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「避けろぉーーーー！」
咄嗟に声が出た。自分でも信じられないほど大きな声だった。少女にその言葉が聞こえたのか分からない。ただ剣を横に薙いだと同時に少女の手元からその剣が離れ、
「顕現」
いつの間にか少女の手に短剣が現れていた。
「はぁっ！」
振り下ろし、物体の中心に短剣が突き刺さった。そして耳を塞いでもこらえきれないほどの轟音が辺りに響き渡った。物体の切り口から発せられた深青色の光が、校舎の窓を染め上げ、やがて物体は目に見えないくらいの光となり、視界から完全に消滅した。
「ふぅぅぅぅー」
少女は大きく息を吐いた。俺もそれに倣い、息を吐き出す。
どうやら命の危機は免れた……のか？　悪夢を見た後のような茫然自失状態。ものすごく心臓に悪い。ほとんど動いてないのに、体が火照って首筋にびっしょり汗をかいていた。
『今日は一日寒い天気になります。外にお出になる方は準備をしてから出るといいでしょう』という天気予報を今朝、ばっちりこの目で見たのだが。
と、少女はおもむろにポケットからカードを取り出し、
「帰来」
白地のカードを頭上に掲げた。
少女の声とともに、校舎の壁に突き刺さっている大剣と少女の手にある短剣とが、まぶしい光を放ち、徐々にその姿を消していく。そして、光で包まれた刀身が消えきった時、それらはカードに絵柄となって現れた。
（一体どうなってんだ！？）
マジックショーを見ているようなそんな感覚。ありえないことが起こりすぎて、全ては夢でしたと言われれば簡単に納得できそうだ。少なくとも少女にさっきのことに驚いている様子はない。
むしろ戦った後のほうが平然としているように見える。もしかすると、この少女も人間でないのかもしれない。なんか場慣れしてるし、普通じゃない。そう思うと、恐怖に押しつぶされていた感情やクエスチョンマークがせき止められていた流水のごとく急激に押し寄せてきた。
俺はしりもちのつきすぎでこわばった両のケツをはたきながら立ち上がる。
「あのさっ」
聞きたいことが多すぎて何から言えばいいのか分からない。
とりあえず気を悪くさせないよう思ってることが顔に出ないようにして、
「からだ、大丈夫か？」
当たり障りのなさそうなところから話し始めてみた。
「す、凄かったな、剣さばき。なんかジュワーンって感じで」