元天才選手の俺が同級生の女子野球部のコーチに!

柚沙

実力!





「はよグランドきんさい。」




俺に指を立ててこっちに来いとジェスチャーしてきた。
俺は渋々グランドに荷物を持って、グランド入る前に一礼し監督さんにも軽く頭を下げた。






監督さんには事前に連絡がいっており、隣で天見さんの電話を聞いていた。




「はいはい。来ても無駄になるからオススメはしない? はい。 うちの優秀なスカウト兼コーチなら問題ありませんよ。 大丈夫かって?本当に大丈夫ですよ!」






よくよく思い出したら、相手の監督はやめた方がいいと忠告していたのに天見さんはそれでも押し通してきた。




元チームメイトの西さんのはとこだからか?
よくもまぁ単身で俺の事を呉まで送り付けたなと腹が立ってきた。






「おい!遅せぇよ!」




これから俺はどうなるのか分からないが、来たからにはやることやらないとだめだ。






「梨花!お客さんになんて口聞くんだ!」






フルネームは西梨花にしりか
花らしさが少しでもあることを期待しておくか…。








「うっさいんじゃ糞ジジイ!」




これは花も枯らされる勢いだ。
そんな冗談も言えるくらい俺は妙に落ち着ついてきた。






「まぁとりあえずキャッチボールでも付き合ってくれない?」




そういうとバックの中から普通のグラブじゃなく、キャッチャーミットを取り出した。






「お?お前キャッチャーなん?えぇね。たまにはワシの球しっかり受けてくれる奴探しとったんよ。」






「気が済むまで投げていいよ。その代わり少しだけちょっと調べさせて。」








はいはいという感じで手をヒラヒラと俺に振ってきた。
なんだかんだ受け入れられてはいるのだろう。






キャッチボールをして分かったことがある。
彼女はかなりいい身体能力をしているかもしれない。






ボールを取ってから投げるまでのスムーズな体捌きと投げる時のしなやかな上半身の動きはいいものを持っている。




女子用のボールを投げてみて思うが、やや軽くちょっと小さい。物凄く編み目が指にかかるし、直球は空気抵抗を受けずらく、それなのに変化球はしっかりと曲がる。




1番いいのが手に特に馴染む。
全然ボールが滑らないし、逆に滑らせて投げるスライダーを投げるのを苦戦していた。




これで女子選手の平均球速が6〜7キロ早くなったのも頷ける。




彼女も女子選手として大きな壁の遠投80mはクリアしている。
江波さんのチームメイトの七瀬さんの肩の強さにも驚かされたが、西さんも匹敵する強さだろう。






女子用のボールで投げるのが楽しくなって80m先くらいの西さんにほぼ真っ直ぐの軌道でで投げ返していた。






西さんの顔は分からなかったが、周りのチームメイト達が驚いた顔でキャッチボールを見ていた。




監督さんでさえ、指導する手を止めてキャッチボールを観察していた。








「そういえば名前は?聞いてなかったけ、教えてくれへん?」






「東奈龍。ちょっと遅いけどよろしく。」








「あぁ、よろしく。知ってると思うけど西梨花ね。」






今のキャッチボールで多分少しだけ俺のことを認めてくれたっぽかった。






「ワシの球受けてくれるんけ?久々に本気で投げられそうやき、失望させんなよ。」




俺はゆっくりとブルペンに向かって、面とプロテクターだけつけて受ける準備をした。




スピードガンをセットして彼女の速球のスピードをチェックすることにした。




キャッチボールをしていても思ったが、投げ方がかなりダイナミックでかなり様になっている。




様になっているという評価はあんまり良さそうには聞こえないだろうが、投手というのはありとあらゆる能力を使って抑える。






相手の投げ方がダイナミックで球が速そうという印象で相手に威圧感を与えられるならそれだけで充分だ。




「よしっ!行くぜっ!」






バシィッ!




俺は隣に置いたスピードガンを見た。
一球目から117キロか。


それから10球くらいストレートを受け続けた。
マウンドに行くと身体能力がいいのが更によく分かる。




少し球のバラつきはあるものの、スピード、球威共に福岡の投手の中でもトップレベルだ。




双子の姉のピッチャーの結衣に少しだけタイプは似ているが、そこら辺を差し置いてもいい投手だろう。






「なぁ、龍。ストレートどれくらいのスピード出てる教えてくれねぇか?」






「112キロだねー。思ったよりも速くないみたい。」






「マジで言ってんのか?壊れてんじゃね?」






「力抜いて投げてるんじゃない?もっと本気で投げてしてもいいのに。」






「納得出来んわ。これでどうじゃボケが!」






嘘ついて煽ってみたがどうだろうか。
結構高めに浮いた球だったが、結構スピード出てるような気がする。






『121キロか。女子中学生なら全国トップレベルだな。』






「ごめん!見間違えてたっぽい。121キロ出てるよ。」






「それでもそんなもん?ワシもまだまだやの。」




俺はその後変化球とかも受けてみたが、変化球は一種類しか投げなかった。




多分SFF。高速のフォークだ。
しかもかなり落差があってスピードもある。




ここまでの精度の変化球なら一球種でも多分戦えると思うし、後はストレートがどれだけ伸びるかが鍵になりそうだな。






「なんでスプリットしか投げないん?」






「他の変化球覚えるなんてたいぎぃから。別に一球種でもよくね?」






たいぎぃはダルいとかそんな方言だったか?






「いや、別に悪くないしストレートとスプリット更に磨いたらいいと思う。」






「ほんまよな。話がわかる奴で助かるわ。」




実際はツーシームあたりを覚えてくれるならそれが一番いいけど、それはストレートとスプリットだけじゃダメだと思った時に覚えたらいいだろう。






「悪いんやけど、後この位の項目があるんよね。よかったら記録とらせてもらってもいい?」






ほぼ断られると思ったが、投手以外のどれくらいの才能があるかが気になった。




返事はあっさりOKだった。
ブルペンで好き放題投げてミットがいい音させてたら、気分も少しは良くなったんだろう。






打撃のチェックはちょっとだけグランドを使わせてもらい、15球くらい軽く変化球交えて投げてみた。




西梨花。 


右投げ右打ち
推定168cm 60kg




打撃能力


長打力 65〜70
バットコントロール 30〜35
選球眼 10〜15
直球対応能力 30〜40
変化球対応能力 60
バント技術 拒否されたため不明
打撃フォーム 
スタンダード
バットを肩に乗っけて、打つ瞬間だけ少しだけ上にあげて下から上にかち上げるようなスイングで、スタンスも少し広めで、踏み込みもほんの少しだけ足を上げて踏み込むだけの簡単に言えばやる来なさそうだ。


スイング自体は完全なアッパースイングだ。




守備能力は不明。
投手以外に守れるところは外野らしいが、彼女曰くそこら辺の外野手よりはうまいらしい。




走塁能力


足の速さ 80
トップスピードまでの時間 40
盗塁能力 不明
ベースランニング 不明
走塁判断能力 不明
打ってから走るまでの早さ 不明
スライディング 不明






投手能力


最高球速 121キロ
コントロール 50
平均球速 117キロ
変化球 SFFのみ
投球フォーム 


今どき珍しいワインドアップ。
投げる時に左手をやや高めに持っていき、そこからはかなり理想的なフォーム。
投げ終わったあとに一塁側に上体が流れているため、ピッチャーゴロやバント処理が多分上手くないと思う。


スタミナ 不明。そこそこはありそう
フィールディング 不明。多分良くはない
クイック 25?
牽制の上手 不明






投手としてはある程度完成はされている。
弱点はちらほら見えているが、身体をもう少し作っていけば130キロオーバーの投手にはなるだろう。


打撃はパワーがあるが、打つのが好きじゃないのかフォームからやる気が見られない。


物凄いアッパースイングだからなのか、カーブをレフトスタンドに放り込んでいた。




身体能力高さが出たのが、足の速さだ。
50m走でタイムが7.48秒。
かのちゃんには届かないが、王寺さんとほぼ同じくらいか?




投手としては説明した通りで、ストレートの球が速い。特徴が球速にばらつきが少なく平均して速い球を投げられる。


コントロールも良くも悪くないから四死球出しまくって自滅するっていうことは無いと思う。


クイックやフィールディングは期待できないが、それを加味してもいい投手なのは間違いないだろう。






後は、彼女自身の性格だろう。
俺は男でこんなもんと思っているが、これが同性になると上手くいくのかはなんとも言えないところだ。






「おい、龍。どこから来たから知らねぇけど、今日帰る訳じゃないんやろ?それなら明日ちょっとワシに付き合えや。これ連絡先。 また明日のー。」






そういうと練習終わってみんなに雑に挨拶してそのまま帰っていった。




とりあえず明日も彼女の相手をすることになってしまった。




私生活は少しは大人しいといいんだが…。











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