元天才選手の俺が同級生の女子野球部のコーチに!

柚沙

入学式!



入学式当日。


いつものように俺と蓮司と桔梗は家から電車で学校に通うことした。


俺は自転車でもよかったのだが、とてつもなく朝早かったりすると流石に時間かかって起きるのが4時とかになるので電車通学にした。






「蓮司、本当に軽音楽部に入るのか?」




「当たりめぇよ!もうギターだって買ってるんだぜー。」




俺を励ますためかと思っていたが、俺が思ったよりも本気で軽音楽部に入りたかったのか。






「蓮司が楽器とか耳が痛くなりそうだがら聞かせに来るとか止めてね。」




「なんだ桔梗、もしかしてそんなに俺の奏でる音色が聞きたいのか?」




桔梗は軽くため息をついて、無視を決め込むのであった。






学校に着くと分かっていたのだが、女の子ばっかりだ。


去年共学になったからといって男子はほとんどいなかった。




今年はまだ確認もしていないが、1割男がいれば御の字ってところだろうし去年とか全体の2%だったみたいなのであんまり男達と馬鹿できるほど集まらなさそうだ。






予め教室が決められており、最初に教室に行くと席順が黒板に貼り付けられていた。




窓に近い前から4番目の席みたいだ。
学校に来るのがちょっと遅かったのか、女の子ばっかりの教室は結構居心地が悪かった。




唯一の救いは蓮司と同じクラスということと、同じ野球部の女の子達がパッと見で3人はいた。






席に着いたが俺の前も横も後ろも斜めも全ての女性だ。
オセロでも囲碁でもこの状況なら俺も女の子ということになるだろう。




右隣の女の子なんて早くも寝てるし、大丈夫なのだろうか?






「つんつん。」




???






「コーチ。おはよう。無視するなんて悲しい…しくしく。」




右隣で寝ていたのは氷だった。
気づかなかっただけでこのクラスには円城寺、夏実、柳生、氷の4人とクラスメイトになっていた。






「いや、寝てる子がいると思ってたけど氷だとは思ってなくて。ごめんごめん。」






「謝ってるなら許してあげる。ちょっと寝るね。すやすや。」






氷は寮でちゃんと寝てるのか?
あんまり夜更かししすぎてたら注意した方がいいかな?






「東奈くん、氷はいつもこんなんだから注意しなくても大丈夫よ。」




俺に話しかけてきたの柳生だった。
ここ2週間くらいで柳生が俺に話しかけてくることはほとんどなかった。






「柳生さんおはよう。氷とは小中一緒なんだって?それならよく知ってるんよね?」






「まぁそうね。けど、性格的なもので一緒に行動する事とかはなかったわね。見てたらわかるんじゃないの?」




「柳生さんとはあんまり会わなそうなのはまぁ納得はできるけど。」




「グランドの外でも柳生でいいわ。けど、氷のことは好きよ。悪い子じゃないしバッティングは本当に天才だと思うし。」






嫌いなわけではなかったようでよかった。


小中高同じチーム、寮も同じ部屋は流石に嫌がるはずだろうし。






「あいちん、氷のこと好きなんだ。嬉しい。ニヤニヤ」




「ふん!人の話聞いてないでさっさと寝てなさい!」




そういうとちょっと怒った様子で席に戻って言った。


氷もなかなか柳生のことをちゃんと理解しているようだ。






「はい!席に着いてー!」




そういうと教室に入ってきたのは天見監督だった。






「軽く自己紹介だけしておくけど、あなた達の担任の天見香織です。それじゃ入学式に行くから廊下に並んでー。」






俺たちは廊下に並んで入学式に出るために体育館に移動して、用意された椅子に座って始まるを待った。




こういう行事はここにいる95%くらいはだるいなと思いながら出ているだろう。


1番まだきっちりと話を聞いてそうなのは円城寺くらいだろうか?




お馬鹿の雪山なんかは今何が行われてるかもわかっていないかもしれない。






「新入生代表挨拶四条かのんさん。」




「はい!」






???






ド派手なオレンジ色の髪の毛に今日はポニーテールで少しオシャレにして、1年生代表として1番前のステージに背筋を伸ばしてゆっくりと歩いていた。




俺は半ば唖然としてかのちゃんを眺めていたが、視線は真っ直ぐで俺の方を見る様子もない。






「あの子って野球特待生みたいよ。」


「専願入試の3科目だけだけど、すべて満点取ったって聞いたよ。」


「野球も出来て凄く優等生なんだろうね。」




優等生?
問題用紙にモナ・リザを書いてテストで満点とる女の子が優等生なのかは、もはや俺に判断することは出来なかった。




「本日は私達新入生の為にこのような盛大な式を挙げて頂き誠にありがとうございます。桜の花びらが柔らかな風に舞う中…」






とてもハキハキといつものような明るい声とは違い、透き通るような綺麗な声でスピーチをしている。




その堂々としスピーチも凄いと思ったが、原稿用紙無しで1年生をゆっくりと見回しながら話している。




一瞬目が合うといつものニコニコという感じじゃなくお上品で優しく微笑んできた。




あれはかのちゃんではないと心に言い聞かせ、新入生代表の四条さんの素晴らしいスピーチに聞き入ることにした。




「令和2年4月9日、新入生代表四条かのん。」






俺は新入生代表の聡明な女性の四条さんに惜しみなく拍手を送った。
彼女は頭脳明晰で聡明な女性としてきっと皆の憧れの存在になるだろう。




俺もいつかはあの方とお話くらいしてみたいものだ。




あまりに感動して盛大な拍手を送っていたら近くにいた柳生にとても冷ややかな目で見られていたが、それを知ったのは後で夏実達にこっそりと教えてもらったからだ。






ついでにいうと俺は3年間あの完璧な女性の四条さんに会えることはなかった。









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