小さなヒカリの物語

あがごん

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そんな簡単に取り決められるものなのか? まぁでもこれで、俺がヒカリを手伝うことが現実味を帯びてきたわけだ。ヒカリ一人であんな怪物を対処するなんて、小さい頃を良く知っている俺としてはいささか不安だ。ヒカリの強さを信じてないわけじゃないけど。
「それじゃあ俺も頑張って体を鍛えないとな」
中学の時、弓道部の練習で体を動かしてはいたが、主にメンタル面を鍛えるのが多く、筋力はさほどない。何事も動じず正確に真ん中を射れるように、お互いの頭にリンゴをのせて射合ったこともある。よい子はマネしないでねと一応付け足しておく。
「……のね」
どうやって鍛えていこうかを考えていたので、声が聞き取れなかった。
「ん? 今なんか言ったか?」
「あのね。こーちゃんは別に無理しなくていいんだよ。これは私の問題だから。こーちゃんは私の仕事を理解してくれればそれで。オウムの退治は私たち討魔師に全て任せてくれればいいんだよ?」
「大丈夫だって心配すんな」
さっきまで弱気だったはずだが、そんな言葉がつい口を出た。
「昨日はいきなりでみっともない所見せちゃったけど今ならやれる。いつでもやれる」
「けど、こーちゃんの身に危険が及ぶかもしれないんだよ? それに私がどれだけ心配しているか分かってるの? 教えたのは私だけど、それはただ私のしていることを知って欲しいと思ったから。それだけなの。一緒に戦うとかこーちゃんが危険に晒されることを私は望まない」
ヒカリの言いたいことは分かる。俺は訓練も受けていないただの高校生で、何かしらの凄い能力も持たない一般ピーポーで、そんな奴が怪物退治に協力させてくれと言っても足手まといにしかならない。ヒカリはそんな言い方こそしないが、根本は同じなのだ。
けれど。
止められてもやろうと進み出るのは、己の利己的な部分もあるが、それ以前に人としてどうなのかということだ。なんであれ行為者自身に危険が及ぶことをしているのなら止めるべきだ。それが無理なら協力してやることだ。どちらも為さない奴はたぶん友達でも何でもない赤の他人だ。黙認などしてられない。
「するといったからには結果を出すさ。全て自己責任でするし、極力迷惑はかけないようにする」
「…………」
ヒカリは俺から目を反らし、顔をうつむかせた。押し黙って、何かを言おうともう一度俺の顔を見て、また顔を背けて。けれど最後はやや仕方なしといった表情で、
「あまり無茶なこと……しないでね……もうあんなのは嫌だから」
と、俺を心配する言葉をかけてくれた。昨日の『その仕事手伝うよ』発言が、軽い気持ちで言ったのではないことを少しは分かってくれただろうか。これでやっと理解度五十パーセントといったところか。残りの信用は実践の働きで得るしかない。そのためにはまず、



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