小さなヒカリの物語

あがごん

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そうだ、そうに違いない。だってそんなのありえなさ過ぎる。自分に言い聞かせて納得する。
現に少女から桃のいい匂いがするんだ。
違うとこ見てもう一回見たら錯覚も治ってるはずだ。
「そうだ。そそっかしい俺の目が勘違いしてしまっ……て、ぇええええっ!」
自分の胸元から染み出でている液体が目に入った。そういえばさっきからひんやりするなと思っていた箇所だ。そこにおそるおそる鼻を近づける。……おばさんがつけるようなきつい匂いだった。原液が流れ出てるせいかもしれないが、少なくとも俺はこんなきっついのはつけない。それどころか香水そのものを俺はもたない。……ってことは母さんか。桃のいい匂いがすると思っていたが、それは自分の胸ポケットからこぼれでる香水のせいだった……ということ?
考えてみればそれしかない。触れない女の子から匂いがするわけがないのだ。かわいい女の子・・・・・・匂い……するわけない…………ごくっ(息をのむ音)……よな? なぁ、そうだろ? ……勘違いしないでくれ。これはあくまでいやいやながら仕方なしにだ。原因を解明すべく地球に住む全人類の科学の発展のために鼻を近づけ、匂いを…………
「ってバカか俺は! どんな変態だよ、気絶してる女の子の匂いをかぐって!」
あまりの事態に頭の中が混乱してしまっている。ちょっと待て、俺。一回落ち着こう。三回ほど深呼吸。えーと、学校指定の制服と黄色のタイから自分と同じ新入生だと分かる。髪と眉が金色をしているから外国人? 少し安直過ぎるか。人間、女子、透けている……最後だけおかしい。
幽霊という線を考えたが、足はあるし制服着てるし、そんなおかしな幽霊は今まで聞いたことがない。この学校の地縛霊かなと一瞬思ったが、
「……それにしてもかわいいな」
考えても結論が出ない脳よりも視覚のほうに意識は移ってしまう。
目立つとこは出てるし、足とかすらーっとしてるし、髪なんてさらさらだし。
見た限りでは人間的特徴になんらおかしな点はない。ただし、それはめちゃくちゃ容姿が整っているという一点を除いては、だ。まじまじと少女を見つめていたら、どくんどくん。
……やばいな。変な気分になってきた。走ってもないのに動悸がする。ラブストーリーが始まるのは突然だと誰かが歌ってた気がするし、人生何が起きてもぜんぜん不思議じゃないはずだ。
ぱちっ。
俺があれこれ思案していると突然、動く気配さえなかった少女の目が開いた。
「うわぁっ!!」
驚き、どしんと尻を地面にうちつけた。少女としっかり目が合ってしまい、変な声を上げてしまった。俺は慌てて距離をとる。
「……え?」
やばいやばいやばい。少女の口がえ?からきゃー!に移行しようとしてる。俺の心のアラームが最大音量で伝えようとしていることは、ただ一つ、『やばい』だ。



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