ー。打撃練習結構好きなんやけど、あっこまでガンガンずっと振らされるとかなりキツイもんやね。」






「逆に言えばあれだけの毎日毎日ハードな打撃練習をこなしてしるし、練習終わっても疲れた感じはあっても、うちのように練習終わってあれだけ疲労困憊なのはどうかと思うけどね。」






「うわ。厳しいやん!けど、確かに向こうの1年生の子達も3ヶ月で慣れたのか元気がまだまだありそうやけん、凛たちがやっぱりあれだけ本気で打撃練習してないってことかな?」






「別にそういうわけじゃないよ。けど、3時間半くらい休憩挟みながらでもあれだけずっと本気で素振りしてたら、慣れてないなら足も腕もかなり疲労が来るのも分かる。逆に言えばうちはかなり守備練習をやるから向こうがそれだけ守備練習したら疲れるんじゃないかな?」








「なるほどねー。けどうちももっと打撃練習した方がいいと思うんやけど?」






「まぁそれは後々やね。心配せんでも好きなだけ打たせてあげるから。」






「んー。そう言ってみたのはいいものの、その言い方は嫌な予感しかせん!」






俺は打撃練習に頑張ってついていた凛のストレッチに付き合いながら話をしていた。


凛は私生活だとあまり話しかけてこないのだが、練習前とか練習後、練習中には積極的に話しかけてきてアドバイスや練習方法を積極的に聞きに来る。




凛は打撃に難ありで本人はその自覚があるようで自主練などはほとんど打撃練習をしている。




 

「軟式から硬式になってカキーンって打球音と芯に当たった時のあの感覚は最高なんやけど…。実践になるとどうしても軟式からの癖のドアスイングが出て詰まらされたり、思ったよりも飛ばなかったり…。」






「それは3ヶ月で直るもんじゃない。変な癖で振ったスイングを直すにはその振った分の3倍振らないと直らないって聞いたことあるからね。少し自慢になるけど、俺は野球の入りがプロ野球選手の完全コピーだから変な癖も何もなかったんだよ。けど、絶対にその悪いフォームは1年あれば絶対直してあげるから、凛もすぐにレギュラーというよりもからね。」






かぁ。分かってるんやけど中々基礎練習って進歩を感じないし地味なんよね…。」






「分かる。信じられないかもしれないけど、俺も家で練習する時はほぼ基礎練習しかしてないからね。」






「えぇ!?東奈くんも基礎練習とかするの?」






「するよ。逆に基礎さえ出来ればこれまで出来た色んなプレーは試合でもできるよ?けど、基礎が出来なくなってたらまともなプレーは出来ないと思う。」






凛は意外そうな顔をしているが、よくよく考えたら当たり前のことなのだ。


1番だめなことが基礎練習を何のためにやっているか分からずにただ漠然と練習をするのが時間の無駄なのだ。


嫌々でもなんでも何のためにやっているかをちゃんと把握することが1番大切で、それを把握してしまえば嫌々でもやれば反復練習でそれを身につけるのだ。




やる気があるなしセンスのあるなしとかはあるが、俺が合格出せる基礎的なプレーを身につけるのは早くても半年はかかるだろうし、俺がほとんどのプレイヤーは1年はかかるだろう。






基礎的な事は大きくて分けて4つ。


捕る、投げる、走る、打つ。


走るはまだいいとしても1番ここで難しいのは打つということで、次に投げること。
打つというのはただバットを振ってボールに当てるというだけならいいが、相手は打たせないようにタイミングを外したり、変化するボールを投げてくる。




それを打つために色んな技術を支えるためにはプロでも簡単に崩れてしまう打撃フォームを完成させる。




打撃フォームを完成させて、そこからタイミングが合わないとかもっとボールを飛ばすためのフォームにしたいとかなどは、体重移動、頭の位置が動かない、バットが内側から出ているかなどいくつかあるが、それを完璧に自分のものにしてしまえばそこからは自分がやりやすいように変えてもらって全然構わない。






投げるのが難しいというのは投げること自体が難しい訳では無い。




ただ、これも基礎的なことが重要なのだ。
まずは体重移動とかの体の動き。


肩、肘、腕、リリースするための指先までの腕のスムーズな力の伝導をしないといけないのだ。




素人になると1番力が入るのは腕で、肘の使い方がなっていないのでいわゆる女の子投げというのになって速い球も遠くにボールを投げることも出来ない。






「また言うね?絶対になんの為にをやっているかを忘れずに頭で嫌と思っていても身体はしっかりと基礎を叩き込んでね。」






「わかっちょる!やけど、あまりに基礎基礎言うからみんなウンザリしてるんやけど大丈夫?」






やはり基礎基礎言いすぎて皆ウンザリもするだろう。
これまで80回練習したとして80回は練習中に基礎の重要性を話してるような気もする。






「わかってる。それでも俺がウンザリされようがなんだろうが基礎さえしっかりしてしまえば野球は上手くなる。」






「はぁ。開き直ってそう言うと思ったっちゃんね。その話する時だけあまりにも真剣で怖さを感じるけん、みんな言うことは聞くと思う。」






そこまで俺は選手たちに鬼気迫るような言い方をしてたのか。
それは少し反省材料だが、怖さを感じるくらいに言った方がみんな言うことを聞くような気もする。






「皆が基礎を習得したらいう回数減らすって言っておいて。けど、3年間で基礎的な所を疎かにする奴は俺個人的に指導するつもりもないからね。」






「そういうところは厳しー。コーチとして譲れんところなんやろうね。凛とかレギュラーが厳しい選手はそれに従うしかないから従うけど…。」






「そんなに基礎練が嫌?桔梗とかかのんはレギュラーだけど、俺が言った基礎練を誰よりもしっかりとこなしてるけどね…。2人のプレーは全然違うように見えて基礎は同じで、そこから自分に合うスタイルに変えてるだけなんよ?」






「わかってるよー!けど、あのレベルになるにはどれくらいかかるのか、今の地味な練習で2人に追いつけるような気がしないってだけ!」






凛と仲良く話していたつもりだが、いつの間にか言い合いというか不満が少し爆発してるみたいだ。


俺も比較的最近まで選手だったから言い分はよく分かるのだが、選手のときもコーチの時も結局原点に1度帰ってから考えることが多かった。






その帰る場所がまだみんなにはないと俺は思っている。




色んなことを試したりして失敗して、自分のスタイルを決め直す時に野球の基本が出来ていれば、最悪シンプルなオーソドックスなスタイルに戻すことだって出来る。






「凛達の言いたいことも分かるけど、冷たい言い方をするならそれを俺に提議するならまずは俺の言うことを習得してからじゃないのか?地味だのキツイだの言っておいて、基礎練を辞めて俺が言ったことを習得できないならどっちみちレギュラー取るのは無理。」






俺はあまり選手達にこう言った挑発というか少し声を荒らげてなにかを言うことが少なかったが、周りに基礎練をいつもさせている選手達がいるのを分かっていて凛には少し辛い役を買ってもらうことにした。






「な!?誰もやらないとは言ってないっちゃけど!」






「不満はいつでも聞くけど、練習内容を変える予定は無いし、次の1年生たちが来るまでに習得させてあげたいと思ってる。今の2年と1年だけでレギュラー争いすると思ってないよね?来年の1年からもレギュラーが出てくるはず。そうなった時に勝ち残るには、俺の言ってることをまず習得できてないとその争いには参加する資格はない。」








俺は正論をぶつけた。


凛はここまで言われると言い返す言葉もないのか黙ってしまった。


近くにいたベンチ入りできるかギリギリの選手たちも気まずそうにしているし、自分たちにも聞こえるように言ってるのが分かってるんだろう。






「強い言葉で言っちゃったけど、凛たちは自分では分からないだろうけど、野球の基礎と呼ばれる動きは少しずつ身についてきてるよ。来年の1年が入って来る頃には全員合格点をあげられると思う。早い遅いはあると思うけど、1番遅くても来年春までにはどうにかしてあげるからね。」




凛は無言のままに俺の近くまでやってきた。
怒っているのかと思ったが、雰囲気は結構穏やかでいきなり殴りかかってくるということはなさそうだ。






「凛を代表で叱ったんだから今日の試合くらいはスタメンで交代ないしね?」






何を言ってくるかと思えば、自分が怒られたというよりも代表として怒られてあげたと開き直っていた。


凛は性格的に前向きというか負けず嫌いで、自分が使えると思ったことは積極的に使ってくるしたたかさも兼ね備えてる強い女の子なのだ。






「そう言われたら断る理由もないし今日はスタメンで行くよ。」






「やったね!やっぱりスタメンで1試合まるまる試合に出ないとね!」






とてもにこやかに笑う凛を見て俺も笑みがこぼれた。




そこまで試合に出たいという気持ちが俺によく伝わってきたし、そういう女の子が使える技術というか技というか、そういうものを使うのは高校生としてみたらいいことでは無いかもしれないが、俺は逆にそこまでしてくる本気さを買う方だと思う。




そうこうしてるうちにあっという間に午後の練習試合の時間になった。






「俺が主審するから1塁から3塁の審判は毎回人変えてやってください。試合に出てる子でも攻撃中に審判やってもいいからとりあえずできるだけみんなが1回はやれるように考えてやってください。」






「「はいっ!!」」






「それじゃ白星のスタメンはこれだから途中交代もあるから準備はしておいてね。投手は梨花が3回、七瀬が2回、美咲が2回で投げる予定で、勝ってても負けてても7回裏までやるからそれも忘れずに。」






投手はさっきも言ったように、梨花→七瀬→美咲の3人の投手をローテーションで投げてもらう。


明日も明後日も試合があるから球数を少なくして出来るだけ登板を多く出来るようにする為だ。












友愛のスタメンはと言うと…。






「おいっ!千鶴!キャプテンならスタメンくらいちゃんと考えときーや!」




樹林冴子きばやしさえこ


1年生の中でも突出して気の強い選手で、剛健と呼ばれる最上さんとは違って、女の子としてあまりにも芯が強すぎる。


選手のタイプが最上さんとそっくりであと少し全てが最上さんよりも下という印象を受けるが、最上さんが特別なだけで比べられる時点でいい選手なのは間違いない。








「キバコか。自分達で決めろっていったって俺以外のみんなの実力なんて五十歩百歩ばい。俺は3番サードでそれ以外は好きに決めたらよかさ。」






最上さんはこう言っているが樹林さんがうちに居たら桔梗とファーストが被っているが、サードが出来るみたいなので多分スタメンを簡単に勝ち取るだろう。






「誰が五十歩百歩か!自分だけよか位置におるけんって舐めちょるやろ!最上んが逆にベンチでよかばい!」






犬山憧子いぬやまあこ


この子も気の強い女の子だが、どちらかと言うと外からガヤガヤ言って標的となるとそそくさと逃げるという感じの女の子だ。


この子の最大の特徴は、とても珍しいというか現代野球にはあまり合っていないと思う天秤打法だ。


かなり前傾姿勢で左打者でバットの先を投手に向けて、左手はバットの真ん中を持って、相手が投げる寸前に普通の打者と同じように左手を戻して打つ。
この時に左手と右手は普通の打者ならくっついてるのだが、彼女はバットを振る時に両手が3.4センチ離れている。




投手のクイックとかが増えたので天秤打法だとタイミングが外されたりして、俺個人としては打ち方を変えた方がいいと思っているが、彼女はかなりいい打者だ。


氷に近い天才肌というか相当いいバットコントロールを持ってる。






「キバコとワンコは相変わらずうるせぇな。文句あるならベンチで大人しく座っとけばよかやろ?」






「ワンコって言うのやめろっていいよろーが!そもそも最上んがキャプテンとかこのチームも終わりばい。来年はキャプテン変えて貰わんとやってられん。」






「ワンコの言う通りさ。剛健かなんか知らんけど、ウチらの世代になったらキャプテン辞めてもらうけんね!」






ここまでハッキリと言い合いするのは中々女子同士としたら珍しいし、チームメイトということを忘れて張り合いを超えていがみ合いに近い気もする。






「あらあら。相変わらず仲良さそうでいいなー!私も混ぜてー!いつでも投げれる用意出来てるから9番投手は一ノ瀬彩さんでよろしゅう!」






「彩、お前午前中の練習どこいってたんや!打撃練習せんといけんって監督言いよったのに無視してサボりか?」






「サボってないよん?3時間で山登りさせられてた。白星の彼女と2人で行ってたから聞いてみたらー?」






相変わらずのほほんとしてると言うか、天然というかあれだけ言い合いしてる中に飛び込んでいく勇気は俺にはない。






「これ以上言い合っても決めれなさそうだから、昨日今日見た俺の主観で決めるけどいい?ダメって言うなら5分以内で決めて。」






俺は4人でわちゃわちゃしてるいる中で言い合いしている中に飛び込んだ。




「「はーい!」」




俺が話に入るとみんな俺の意見にさっきまで喧嘩してたとは思えないほど善意一致でそれでいいという意見だった。




白星高校1年生チーム




1番.セカンド四条かのん
2番.レフト時任氷
3番.ピッチャー西梨花
4番.ファースト橘桔梗
5番.サード円城寺緒花
6番.ショート中田実咲
7番.キャッチャー七瀬皐月
8番.センター王寺凛
9番.ライト江波夏実






彼杵友愛高校1年チーム


1番.ライト犬山
2番.キャッチャー高城
3番.サード最上
4番.ファースト樹林
5番.ショート西尾
6番.レフト青木
7番.センター木下
8番.セカンド三好
9番.ピッチャー一ノ瀬








「それじゃ今から試合開始するから集合して!」








「おっしゃぁ!姉妹校だろうがボコボコにするぞ!さぁ行くぞ!!」




「「おぉ!!!」」




友愛はなんだかんだ最上さんの気合いというかモチベーションの高さに引っ張られていて、かなり気合十分という感じだ。






「みんな行くよ!1年生チームはまだ負けてないんだからいつも通りに行けば大丈夫!!」




「「おー!!」」




今日のWキャプテンとして美咲の言葉と共に白星の選手たちもリラックスした表情でグランドに集まってきた。






「先行友愛高校で、後攻白星高校で試合開始します。例!」






「「よろしくお願いします!!!」」






遂に長崎の強豪に登り詰めた打撃のチーム友愛と、まだ1年生チームとして負け無しの白星高校の試合が始まった。







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