小さなヒカリの物語

あがごん

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「よいしょ、っと。べつにふつーだよ。ほら、こーちゃんもはやく!」
「えぇー? うーん」
「ほら、あぶなくないでしょ?」
「そー……だね。あれ……ねぇ、あのむらさきいろのはなんだろ?」
「えっ、どこ?」
「ほら、あそこだよ」
「……ほんとだ。なんだろ……よし、いってみようよ」
わたしはこーちゃんのてをひっぱってさらにちかづく。
「あぶないっ!」
「えっ?」
こーちゃんのてが、わたしを、どんっ、とつきとばした。
わたしはしりもちをついた。おしりがいたい。
「いたたたっ。もう、こーちゃん? いきなりつきとばしちゃ……え?」
……こーちゃん?
「どう……したの? ねぇ」
なにがおきたかわからなかった。あたまがぐるぐるになった。
「ねぇ、ねぇ、からだがあかいよ、こーちゃん、だいじょうぶ?ねぇ!」
そのとき、きゅうにあたまのほうがくらくなった。
みると、むらさきいろのものがそこにうかんでいた。わたしはきづいた。こーちゃんとおなじあかいのがついてることを。もしかして、こいつがこーちゃんを?
「うぅっ……」
「こ、こーちゃん? しっかりして……だめ。でないで。とまって!」
たくさんのあかいみずがこーちゃんからながれてくる。わたしのてがあかいろにそまっていく。
「おとーさーんー!」
めからなみだがぽろぽろとこぼれおちてきた。ないてしまったらおとーさんはほめてくれない。こーちゃんがうごかない。ゆすってもうごかない。わたしはどーすればいいの? おしえてよ、おとーさん。
「しまった、とびらがひらきっぱなしだとは!」
とおくでおとーさんのこえがした。
わたしはそのままきをうしなった。




「おはよー!」
元気な声が空気を伝って俺の鼓膜を震わせた。寝ぼけ眼で時計を見ると、六時五十九分。起きようと一度体を起こしたが、あと一分あるという安易な考えで二度寝の態勢に入る。



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