究極の魔女はダンジョン系セラピスト

流川おるたな

魔女の魔法

 生まれ育った村キャメルで助けてくれたエヴェルは、両腕に剣を持ちモンスターと闘っていた事を思い出す。

 エヴェルのような勇者を目指すなら形から入ろうとカミュは決めた。

 剣を探して店内を見渡すと、鉄の剣が目に留まったが値札に10万ギラと書いてあり断念する。

 隣にあった銅の剣は1本が2万ギラと書いてあり、手に取り軽く振ってみるとしっくり来たようだ。

 普通の13歳の少年が扱うには重荷だろうが、幼い頃から働き狩をして鍛えられたカミュだからこそ、重い銅の剣でも使いやすく感じたのかも知れない。

「すみませーん!この銅の剣を2本ください!」

 購入して装備したカミュの姿は、ぶかぶかの皮の鎧と、身長に合わない銅の剣の長さで滑稽に見えた。

「今は間抜けに見えちゃうけど、そのうちきっと似合うようになるさ」

 レコはズバズバとものを言う質である。

 二人は武器屋をあとにすると、残ったお金でバックパックを購入し帰ることにした。

 バックパックも値段がピンからキリまであったが、残金に余裕が無く1万ギラの手頃なものを購入する。

 買い物を終えたカミュとレコは、マリムの家に向かって大通りを歩いていた。

「ボクは経験が無いから良く分からないけれど、これだけあればダンジョンに行けるんじゃない?」

 レコが適当な感じで言うと、真面目な顔をしてカミュが答える。

「うん、これで行けると思う。でも問題はパーティメンバーだなぁ…マリムさんが紹介してくれるって言ってたけどどんな人だろう…」

 そんな会話をしながら二人が家に着くと、マリムはセラピストの仕事で相談者の相手をしている最中だった。

 時間的に昼食時ということもあり、カミュは自分の部屋に荷物を降ろし、キッチンで昼食の準備を始める。

 レコは猫の姿になってマリムの仕事場へ入って行った。

 昼食の準備が整ったところで、仕事を終えたマリムと人間の姿になったレコがキッチンへ入る。

 椅子に腰を掛けたマリムがカミュに話し掛けた。

「カミュ、レコから聞いたわ。買い物は順調だったようね。買った鎧のサイズが合わないらしいけど、今すぐ持って来るといいわ、ちょちょいと魔法でフィットさせてあげる」

「良いんですか!?すぐ持って来ます!」

 カミュはそう言いって勢いよく二階の部屋へ行き、皮の鎧を装備してキッチンへ戻って来た。

 その姿を見たマリムがニマッと笑う。

「フフフッ、確かにこれじゃみっともないし動き辛そうね。魔法をかけるから動かないで」

「は、はい!」

 魔女は魔法使いと違い、道具を使用せずに魔法を使う事が出来る。

「ん~ほいっ!」

 マリムは右手の人差指を立て、小さい円を描くように動かし皮の鎧に魔法をかけた。

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