異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収集つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~

ひだまりのねこ

出発前の打ち合わせ♡




「カケルお義兄さま!! なんで私だけのけ者にしたんですか?」

 
 ぷりぷり怒っているのは、リリスの妹でアトランティア王国第2王女、リリア=アトランティア。

 見た目は小学生だが、カケルと同じ17歳。この世界では立派な成人であるからして、際どいヒモアーマーを身に着けていてもなんの問題も無い。

 ちなみにリリアが怒っているのは、年末年始の年越しの儀の件だ。

 本来であれば、聖女の資格を有するリリアも儀式に参加できるはずだったのに、声がかからなかったことに文句を言っているのである。


「うっ……いや、それは俺じゃなくて、神殿本庁のせいだろ? 俺だって、てっきりリリアもいるのかと思って楽しみにしていたんだからな?」

「ふえっ!? た、楽しみにって……お、お義兄さまのエッチ!!」

 顔を真っ赤にしながらも楽しみにしていたと言われて嬉しそうなリリア。 




「ああ、その件でしたら、リリアさまの公務のスケジュールの都合が合わないので、私が神殿本庁へ断りの連絡を入れておきました」

 無表情で報告するのは、カケルの少子化対策特命担当大臣秘書官ソルテ。サラサラの銀髪が美しいめちゃくちゃ仕事が出来る有能なサキュバスである。

 そのソルテであるが、実は公爵家令嬢であり、リリスが不在の期間、リリアのお姉さん的なポジションであったこともあり、王女に対する遠慮はまったく感じられない。

「くっ……ソルテ姉……貴女のせいだったのね!!」

「……いいえ、私のせいではありません。公務をサボってきたツケが回ってきただけのこと。これを機に、ちゃんと仕事してくださいね? リリアさま」

 リリアはぐぬぬ……となりながらも、すべて事実なので何も言い返せない。


「ま、まあいいじゃないか。来年こそは一緒に過ごそうな、リリア」

「はい!! カケルお義兄さま!!」

「……リリアさま、貴女もカケルさまの婚約者なのですから、お義兄さまというのは……」

 ソルテが眉間にしわを寄せる。仕事モードの時のソルテは厳しい。

「い、いや、ソルテ、俺はむしろ嬉しいというか、有り難いから、ぜひそのままで……」

「……カケルさまはお義兄さまと呼ばれて興奮する変態でいらっしゃいましたね。わかりました。許可しましょう」

 ソルテが綺麗な顔で酷いことを言う。仕事モードの時のソルテは実に厳しい。


「ところで、一体何の用だったんだ? 急に来てほしいなんて、今日は公務の日じゃないよな?」

「はい、実はですね、ここアトランティア以外にも、サキュバスの国が存在するらしいことが確認されました」

「……マジか? それが本当なら朗報じゃないか!!」


 超少子化が進むサキュバス族。カケルの力で短期的にはなんとか消滅の危機は乗り越えられそうではあったものの、中・長期的には、やはり血縁が遠い方が健全だ。

 このアトランティアでは、もはや血が濃くなりすぎている。


「はい、先日行き倒れていて保護されたサキュバスがいたということで、我が国に照会があったのですが、調べたところ該当するものがおらず、言葉もほとんど片言で通じないということだったのです」

「なるほど、そのサキュバスの住んでいた国があるということだな?」

「ええ、どうやらその男の話す言葉は古いアトランティアの言葉で、王家のなまりがあるのです。かなり昔に分家した集団が築いた国だと思われます」

 
 その異国から流れ着いた男の話によれば、サキュバスの国は遠い海の彼方にある大陸に存在しているらしい。その国の名は『インキュア帝国』

 謎の風土病により、女性のサキュバスがほとんど死に絶え、存続の危機を迎えているのだという。


「……話はわかった。さっそくインキュア帝国に行って国交樹立してくる。ついでに病気も調べて、ゲートを設置してくればいいかな?」

「さすがカケルさまです。私も同行させていただきますのでご安心ください。ふふふ」

 無表情ではあるが、ソルテの顔は赤い。

「私も行きます!!」

 元気よくリリアも手を挙げるが……

「駄目です。インキュア帝国には正体不明の疫病が蔓延しています。リリアさまの身に万一のことがあってはなりませんから」

 あっさりソルテに却下されてしまう。 

「するいわ!! ソルテ姉だって女性じゃない!!」

 リリアもただでは引き下がらない。

「……私は専属秘書官ですから、これは職務です。それに……リリアさまは仕事が山積みではありませんか?」

 山のように積み上がった書類の山を指さすソルテ。

「う……うわああああん、ソルテ姉の意地悪~!!」

 泣きながら走り去るリリアを黙って目で追うカケル。

 手伝ってあげたいところだが、甘やかすことは本人にとっても良くないことがわかっているので、心の中でそっとエールを送るしかない。 


「さあカケルさま、執務室へ参りましょうか? 出発前の打ち合わせをしましょう」

 すっと腕を組んでくるソルテ。

 お堅い秘書官の表情は崩さないものの、熱く濡れた瞳と唇が妖艶な空気を纏っていた。

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