小さなヒカリの物語

あがごん

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した。素早く体勢を立て直し、そして後は一直線。数メートル先に見える剣を目指す。と、突然黒い塊が飛んできた。私のすぐ横をかすめ、地面に当たり飛び散った。私の頭の中になかったオウムの動き。振り向きざまにもう一つ打ち出され、私は強引に体をひねって、それとの衝突を避けた。それが何かは分からない。けれど決してそれに触れてはいけないという直感した。
足首をひるがえし、前傾姿勢の走りから地面を親指で踏み切り、ダイビング。手を限界まで伸ばして剣を拾い上げた。構え直してすぐに、オウムの側面から分離した黒い塊が視界に盗み入った。
私は剣を盾にしてそれを防御する。
「っつ!」
剣に絡み付いて離れない。このままじゃ黒い塊に飲み込まれてしまう。
振り払おうと剣を横に薙いだ。
黒い塊は剣を縫うように這い越えて、私の手から肩までを飲み込んだ。
「うううっ、うっううぅぅ……」
何かが私の中に入ってくる。恐ろしく冷たい何かが体を浸食していく。
「いやだっ!」
振り払おうとしても、それはぴったりと体にへばりついて離れてくれない。ひんやりとしたものが私の深い部分まで根を下ろそうとする。そんなことさせない。させちゃいけない。けれど、
「いやだ、いやだっ!」
冷たい何かに辿り着かれた。私を守ってくれる壁はもうない。私の全てが見透かされる。心が侵されていく。黒いものが私の心を締め付ける。
「いやああーーーーーーやめてぇぇぇぇぇ!」
傷つけた。
私はこーちゃんを傷つけた。
傷つけた、傷つけた、傷つけた、傷つけた、傷つけた、傷つけた、傷つけた、傷つけた、傷つけた。
傷をつけてしまった。それはいったい誰のせい?
それは全部わたしのせい、わたしのせい、わたしのせい、わたしのせい、わたしのせい、わたしのせい。
私のせいでこーちゃんはけがをした。取り返しのつかない痕を残した。
私のせいでこーちゃんは。
埋まっていく。埋められていく。ありとあらゆるものを思考の隅に追いやって、ただ一つのものを心に残して。ごめんね、ごめんね。
これはいったい何ていう感情?
――――――こーちゃんともっともっと一緒にいたい。
弱い自分がそこにはいた。自分の決めたことに徹しきれない私。最初に見られてしまった以上、最低限の事情は知ってもらうべきだとした。嘘でごまかすよりはいいと思った。そこで誤算だったのはこーちゃんが手伝いたいと言ってきたことだ。初めは断ろうとした。でも結局押しに負けて、手伝いを承認して

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