異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収集つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~

ひだまりのねこ

もうひとりの英雄


『王さま、ポルトハーフェンでクラーケンが暴走中です。イソネさんが単身止めに向かいましたが、どうしますか?』

 突然、キタカゼから念話が入る。

 邪神に対抗するためのスキルを持った重要人物、イソネ君に万一のことがないように、逐一報告してもらっていたのだが……。

『わかった。俺が直接行こう。そろそろ挨拶しに行こうと思っていたんだ。丁度いい』

『!? 王さま自らいらっしゃるのですか?』

 嬉しさを隠し切れない声を上げるキタカゼ。

『ああ、苦労かけたな。悪いけど、キタカゼたちは住民の保護を頼む』

『お任せください。すでにオークどもが陰ながら動いています』

 シュヴァインたちがいるなら安心だな。

『キタカゼ……』
『はい……?』
『お前にも早く逢いたいよ』
 
『…………』

 いかん、返事がない。まるで屍のようだ。

 キタカゼの様子は気になるが、とりあえず急いで向かおう。

「ヒルデガルド、クロエ、行けるか?」

『もちろんですカケルさま』
「いつでも行けます、御主兄様」

「じゃあ、みんな、ちょっとコーナン王国へ行ってくる」
「「「「「「いってらっしゃい!!」」」」」

 クロエとヒルデガルドを連れて、イソネ君がいるポルトハーフェンへ転移する。


『王さまああああ!!』

 転移するなり子犬のように抱き着いてくるキタカゼ。どうやらフリーズから戻ってきたようだ。

 だが、ヒルデガルドとクロエの鉄壁のガードに阻まれてしまう。

『な、何をするのです、クロエさま、ヒルデガルドさま、お願いです、通してください!!』

 泣き叫ぶキタカゼだが、二人のメイドに泣き落としは通用しない。

『甘えないでくださいキタカゼ。今、そんな状況ですか?』
「そうですよ。御主兄様は時間がないのです」

『た、確かにそうでした。申し訳ありません……ふえっ!?』

 落ち込むキタカゼの頭を撫でる。

「おいで、キタカゼ。俺には時空魔法があるんだ。時間ぐらいでお前との触れ合いを諦めたりなんかしないよ」

『う、ううう……うわああん、王さまああああ!!』

 泣きじゃくるキタカゼを抱きしめる。なんか幼児退行してないか? ピコピコ動く獣耳と尻尾が幻視できる。ハーピィだけど。普段のクールな姿とのギャップが可愛いよな。

『カケルさま、ということは、私も諦めなくてよろしいのですね?』
「御主兄様との甘い時間をクロエは諦めたくないです……」

 ふふっ、わかっているさ。


―――分裂!!―――


 夜景が美しい夜のポルトハーフェンを眺めながら、甘い時間を満喫する。

 ふう……月夜に浮かぶクラーケンか……中々シュールだな。

 イソネ君には申し訳ないけれど、こちらも手を抜くわけにはいかないからな。そちらの時間で、あと一秒後ぐらいにはいくから許してくれよ?


「どうだヒルデガルド、状況は?」

 せっかくなので、今のうちに現状を把握しておこう。

『はい、まずクラーケンですが、例の組織幹部の生き残り、デメテルという女が、隷属の短剣という魔道具で操っています。イソネさまは、彼女を倒してもクラーケンが止まらないと判断して、チェンジによってクラーケンと……丁度入れ替わったところですね……』

 ヒルデガルドが苦笑いしている。

 ということは、さっきまで俺たち見ていたクラーケンはイソネ君だったのかよ!? 思った以上にシュールだったな。

 危ない危ない……うっかり遠距離攻撃とかしていたら、イソネ君殺しちゃうところだった。
 

「それで、イソネ君はどうするつもりなんだ?」

『自らを瀕死の状態まで弱らせてから、デメテルとチェンジしようとしているみたいですね……』

「キタカゼ……いつもイソネ君はそんな戦い方をしているのか?」
 
『そうですね。彼自身は決して圧倒的な強さを持っているわけではありませんからね。いつも自分を犠牲にして勝利してきたのだと思います』

 格好良いな……チートで無双している俺とは違う意味で、彼も本物の英雄なんだな。


『王さまの方が1億倍格好良いです!!』

 キタカゼ……嬉しいんだが、そこまで差をつけたらイソネ君が可哀想だろ!?

『カケルさまとイソネさまは、見ている地平が違います。どうか比較されませんように』

 ありがとな、ヒルデガルド。そう言ってもらえると嬉しいよ。

「御主兄様の方が断然良い匂いですから!!! イソネ君はイカ臭いです……」

 ま、まあ、ほら、今はクラーケンだから!! その言い方止めてあげて!?

  
「でも、丁度良かった。実はこの状況、願ったり叶ったりなんだよな」

『……なるほど、そういうことですか』

 まあ、ヒルデガルドには言うまでもない。

「ああ、そういうことだ」

「? どういうことですか、御主兄様?」

「イソネくんには女になってもらいたいってことだ」
『お、王さま!? まさか……イソネさんをお嫁さんにするつもりなんですか?」

「ち、違ああああう! そんなわけないだろ。対邪神戦で必要なことなんだよ」


『カケルさま……それはわかりましたので、さあ、続きをしましょう』 
   
 妖艶に誘ってくる出来るメイド長ヒルデガルド。うむ、断る道理もないな。メイドと秘書の二役をやってもらっているんだ、部下を労わることも大事な使命だ。

「御主兄様……もっとモフってください。私のすべてを……」

 瞳を潤ませ、耳と尻尾を激しく動かすクロエ。うむ、断る道理もないな。モフといえばクロエ。クロエと言えばモフ。真理には逆らえないものだな。

『王さま……キタカゼは淋しかったのです。寒くて死んでしまいます』

 凍り付いた心すら溶かしてしまいそうな熱い視線を送るキタカゼ。うむ、断る道理もないな。長く辛い任務に報いなければ。寒くて死ぬとかキタカゼに関しては冗談にしか聞こえないがスルーだ。

 え? さっきまでのは何だったのかって?

 良いんだよ。彼女たちが満足するまで応える。それが俺の英雄としても生き方だからな。延長入りました~! 喜んで~ってな?

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