異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収集つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~
ハーピィの湯
「なあセレスティーナ」
手を止めて、隣の机で目を血走らせている美しき姫騎士に声をかける。
増え続ける人口、それに伴い増え続ける業務。帝都となったセレスティーナの執務室はさながら戦場だ。
早く優秀な文官を増やさないといけない。
「むっ、もうこんな時間か……どうしたんだ旦那様?」
1秒でも惜しいと書類に目を落としながら返事をするセレスティーナは美しい。何をしていても絵になるよな。
「仕事も一段落したし、そろそろ休憩しないか?」
「きゅ、きゅきゅ休憩っ!? ひ、ひひひ昼間から何を言っているんだっ!!」
真っ赤になってあわあわしているが、俺、変なこと言いました?
「し、知っているんだぞ、異世界では、休憩といえば、男女のほにゃららを意味するんだということを!!」
……あの、それ誤解だと思うよ? いや……厳密には間違いとも言い切れないのが厄介だが。
しかも、俺自身、休憩といいつつ、そういう流れになったことが思い当たり過ぎて否定できないのもまた。
「いや、そういうんじゃなくて、気分転換も兼ねて、街へ視察に行かないか?」
「……なんだ、そ、それならそう言ってくれれば良いのに……ぶつぶつ……」
……本当にぶつぶつ言う人っているんだな。なんかガッカリさせたみたいですまん。
「旦那様、だったら、ハーピィの湯に行ってみたいぞ」
無邪気に笑うセレスティーナのリクエスト。
ハーピィの湯か……俺が住人のために作った公衆温泉施設だが、あそこは混浴なんだよな。
正直、セレスティーナを他の男に見られたくない。たとえ浴衣を着ているとしてもだ。
とはいえ、可愛いセレスティーナのおねだりだ、何とか叶えてやりたいのもまた事実。
まあ結界と認識阻害のコンボでそこは何とでもなるか……。
だが、問題はそこじゃない。
『うわあっ!? 王さまが来たっ!? 大変だっ!! 皆に知らせないと!!』
受付にいたハーピィ、アオリが鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をして一瞬固まったかと思うと、すごい勢いで仲間を呼び始めた。
――――アオリは種族属性スキル『仲間を呼ぶ』を使った。
……やめろアオリ……これ以上状況を煽るんじゃない。アオリだけに……。
冗談を言っている場合じゃなかった。すでに数十人のハーピィたちに囲まれてしまった。
くっ……これでは無駄に注目を集めてしまう。今更だが。
「みんなお疲れ様、ハーピィの湯、大繁盛しているみたいだな」
自慢げで嬉しそうなハーピィたちの笑顔が眩しい。
この世界では、一部の貴族や豪商などの特権階級でないと入浴施設を個人で所有することは難しい。
ここセレスティーナのように公衆温泉がある地域もあるが、極めて稀なのだ。
無料ということもあって、ハーピィの湯は、日中でも依頼から戻った冒険者たちや休憩時間中の労働者、身体を癒しに来る怪我人や老人たちで常に賑わっている。
ましてや、見目麗しいハーピィたちが笑顔で出迎えてくれるのだ。男なら通いたくなるのも理解できるというもの。
雇用対策もあって、オープン当初とは違って、少しずつハーピィの割合を減らしてはいるものの、まだ従業員の半数は俺の召喚獣であるハーピィが担っている。
タイトル詐欺じゃないが、看板に偽りありと言われてしまうので、完全にゼロにするわけにもいかないのだが。
『王さま、私たち一生懸命頑張っているのですから、ご褒美ください』
利用客の中には、荒くれ者もいれば、下品なものもいる。酒を飲んで気が大きくなっているものも多いだろう。
もちろん圧倒的な力を持つ彼女たちを害することなど出来ないのだが、だからといって市民に対して簡単に力を行使するわけにはいかない。ストレスや心労は相当なものだろうと想像出来てしまう。
「旦那様、配下の疲れを癒すのも主人の務めではないのか」
何も言わなくてもセレスティーナはわかっていてくれる。それがとても嬉しく、心地が良い。
「よし、今日は俺が皆の背中を流してやるからな!!」
その言葉に真っ赤になって固まるセレスティーナ、ハーピィたち、他の従業員や利用客。
……え? 俺、何か変なこと言いました?
「し、知っているんだぞ、異世界では、背中を流すといえば、男女のほにゃららを意味するんだということを!!」
……あの、それも誤解だと思うよ? いや……厳密には間違いとも言い切れないのが厄介だが。
しかも、俺自身、そういう流れになったことが思い当たり過ぎて以下同文。
『なあ……シュタルク、何でこのオークエンペラーであるこのシュヴァインさまが、風呂屋の受付をしなくちゃなんねえんだよ?』
ハーピィの代わりに呼び出された『氷の翼』を始めとしたオークたちは不満たらたら。
『忙しいんだから口より手を動かしてよ、ただでさえ手が足りないんだから!!』
呆れながらも慣れた口調で受け流すシュタルク。
『……ちっ、仕方ねえな。それよりキタカゼはどこ行った?』
『……主と温泉に決まってるだろ?』
ムッとしたように返事をする赤髪眼帯のイケメン、ハルク。
『そうだったな……くそっ、仕事でもするか』
『そうそう、終わったらボクたちと一緒に温泉入れるんだし』
小動物系中性イケメン、ハルトが同意する。
『……俺はショタじゃなくて、美女と入りたいんだがな!!』
ハーピィの湯は365日、24時間営業。
超絶美少女のハーピィ、もしくはイケメンオークたちが貴方のご来場をお待ちしております。
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