小さなヒカリの物語

あがごん

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りかかる。よく分からないが、何かヒカリには思うものがあるらしい。それが何か聞き出そうと思ったが、とても大事なことと言われたので止めることにした。自分にはそれを聞く資格があるかどうか疑問だったからだ。俺はまだヒカリのいる立場を完全に理解していない。理解したと思っていることさえも間違ってることはある。つまり、何もかも曖昧な状態でしかヒカリのことを知らないのだ。
「なあ、これから時間あるか?」
一旦箸を止めて、横に座っているヒカリと向き合う。
「ん? ひょっほはっへ」
もぐもぐもぐと口いっぱいに詰まっている食べ物をなんとか飲み込もうとしている。
「いや、ゆっくり食べていいぞ。急ぐことじゃないから。ああいいよちょっと待ってろ」
近くの自動販売機でお茶を買って、ヒカリに手渡す。ヒカリはそれを受け取って、もぐ、ごっきゅん。ふぅーとヒカリは満足そうに声をだす。あ、っと思い出したようにヒカリはこちらに向き直る。
「で、どうしたのこーちゃん?」
「なんていうか少しヒカリの世界を知りたいと思って」




昼食を終えて、俺らは夜に訓練の場所として使っている河川敷に来ていた。今日は休日ということもあって少年たちが二人でキャッチボールをしている。昼のこの場所はピクニックに来た家族連れや犬の散歩に来た人たちなどでもっと人が多いはずだったが、最近新装開店した隣町のデパートに人をとられているらしい。河川敷にとるもとらないもないのだが、まあそんな感じで、ここで今からやることに支障はないはずだ。
「で、やりたいことって何? こーちゃんえっちなことは駄目だからね?」
「はあああああ? 真昼間からそんなことするわけないだろ!」
「昼じゃなかったらするの?」
「ちがあああああああああああう。俺がヒカリにそんなことしようとするわけないだろうが!」
そこまで言って、自分で果たしてほんとにと少し考える。いや、うん、ないだろ、ないない。
「あはは、少しからかっただけなのに、こーちゃんまじめだね。面白い」
ころころと笑ってるヒカリ。ヒカリの笑いは別に悪い気はしない。
「オウムのいる空間に行ってみたい。それと、ヒカリが扉を開いた後俺がどこまでの距離なら異次元の空間を認識できるのか知りたい。ヒカリの戦ってる世界をもっと知りたいと思ったんだ」
「そういうことかあ。なーる。でも、長くは駄目だからね。いつ感情分子が実体をもつか分からないんだし」
そう言ってヒカリは俺と少し距離をとる。
「誰も見てないよね?」
「大丈夫。こんな話をしている間に子供たちはどっか行ったっぽい」



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