小さなヒカリの物語

あがごん

14ページ目

少女は顔をしかめ、無言のままこちらを見つめている。
「で、さ、俺の目がおかしいだけなのかもしれんが、もし何か知っているなら教えてくれないか? あの物体はなんなんだ?」
「やっぱり、見えてるの……よね?」
少女の問いかけの真意が分からず、一瞬言葉に詰まる。何度も同じことを聞かれるのはあまりいい気持ちがしない。場合によっちゃ意味不明な聞き返しは失礼になるし。俺は少しむっとして、
「そりゃ見えるさ! どうしてそんなに何度も聞くんだよ!?」
「…………」
少女は何かを探るように目をきょろきょろと動かしている。……なんだこいつ?
「……まぁそんな確認は後でもいいんだ。それより俺の質問に答えてくれよ」
少女の目の動きがぴたっと止まった。俺の言葉が何か気に障ったのだろうか。
「あのー?」
少女の性格がまだ掴めていない。そのためおずおずとした態度になってしまう。
「うん、やっぱり操力は感じない、そっか、もうそんなに……なるほどね」
少女はそんな俺の配慮も無視して一人納得したように腕を組む。
っていうかなるほど? なるほどって何だ? 何を一人で勝手に分かってんだ? お願いだからちゃんと俺と向き合って説明してほしい。
「そうだ、見えるのは分かっただろ? なっ? 次は君が答える番だ。頼むから」
なんだか俺は苛立ってきていた。少女が問いかけに答えないから話が先に進まない。それでも言葉が刺々しくならない様に努める。
「もしそうだとしたら……」
おーい。こんな堂々とした無視あったもんだな。
「あっ……で、何だっけ!?」
おーい。早くも二度目のおーいだ。話がまったくかみ合ってない。電波ちゃんなのかこいつは。
「……いろいろ聞きたいことはあるけど、とりあえず、あの物体は何だったんだ?」
このことを聞かないで今夜安らかに眠ろうというのは無理だ。夢に出てきそう。
「オウムよ」
「……オウム?」
今度は素直に答えてくれた。なぜかちょっとほっとしたりする。
「オウムは人の心が生み出した異空間感情集合体。ほら、嫌なことがあっても数日後にはすっかり忘れてるっていう経験あるでしょ?」
「ん? まぁそんなことよくあるけど、それが何か関係でも……」
知らない単語が引っかかったが、とりあえず最後まで聞いてみる。
「あるわ。すっごく。それは忘れてるんじゃなくて、感情分子を体の外に放出しているだけなの」



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