小さなヒカリの物語

あがごん

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「くっ!」
咄嗟にオウムを左足で蹴って、攻撃をかわす。右肩から着地した後すぐに体を起こし、立ち上がる。いくら硬くても限度っていうものがある。操力はしっかり込めたはずなのに。
もう一度。
「我に与えよ我に授けよ乱れ切り裂け風神の風」
刃と化した無数の風がオウムめがけて乱れ飛ぶ。どこからでもいい。完全に修復される前に傷跡を広げてそこから一気に片をつける。一回かわした後、再び向かってきたオウムに合わせて地面を蹴った。剣に体重を乗せて、腕を鋭く振り抜く。
「えっ?」
そのことに気づいても振り下ろした剣の軌道は変えられない。硬質な音とともに弾き返されて、体はオウムに吹き飛ばされた。
今のは何? 私は認めない。そんなのあり得ない。あってはならないことだ。
次で事実を見極める。バックステップで距離をとり、意識を手のひらに向けて力を注ぐ。
「我に与えよ我に授けよ全てをちりと焼き尽くす力」
オウムに当たってじゅっという音がした。けれどそれは焼けたからじゃない。炎がもみ消えたというまさにそれ。表面さえも焦がしていない。
と、すんでのところで激突を避ける。今まで当たらないことはあっても、斬れなかったことはまずない。この前死にかけた時でも、最後の一振りが効いてオウムを倒せたのだ。朦朧としてたから、その一振りを思い出せずにいるけれど。
炎を切っ先にためて、ターンしてくるオウムめがけて振り放つ。命中はするも、蒸発するように炎は掻き消えた。まるで効果がない。と、突然オウムから細長いものが伸びて、足元のタイルを穿った。深くえぐれて地面に穴が空いた。もし当たっていればひとたまりもない。体のどこに当たってもそれだけで戦況は大きく変わってしまう。命の危機に即つながる。
「ハァアアアアアア!」
オウムに斬りかかる。全身を使って、中心にねじ込むように力を込める。けれど、切っ先から伝わる感触は虚しいくらいに変わらない。
「くっ」
またも弾かれた。今度は剣が手から離れ、屋上の一隅に転がり滑った。
――――――私はこのオウムを倒せない?
そんな思いが脳裏をよぎる。操力は確実に減っている。このまま活路を見出せなければ状況的にかなり厳しい。
私は剣の落ちた反対側に飛ばされ、金網に体を打ちつけた。最初と違い、少し痛みが生じた。操力を短時間で使いすぎたせいかもしれない。とりあえず、剣を取り戻さないと始まらない。突っ込む形で、剣の落ちている場所へひた走る。オウムと衝突する一歩手前で体を横に投げ出し、まずオウムをかわ

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