元天才選手の俺が同級生の女子野球部のコーチに!

柚沙

素人から初心者へ!





試合当日。




相手の高校はちょうどうちと強さの変わらないであろう、百道浜ももちはま高校。


公立の高校で、偏差値も普通で制服が可愛いと有名で校則も緩いらしいので結構女の子には人気があって、野球部にも茶髪や赤茶みたいな髪の女の子も普通にいた。




2年と3年は今日は練習試合に監督と行っており、いまペンチというかバックネット裏には教頭先生が顧問代わりに来てくれている。






「君が今日の1年生の監督でいいのかな?」




「東奈です。今日はよろしくお願いします。」




「私は鷹野。よろしくね。」




向こうの監督は25歳の女性の監督だった。
元百道浜高校の選手だったらしく、優しそうな監督で選手からも好かれるだろう。






「同じ歳の女の子たちを指導するの大変でしょ?けど、あの東奈さんの弟ならきっと出来ると思うから頑張ってね。」




鷹野監督は2年時に姉と予選で戦ったみたいでボコボコにされたと笑っていた。






初めての1年生だけの試合で、素人4人組はかなり緊張しているようだった。


夏実もキャプテンとして頑張らないという気合いが嫌という程感じられた。




美咲はというと元々キャプテンをしていたからか普段通りでみんなと談笑しながらアップをしている。




「そこの素人4人組ちょっとこっちに来て。」




そういうとまぁまぁガチガチになった4人組が俺の前に集まってきた。




「緊張してる?まぁこの前は途中出場で試合もぼろ負けしてたりして、なかなか酷い試合の途中からだったからマシだったのかな?」






「き、緊張なんてしてないッスス!」






「まぁ、向こうのベンチ見たら自分たちの鏡がいるよ。」




そういうと相手チームのベンチを指さして明らかに緊張してそうな5人がいた。


多分彼女たちも初デビューなのだろう。


高校から女子野球を始める子も少なくはないし、そういう選手でもプロで活躍している選手もいる。




それを見ると自分たちもあんななのかと冷静になったのか少しだけ楽になっていた。






「夏実、みんな集合させて。」






「ぜ、全員集合ー!」




少し緊張しているのだろうが、声はしっかりと出てるし試合も活躍とかは期待してないしこれまで通りに声を出して献身的なプレーをしてくれたらいいのだ。






「夏実、今日は負けてこい。多分格下だろうけど負けても構わない。」






「いやです!やるからには勝ちます!」




「なら、いつも通りにプレーするんだよ。」




俺は夏実の背中を軽く叩いて励ましてあげた。
夏実はにっこりとして俺に笑いかけてきた。






『これなら夏実もきっと大丈夫だろう。』






「よーし。それじゃ1試合目の初心者たちの記念すべき高校初スタメンを発表するよー。」






「1番ショート雪山沙依。落ち着いてプレーして。」
「は、はいッス!」


「2番セカンド花田聖美。緊張しすぎなくて大丈夫だからね。」
「は、はい!頑張りますっ!」


「3番レフト青島有香。落ち着いてそうだからそのままね。」
「はい。ありがとうございます。」


「4番ピッチャー奈良原里奈。あんまり目立とうとしないように。」
「4番ピッチャー!はい!」


「5番ライト江波夏実。いつも通りにやったら大丈夫。」
「はいっ!!」


「6番サード市ヶ谷咲。経験者だから内野の指示とかお願い。」
「うふふ。頑張るね。」


「7番キャッチャー七瀬皐月。今日はとにかくキャッチャーとして全体を見て頑張れ。」
「はい。」


「8番センター王寺凛。カバーとかしっかりね。」
「はい!頑張るけん。」


「9番ファースト橘桔梗。守備だけよろしくね。」
「はい。わかりました。」






「奈良原を投手にしたのはハンドボール出身で肩も強いからだけど、今日はストレートの速さよりもコントロール重視でよろしく。」




ピッチャーの奈良原は緊張した顔で、七瀬は落ち着いた表情で話を聞いていた。




「内野は初心者が多いから、とにかく一生懸命やるしかないしファーストが桔梗だから、捕ったらあんまり何も考えずにファーストに投げればどうにかしてくれると思う。」




内野が1番不安だが、ファーストに桔梗を置いているのでとんでもない送球以外はアウトにしてくれるだろう。






「外野は結構みんな上手くなってるから内野のカバーだけは忘れないようにね。」




外野は凛と夏実が守備はしっかりとしており、青島も結構外野守備のセンスはあったみたいなので
外野は安心できた。






「よーし!それじゃ行ってこい。」




「それでは試合を始めます。礼!」






「「よろしくお願いします!」」






お互いに元気よく挨拶が終わり、後攻を取ったうちは一斉にみんな守備位置に走っていく。




今日はうちが一塁側、相手が三塁側。
ベンチにはもちろん試合に出ていないメンバーもベンチ入りしていて、ちゃんと選手たちに声をかけたりしている。




美咲とかのんはうるさいくらい隣でそうじゃない、こうじゃないという指示や声出しをしていた。


声掛けをしていない人はいなかった。
大人しいというか基本的には静かな柳生も、いつも怒ってる印象のある梨花も試合中は声掛けをしている。


かのんと美咲みたいにうるさいとこれは声援というよりもこれはもはや野次だ。






試合は初心者が多い試合なのでエラーがとにかく多い。


緊張してるしてないとかは別として、厳しい当たりは取れたとしてもその後の送球がコロコロ地面を転がったり、とんでもないところに投げたりと初心者らしい試合だった。




うちの1番安心するのはやっぱりファースト桔梗だった。


全く届かないボールはともかくとして、ショートバウンドだったり明らかな送球エラーもしっかりと捕球してくれている。




4回を終わって5-3でうちのリード。


思ったより頑張っているのが投手の奈良原だった。
まだ変化球を投げられないが、ストレートをコントロールできるだけでも大活躍だ。






桔梗にはホームラン打つなと言っておいたので、それを守って軽くバッティングして2安打を打っていた。






野球初心者達はまだ試合でのヒットが出ていなかった。


初ヒットの嬉しさも早く味わえるといいなと思いながら、特にサインも出さずに試合を暖かく見守っていた。




カキィン!




そう言ってると3打席目に青島が詰まりながらもレフト前にポテンヒットを放って野球を初めて初ヒットとなった。






「有香ちゃんナイスー!」
「初ヒットおめでとうー!」




ベンチからも自分の事のように嬉しそうな声で声援と祝福が一塁ベース上の青島に飛んでいた。






試合の途中で凛を美咲と変え、桔梗を円城寺に交代させた。




ピッチャーも疲れてそうな奈良原から夏実に変更した。






「ゲーム!!」




審判の試合の終わりを告げる合図がグランドに響き渡った。






「「ありがとうございましたー!」」






初心者達の試合は結果9-6で試合は勝利した。
うちの得点の4点は相手のエラーによるものだ。


高校初ヒットが市ヶ谷と青島に出たが、まだ他の3人はまだまだ先になりそうだ。




この試合こちらのエラーが5つあったが、奈良原1つ、雪山が送球エラー1、守備エラー1、市ヶ谷1、花田1という内野にはエラーが出たが、外野はノーエラーで試合を乗り切れた。






投手結果


結果回安振四死失責
里奈4512041
江波3211020




打撃成績
結果打安本点四死盗振
雪山40001012
花田40001001
青島41000001
里奈40000001
江波42010000
市ヶ41000000
王寺21010020
桔梗22020000


途中出場
中田21010010
緒花11001000




みんなは1試合目楽しそうに試合をしていたし、ベンチもみんなを応援していた。
1試合目は相手もこっちも初心者が出てる言わば野球の世界への歓迎試合みたいなものだ。




次の試合は俺が明言した通りに、1年生レギュラーを明確に宣言される試合だ。




ベンチにいたみんなももう一度アップを始めて、初心者達は次の試合出ないことが分かってるのか、グランド整備をこなしていた。




俺もメンバーには結構悩んでいた。
メインポジションというよりも結構どこでも守れる選手が多くて、誰をどこにしたらいいか迷っていた。








「美咲、スタメン発表するからみんな呼んできて。」






「みんなー!ベンチ前集合ーー!!」






そうして試合とは別の緊張感に包まれながらみんなベンチ前に集まってきた。




余裕の表情の子もいるし、厳しい顔をしている子もいる。






「それじゃスタメン発表するよ。」



















コメント

コメントを書く

「学園」の人気作品

書籍化作品