小さなヒカリの物語

あがごん

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意味が分からないくらい俺は疲れてんのかと自嘲。昨日寝るのも遅かったし、登校するときも走ったからなぁ。いろんなことが疲れを増長してくれている。だからなのだろうか、カチッ。スイッチが入る。
睡魔であるスイマーに視点が移動。その様子を観察する。あ、スイマーの足に海草がからみついた。あわててる。俺は頑張れって小さく応援する。早く何とかしないと溺れるぞ。他人事で傍観する。が、応援にも関わらずスイマーが沈んでいく。あいつはもう駄目だ。勝手に人の人生を達観してみる。あれ、頭が痛い。息が苦しい。周りを見渡す。
溺れてるのは俺だった。客観視している暇はなかった。体が沈む。
己のエゴによって生まれた罪が、深い闇の中に溶け込んで一体化する。だめだ、だめだ、だめだ。取り返しがつかなくなる前に俺は償わないと。人助けという大義名分の下、自分を救うために。
あの時。心に留めておけば、ずれることのなかった歯車。先には予定調和の未来が描かれたはずだった。少なくとも苦しむことはなかったはずだ。忘れちゃえばいいのに忘れられない。
あの日、あの時間、俺が余計なことをしなければ、あいつは会うことが出来たはずなんだ。
……ゆさゆさっ。
おっと、急にスイッチがオフになった。位置的に英人かな。
「現代文の授業が始まったぞ」
みたいだ。でも、眠い。抗えない。
一旦体を起こして、教科書を机の上に開く。縦にして死角をつくり、上手く隠れるよう体を寄せる。後ろの席でよかった。再び目を閉じると、意識は夢の世界に引き込まれていった




――――過去の話――――
少年は少女のお母さんから話を聞くとすぐに飛び出して、少女を探した。夕陽はまだまだ落ちる様子はなく、まわりの風景はオレンジ色に染まっていた。
まず少年が向かったのは、公園だった。最後に少女と別れた場所で、もしかしたら戻ってるかもしれないと、真っ先に足を運んだのだ。設置されている遊具はブランコと滑り台の二つでどちらも人の姿はなかった。
 次に心当たった場所は、少女と二人で作った秘密基地だった。空き地の林の裏側の、民家の塀との間にある狭い空間。よくそこで遊んでいて、少年は一回だけその場所で寝泊りしたこともあった。青いビニールシートをめくって中を確かめたが、そこにも少女はいなかった。公園か秘密基地のどちらかだろうと思っていたため、その可能性が消え、途端に少女を探すことに途方に暮れた。
そんなに遠くに行ってないはずなのに、と少年は焦りながら町をさまよい歩く。
はやくヒカリを見つけて、おばあちゃんのいる病院へ連れてかなきゃ。そう思ってずっと色々な場所を探し回ったが、時間だけが虚しく過ぎていくばかりだった。このまま見つからなかったら僕のせいだ。自分が告白だなんてことしなければ、ヒカリはあのまま家に帰っていたんだ。だんだん自己嫌悪の気



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