小さなヒカリの物語

あがごん

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俺はシャウトした。
今までのことが全て本当だったということへの驚きも十分にあったが、今はただ恥ずかしいという感情が群を抜いている。散々否定した挙句のことなのでものすごーくかっこ悪い。
何が「言いたいことは言えた気がする」だ。言ったことが的外れってのはもっと痛いだろうに。
あぁーもう恥ずかしい! 自信満々で言ったからなぁ。数分前の俺、もっと謙虚でいてくれよ。
「気にする必要ないよ。自然な反応だったと思う」
「…………そうか?」
顔を上げると少女がよしよしと頭を撫でてきた。優しさに触れたからなのか、頭を撫でられることでさらに羞恥心を刺激したのか、目が潤んできた。ごしごしと涙を拭き、気持ちを立て直す。
「話の続き……いいか?」
心の動揺を取り除き、少女に説明の続きをするように促した。疑問はまだ残っている。
「とりあえず、異空間の存在は理解できたでしょ?」
俺は首を縦に振って、聞く意思があることを少女に示す。
「じゃあ私が話すべきことはもうないな」
「……はっ?」
思いっきり聞く態勢に入っていたので、猫騙しをくらった力士の心境が分かった気がした。
「え? いやいや、聞きたいことはまだたくさんあるんだが」
「たとえば?」
「例えばって……そうだな。俺が君に触れられなかったこととか」
「あれは私が異空間にいたからだよ。さっき言ったじゃん」
少女は当然でしょとばかりに鼻をならす。
「他にももっとあるぞ……俺が見えた理由……そうだ、なんで俺がそんな、オウムや君のいる異空間なんか見えたんだ!? それって俺以外のやつにも見えたりしないのか?」
「普通の人は無理ね」
少女の言葉が引っかかった。普通は? その言い方だったら俺が普通じゃないとでも? 人は自分だけは特別だと思う一方で、普通人だと思う傾向がある。客観的に見て、自分は普通の部類だと思う。普通の定義はいまいちよく分からないが。
「なぁ、なぜ俺にそんなのが見えたんだよ……?」
語気を弱め、つぶやくように言う。これは俺の中での最大の疑問だ。なぜ? ホワイ?
「それは……言えない」
少女は俺の言葉に一瞬目を泳がせた。唇を噛んで言わないように口を閉じている。
「ど、どういうことだよ?」
言えない? ここまで教えてくれたのにこれだけ言えないってのは何でだ? 知らないじゃなくて?
「私が言える範囲はこれが限界ってことよ。あなたは今まで私が言ったことだけを知ってくれればいい。



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