小さなヒカリの物語

あがごん

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陽のあたる坂道を!
桜木ハムスター
「人間は忘れる生き物だ」
昔、どこかの誰かがそう言っていた。
それを聞いて、なるほど、と思わなかったこともない。
いや、その時はなるほどと思ったのかもしれない。
けれど、人間を一括りにしようとしても、それぞれの考え方には大きな差が生じる。
忘れやすかったり、忘れられなかったり。
全ての事象を忘れる人や、はたまた生まれてから今までのことを全て記憶している人はいない。
もしいたとしたら、それは文字通り超人だ。人間の定義には当てはまらない人間。
自分の知る限り、世界の大体の人は最初に言った定義に当てはまる。
そして、自分もそういう人間の一人だ。
良いことは覚えていようとするし、嫌なことだったら忘れようと努力する。
でも、忘れたい事実を何度も心に刷り込まれた場合。
その場合、どんなに時を経ても記憶を完全に忘却することは難しい。
その記憶が幼い頃に作られたものならば尚更に。
あの事件から長い時間が経ったけれど、罪の意識は消えずに己の心を蝕み続ける。
少なくともこの物語が終わるまで。それはこの運命ものがたりを変えるまで。


一度冬眠から覚めたカエルがまだ早すぎると、地面をせっせと掘り始めてもおかしくないくらいの朝の冷え込みようといったら、それはもうほんとに。
朝目が覚めて、最初に視界に入った部屋の窓ガラスは結露していた。季節は春というのにだ。
起きて、窓に張りつく水滴を手で払いのけながら、眠た目でガラス越しに外を見た。
さすがに雪は降っていなかった。寒さは以前より和らいだが、それでも春らしからぬ気温の日がここのところ続いている。地球温暖化という言葉が遠い昔のことのように思える。
「んう、くぅううう~」
気持ちよく伸びをしてから、肺いっぱい朝の冷たい空気を吸い込んだ。体を左右にねじると、骨がぽきぽきと心地よい音をたてた。カレンダーの日付を確認する。赤丸が付いてるところと今日の日付を照らし合わせた。見事合致。
それを見て込みあがってくる喜びの感情。必然、それは朝の眠気を一瞬で吹き飛ばした。
「ついに、ついに今日という日がやってきたぞー!」
やばいほど爽やかな気分でつい声が大きくなった。犬の散歩で近くを通ったらしい近所のおばさんにばっちり見られて、苦笑いされた。まさか目が合うとは思ってなかったから少し恥ずかしい。。
「朝っぱらからなんて大きな声出してんの! 少しは近所迷惑を考えなさい! ……まぁいいわ。それ



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