話題のラノベや投稿小説を無料で読むならノベルバ

霊能者、異世界を征く!~奴隷からの出発、魂の能力継いで下剋上。

るう

意外な能力

「……まあ、今更どうにもならないことだ。俺の完全な失態だからな。だが、ドリスには申し訳なくて……、今頃どうしているのか」

ティムは俺に憑依するまで、あの場に縛り付けられていたようだ。まあ、いわゆる地縛霊というやつだったのだろう。
俺がそう説明すると、なるほどと納得して「でも」と付け足した。

「よくわからないが、今はアンタにくっついているみたいだ」
「はっ!? どういう……」

しんみりと話を聞いていた俺は、続いたティムの言葉に思わず立ち上がった。ルルゥをベッドに寝かしつけていたヤトが、驚いてこちらを振り向いた。
慌てて何でもないと手を振って、ティムに小声で詰め寄った。

「俺にとり憑く気か!?」
「こっちだって困ってんだよ。せっかく町まで来れたんだし、ドリスの様子が見たくて出て行こうとしたんだが、どうもこれ以上は離れることが出来なくてよ」

そう言って「見てろ」と、ティムは部屋の窓を出て外へと消えた。しばらくして、くんっと犬がリードを引っ張るような手ごたえがあり、頬杖をつき胡坐をかいたティムがそのままの恰好で、すーっと引き寄せられるようにして俺にピタッとくっついた。
やめろっ!! 気色悪い!
思わず両手で押しのけたが、むろん相手は霊、その手は通り抜けるはずだった。

「……っえ? あれ、……うえええぇあ!?」

次の瞬間、力の限り叫んでいた。
なぜなら思いもよらぬことが起こったからだ。手が、俺の手が! 左手は確かに通り抜けている。だが右手が、右の手の平が、確かに男の頭を押しのけているのだ。
ましてや触っている感触さえある。

「さっきからなんだ? ルルゥが起きてしまうではないか」
「だって、あれっ、手がっ……触っ! ここにっ!」

俺は手をワキワキさせて、今起こったことをヤトに訴えようとしたが、なにしろ泡をくっていたので支離滅裂になってしまう。

「何を言ってるかわからんぞ」
「だから、俺のっ! 通り抜けるはずなのに、触っ……わぎゃっ!?」

右手をもう一方の手で指差し、ヤトに向かってしゃべっている最中に、事もあろうにティムが俺の手を握って来た。完全に握手状態だ。
相手が、にぎにぎと力を込めてくる微妙な力具合までわかった。

「……っ! ~~っっ!?」

もう声も出なかった。
訳もわからずこんな世界に放り出され、盗賊、魔物に襲われ、わけのわからない能力に振り回され、変な訳あり幽霊に憑かれ(?)、あまつさえしっかり握手までされてしまった。
いろいろ限界だったのだろう、俺は極限に疲れていたこともあり、情けないことにそのまま気を失ってしまった。
――もうやだ、異世界。

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く