異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収集つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~

ひだまりのねこ

唐揚げ屋さんになりたいのです♡


『主、何をしているのです?』

 声をかけてきたのは、原初の魔獣で天空の守護者ガルーダのルーラだ。

 三姉妹の末妹で、一番メリハリがはっきりしているのが特徴だ。

 グラマラスさではベヒモスのベステラに軍配があがるものの、その華奢な肢体と相まってインパクトがすごい。俺のまな板以外耐性を易々と突破してくる破壊力を持っている。


「ああ、ルーラか。実は俺の世界で人気の食べ物だった『唐揚げ』を作ろうと思ってな。似たようなものはあるんだけど、俺の好きだった味を再現したいんだ」

 母さんの作ってくれた唐揚げ旨いんだよな……。


『あら嬉しい。今夜作りましょうか?』

 突然空から語りかけてきたのは、この世界の創造神イリゼさまの上司である女神イノリさま。

 か、かか母さん……いや、イノリさま、さすがに申し訳ないんじゃ……?

『馬鹿ね……親子なんだから遠慮しないの。じゃあ今夜そっちに行くからね~♪』

 元の世界での母さんは、この世界では副統括神というとんでもなく偉い女神さまだ。唐揚げなんて作らせて良いのだろうか? あ、せっかくだったら、ナスの肉詰めもお願いすればよかった……!?


『ふふっ、了解』

 あ、まだ聞いてたんだね。やった!! 今夜は久しぶりの母さんの料理が食べられる!!
 

『……副統括神さまに手料理を作らせるとは、さすが主なのです』

 ガクガクブルブル震えているルーラ。ごめん、話の途中だったよな。


「そうそう、その唐揚げをいつでも食べられるようにしたいんだけど、この世界に出回っている鶏肉って、唐揚げにすると微妙に鶏と違うんだよ……」

『ふーん、その『唐揚げ』っていうのは鳥の肉なんです?』

「良かったら食べてみるか?」

 試作品として作った揚げたての唐揚げを手渡す。
  

『な、なななな何て美味しいのです? もっと食べたいのです!!』

 気に入ったようなので全部ルーラに差し出すと、あっという間に完食してしまった。ルーラはガルーダという鳥型の魔獣だけど特に気にしていない様子。


『これでも未完成なのです? サクサクとした衣とあふれる肉汁がたまらないのです~』

 ふふふ、衣には米粉を混ぜているからな。レモーヌ果汁に漬けこんだ鶏肉に衣をまぶしたあと、冷蔵庫で一晩寝かすのがポイントだ。

 ちなみにこの世界のレモーヌは、ほぼほぼレモンだ。問題なく代用できた。

 
「うーん、まあ十分美味しいんだけど、市場で手に入る範囲だとこれが限界だな」

『ふふふ~、主、私が誰か忘れたのです? 任せるのです』

 涎を垂らしながら歌い始めるルーラ。その幻想的な美しさと歌の素晴らしさに呼吸も忘れて聞き惚れてしまう。


『これでよしなのです』

「……一体なにをしたんだ、ルーラ?」

『唐揚げを呼んだのです』

 ……唐揚げを……呼んだ……だと?


――――バッサバッサ、バタバタバタ、ブワッブワッ。

 辺り一面が薄暗くなり、空が飛行型の魔物で埋め尽くされる。魔物だけでなく、各種普通の鳥も含まれているようだ。

 大空を司る原初の魔獣ガルーダは、あらゆる飛行型生物の母であり支配者なのだとあらためて再認識する。


『……お呼びでしょうか? 女王さま』

 平伏する魔物と鳥たち。

『よく来たのです。お前たち、順番に唐揚げになるのです』

 唐揚げという聞きなれない単語に困惑する一同。

『よくわかりませんが、我ら一同ご命令と有らば、喜んで唐揚げとなりましょう』

 くっ……なまじ言葉が分かると辛いんですけど……!?

『うん、よく言ったのです。さあ主、ちゃっちゃと試食するのですよ』

 マジかよ……彼らの真剣なまなざし……出来ない……俺には出来ないよ、ルーラ。




『はふはふ……美味しいな主。それで、見つかったのか?』

「ああ、チキンウイングの肉が鶏そっくりだった。ありがとなルーラ」

 チキンウイングは見た目羽が無い飛行型の魔物だ。羽が無いのにどうやって飛んでいるのかわからないが、おそらく魔力かスキルを使っているのだろう。

『チキンウイング? あいつらそんなに美味かったのです? じゅるり……』

 チキンウイングさん……逃げて~!!

『心配するなです主』

 そういって笑うルーラが取り出したのは一枚の羽。自分自身の羽をどうするつもりなんだろう?

『クリエイト!!』

 羽から零れ落ちるように大量のチキンウイングの群れが生みだされてゆく。これはすごい……。

『こいつらを元手に増やしていけばいつでも食べられるのです』
 
 なるほど、チキンウイング養鶏場ということか。


「よし、安定的に肉が手に入るなら唐揚げ屋さんを始めてみるか……」

『主、私にその唐揚げ屋さんとやらを任せてほしい』

 ルーラの瞳がキラッキラに輝いている。やる気があるのは素晴らしいな。
 
「わかった。唐揚げ屋さんはルーラに任せるよ」

 食べるのが目的だとは思うけれど、ルーラがいれば元手はタダだし。

『本当? さすが主、じゃあ次は私を料理するのです♡』

 る、ルーラさん? ははは、まいったな。


 衣にはメイド服を使用。レモーヌ果汁風呂に入ったルーラを、寝室で一晩寝かさずに美味しくいただきましたよ。


 そして、その日の夜は、待ちに待ったメインディッシュ!! 母さんの作ったチキンウイングの唐揚げとナッスの肉詰めだ。ちなみにナッスはこの世界の野菜で、ほぼほぼナス。


『さあ、皆さま召し上がれ~。たくさんあるから好きなだけ食べてね♡』

『……なんでイリゼまでいる?』
『みこちん何言ってるのよ、イノリさまの手料理が食べられるなら何だってやるわよ?』
『……キリハは……まあいつものことか』
『そうですよ、ミコト先輩、私イノリさまのナスの肉詰め大好きなんですよ~!!』

『まあ、嬉しいわ!! キリハちゃん、たくさん食べてね』

「義母上、後で私にも作り方を教えてください!!」

『あら~、もちろんよセレスティーナ』

 盛り上がる神々や嫁たちとは対照的に、


「「「「「……畏れ多くて味がわからない……」」」」」
 
 神々しい神気に当てられて胃が痛いその他メンバーであった。

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