元天才選手の俺が同級生の女子野球部のコーチに!
再会!
「くっそ!」
俺は家に帰宅する途中で、大分暗くなった公園に寄りベンチで休憩しながら飲み終わったジュースの缶を蹴り飛ばした。
総合公園から家までゆっくり帰れると2時間はかかる。
30分くらい漕いだところで休んだ公園は、たまたまこの前男の子と女の子を間違えた公園だった。
俺は後30kmくらいの距離を自転車で漕いで帰る気が失せていた。
七瀬さんはほぼ強制的に腕を引っ張られて、俺に答えを告げることなく連れていかれた。
失敗するならまだいい。
邪魔されて失敗するのは俺は納得いかない。
「あれ?あなたはこの前の幻の野球マンさんですか?」
「え?なんだその野球マンって…。」
「やっぱり!野球マンさんこの前はありがとうございました。教えられた通りに練習したら少しだけ空振りが減った気がするんですよ!」
「あの時の!それはよかったよ。」
この前はかなり暗かったので顔が見えなかったが、今日は深々とフードを被り、トレーニングの用マスクをしていたので全然顔がわからなかった。
「それよりもそんな格好してたら、警察に通報されるんじゃ?バット持ってるし…。」
「さっき警察に話を聞かせてと言われました…。」
やっぱりそうじゃないか。
俺もこの前の女の子と思わなかったら普通に逃げ出すようなかっこうをしている。
それにしても5月なのにこんなに暑い格好をして、減量でもしているのか?
厚着をしているのでパッと体型は分かりずらいが、太ってるとは思えなかった。
「なんでこんなに暑い格好して練習してるの?」
「んーと、夏の大会の為に暑さに早めに慣れておこうと思いまして。」
「なるほど。けど、自然に暑さにはなると思うからあんまり意味ないと思うけど…。陸上とかじゃなくて比較的楽な野球だし。」
「それもそうですね!まぁこの服装好きなのでこのままでいきます!」
フードを取って出てきたのは暗くてよく分からないが、少しだけ焦げ茶色の髪の毛?で汗に濡れたボブヘアーの結構どこにでも居そうな普通の顔の女の子だった。
「うわ!こんなに汗かいてる!恥ずかしぃ!」
そう言うとすぐにまた深々とフードを被り直してしまった。
「あ、野球マンさん。嫌なことでもありましたか?結構イライラしてたみたいですけど。」
さっきの怒って缶を蹴飛ばしていたのを見られたのか。
あんまりこういう姿を人に見せるのも見せられるのも、いいものではないだろうなと思った。
「いや、大丈夫!あんなところ見せてごめんね。」
「いえ!野球マンさん!」
「いや、野球マンさんってのはやめてくれないかな。」
さっきからなんの迷いもなく俺の事を野球マンさんと呼んでいるが、俺は凄い違和感があったのですぐにツッコミを入れた。
「俺は東奈龍。今は中学三年生。呼び方は任せるけど野球マンさんはやめてね。」
「龍くんね!私も中学三年で同い年だったんだね。私の事は美咲って呼んでね!」
美咲か。
毎日ここで自主練をしているのかな?
この前も今日も素振りをしているから打者なんだろうが、この前のスイングを見るにまだまだこれから上手くなって行くのを期待しよう。
「美咲ね。俺もそろそろ帰らないと行けないから、練習頑張ってね!」
「わかったー!ってちょっと待ったー!」
俺は美咲に強引に首根っこを掴まれた。
「おいおい!その引っ張り方酷すぎる!」
「ごめーん!教えてもらいたいことがあったからついやっちゃった!」
ちゃんと申し訳なさそうにはしてるが、流石にいまの引き止め方は女の子のやり口じゃない。
タメ口になったらなんか人が変わったような感じがするが、これが素なのか?
前はもうちょっとおしとやかだった気もしたが、記憶違いか?
「そう言えばこの前なにを教えたか覚えてないんだよね。」
俺はちゃんと覚えないといけない相手の癖もやチームメイトの癖は、しっかりと頭に入っているが公園であった女の子スイングはさすがに覚えていなかった。
「えー!そんな!私のスイングがドアスイングだって言って教えてくれたのに!」
「そういえば確かドアスイングだった気もするかな?それで今日は何を教えてもらいたいのかな?」
「教えてもらいたいというか、スイングがどうなったか確認してもらいたくて!」
そういうと俺の前でこの前のようにスイングを披露していた。
この前の記憶が少しずつだが蘇ってくる。
その記憶のスイングと今のスイングを比べると結構違いがあった。
ドアスイングはかなり直っていたが、少しだけ気になる点もあった。
「美咲、素振りしてる時何考えてる?」
「え?ドアスイングにならないようにとにかく沢山振ってるよ!」
「なるほど。ちなみに一日どれくらい素振りとかしてる?」
「朝200、学校で100、練習で200、家帰ってきて500だから1000本くらい振ってるかな!」
女子にしては相当頑張って素振りしてる。
男子でもなかなか振れない数を彼女は振れているみたいだ。
「なら、次のアドバイスをしておこう。」
「わーい!やったー!」
「一日のスイング数を練習抜きで100本にしよう。」
「え!?減らしたら上手くなれないのにー。」
「なら、今から練習の仕方を教えるよ。」
俺は家に沢山練習機器があった為、この練習法はやってなかったがこのがむしゃら練習娘にはこの方法はいいだろう。
「まず、ホームベース書いて。」
「え?う、うん…。」
「ホームベースはそんなに大きくないよね?ちゃんと書き直しなさい。」
「うぅ…。別にいいじゃんか…。」
「ダメだよ。なら試合でもその大きなホームベースでもいいの?」
少し考え直したのか、よく考えてホームベースを書き直していた。
俺の教える練習法は、イメージトレーニングを主にした素振り。
ただバットを振っても上手くならないと言われるが、あながち間違えではない。
どういうときにかなり多くの素振りを必要とするのかは、個人的な感想だが崩れたフォームの修正や新しい打撃フォーム変更、悪い癖を直す時。
その時はフォームだけを意識してフォームを固定することだけを考えてやる。
何も目的なく振っても疲労して雑にバットを振ってもフォームが崩れて変な癖がつきかねない。
バッターボックスもそのまま書かせて、打席に立たせた。
俺は少しだけサービスしてあげた。
今ならまだボールが少しだけ見えだろう。
「美咲!さっきまでは機嫌悪かったけど、コーチとしては調子いいからおまけしてあげるよ。けど、打っちゃだめだぞ!よくその光景を目に焼き付けるんだよ。」
俺はウォーミングアップ無しに仮想の打席に入っている美咲にボールを投げてあげた。
ストレートは120キロくらいで、スライダー、カーブ、フォーク、シンカー、シュート、ツーシーム、チェンジアップ、ナックルカーブなど20球くらいをストライクゾーンに投げ込んでいった。
「ちゃんとバッターボックスもホームベースも書いて、さっき投げたボールをしっかりと捉えるイメージを頭で考えながら1回1回全力でスイングする。100回もしっかりとやれば時間もかかるし疲れるから。」
凄くキラキラした目をして俺の事を見ていた。
「龍くん!投手も出来るだ!流石野球マンだ!」
「あのなぁ…。」
「ありがとう!さっきのイメージはしっかりと覚えた!その練習してみるね!」
そういうと早速素振りに戻って行ってしまった。
早速俺の教えを守ってちゃんとバッターボックスに入って、まるで投手がいるような感じで素振りを始めた。
「まぁ、いいか。」
俺は七瀬さんのスカウトを失敗したことも、美咲や江波さんの真っ直ぐとした野球をへの愛情を目の当たりにしたら俺のイライラもどうでもよくなっていった。
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