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霊能者、異世界を征く!~奴隷からの出発、魂の能力継いで下剋上。

るう

荷物とお金

サンサンと降り注ぐ朝日に、俺は半ば強引に目をこじ開けられた。無理やり身体を起こしたが、頭は重いし、身体はギシギシである。
簡易ベッド……俺からしたらただの「板張りのベンチ」がとにかく硬かった……それプラス、たぶん筋肉痛だな。そして相変わらず身体が重い。
昨日は、引きこもり時代から比べると一年分くらい動いたし、慣れない動作の連続だった。
重い剣を振り回したせいか、肩がバッキバキ。せめてもの救いは、利き腕が神様からの貰いもので助かったのかもしれない。そうでなきゃ、今頃は血マメだらけだったかもしれない。

「うう、酷い寝起きだ。……それにとんでもない夢も見た」
『よう、マヒト。いつまで寝てるんだよ。キツネのにーちゃんが心配してたぞ』
「…………ああ、もう。夢ならよかったのに」
『なにブツブツ言ってるんだよ。お前も早く支度しろよ」

なんで幽霊に小言を言われなくちゃならないんだ、と本気で泣けてくる。
ともかく、ヤトとルルゥは今日の弁当を頼みに下へ降りているらしい。そういえば、昨日討伐が途中だって言ってたっけ。
相変わらず冷たい水に縮こまりながら顔を洗って、さっさと服を着替えた。あちこち痣だらけなのに、右腕だけ傷一つないのがいっそ気持ち悪い。
何をするにも利き腕が丈夫だというのは、ハンデだらけの俺にとっては正直なところ助かる。だけど、幽霊を素手で触れるってのは余計なオプションだったな……マジで。
そうこうしているうちにヤトたちが部屋に戻って来て、俺たちは朝食の為に、再び一階に降りた。

「討伐に出かける前に、古着屋に寄るぞ……それじゃあんまりだからな」

言わずもがな俺の服装の事だ。
だらしがないを通り越して、ぼろ布でも羽織っているような感じになっている。

「……あ、そういえば俺カネ持ってるかも」

卵焼きのようなものを頬張りながら、俺はずっと肌身離さず持っているリュックを見せた。青衣の神様が、別れ際に当面必要な物やお金が入ってると言っていたのを思い出したのだ。
中には、幾つかの着替えや革で作った水筒らしきもの、手拭い、非常食、火打石のようなもの。そして厚手の生地で出来た、ジャラジャラ音のする巾着袋が一つ。

「これは、お金かな?」
「すごいな、小金貨二枚、銀貨二十枚、大銅貨十枚、銅貨二十枚か。これだけあれば、当分は困らないと思うぞ」

俺が袋を開けてみせると、ヤトがお金を数えてくれた。
ヤトの話を参考に貨幣の価値を日本円に換算してみると、銅貨が百円、大銅貨が千円、銀貨が一万円、大銀貨が五万円、小金貨が十万円くらいになるらしい。その上に金貨、大金貨、白金貨などあるというが、庶民が持つのはせいぜい銀貨くらいまでだろう。

「着替えもあるようだけど……」
「だが、これだけでは旅は無理だろう。最初の出費は痛いが、少し多めに揃えたほうがいいな」

食事を終えて部屋に戻って来た俺は、ベッドの上にバサッといくつかの服を取り出した。流石はこの世界の神様のチョイスだ、ちゃんとこっちでもおかしくない服だし、なぜかサイズもぴったりだった。
けれど、確かに旅をするには足りないかもしれない。

「ほう、これはなかなかいい生地だな。なにより肌触りが良い。それにこれなどは不思議なくらい伸縮して動きやすそうだ」
「ホントだ、うわーなにコレ。いいな、私もこんなの着たい」

ルルゥは、白く滑らかな布地を手に取り、思わず頬ずりしている。
うん、それきっと俺の下着とかだ。
だがそれは知らぬが仏というものだろう。ひったくるようにルルゥから取り上げ、さっさとリュックに仕舞った。

「ヤト、着替えるからルルゥをあっちに……」

別に邪険にしたわけではなかったが、ルルゥは少し機嫌を損ねたようだ。見るからにぷぅと頬を膨らませて、ヤトに先に行ってるからと言い置いて、さっさと出て行ってしまった。
ルルゥには悪いけど、嫁入り前の娘に、男の裸なんぞを見せるものではない。断じて、恥ずかしいわけじゃないぞ、痩せっぽっちとか言われたことを気にしているわけではない! 断じて……。
口を押えてプルプル震えてるそこのおっさん! このやろう、笑ってるのバレバレだからな。

「なかなか似合ってるじゃないか。すっかりこの国の住人だな」

一般人な農村地では、くたびれた木綿のシャツに、ゴワゴワのズボン、布か木の靴、が定番である。
俺が選んだ服も、いたって普通のシャツに、濃い紺のパンツ、脛まである革のブーツといういでたちで、目立つ要素はないように思えるが、新品だと言うだけで上等に見える。
それでも、昨日のようなジーンズでないだけで、違和感はかなり拭えただろう。

「よし、服は大丈夫そうだな。これからのことはまた相談だが、申し訳ないが今日のところは俺たちの用事を済ませても構わないか?」
「ああ、俺はかまわない。というか、俺も付いて行くのか?」
「いや、マヒトは宿に残ってくれ。依頼内容が討伐だからな」

さっきルルゥが先に出て行ったが、例の角兎の討伐だな。確かに俺なんか行ってもウサギに頭突きでもされたら即死だし、足手まといだよな。
さっきも感じたが、ルルゥは俺のことをあまりよく思ってないような気がする。お兄ちゃん子だから、俺が足手まといになっているのが気に入らないのかもしれないな。

「俺も、町に出て構わないか? 少し買い物もしたいし」
「それは構わないが、危ないことはするなよ。ああ、ティムがついてるなら大丈夫か……」

いや……、幽霊が憑いてるから安心って、俺の信頼度は幽霊以下か?
ヤトはどこにいるかわからないティムに「マヒトを頼んだぞ」とかなんとか言いつつ、颯爽とモンスター討伐に出かけて行った。
……なんかもう、奴隷というよりすっかりヒモみたいだな、俺。
ヤトたちがこの町での仕事を終えたら、俺の処遇がどうなるかちょっと不安だが、今は考えても無駄だ。
せっかくお金も持ってたことだし、旅に必要なものをしっかりと買い揃えて、いざという時に、そこそこ対処できるようにしておくことが肝要なのだ。

「何はともあれ、異世界二日目だ! 相変わらず鉛の服を着ているのように身体が重いけど、この眩しい太陽だけは、こっちでも変わらず元気をくれるな」

宿屋から一歩出ると、そこは大きな通りに石作りの街並みがずーっと続く風景だった。なぜだろう、見たこともないはずなのに、俺はちょっと懐かしく思ったのだった。

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