異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収集つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~
ウサギは淋しいと死んでしまうって本当ですか?
屋敷に戻って、ようやく一息つくことができたが、あまりゆっくりとはしていられない。やるべきことはたくさんある。
いつ何時邪神が現れるかわからない以上、できることはすべてやっておかなくてはならない。
「カケルさま、お疲れ様です。お茶をどうぞ」
ウサギの獣人で、メイド長のアイシャが特選茶葉でお茶をいれてくれる。
アイシャの入れてくれるお茶は間違いなく世界一だ。さすがは天才メイド。俺の一つ年下なのにメイド長とか意味がわからない凄さと貫禄がある。
「忙しいのにごめんなアイシャ」
今夜は大勢の宿泊客がいるので、メイドたちは大忙しなのだ。他の屋敷のメイドたちも総動員して、召喚獣たちにも手伝わせている。
そしてそのメイドたちの指揮を執っているのが、メイド長であるアイシャ。そんな彼女を独り占めするのはやはり申し訳ない気分になってしまう。
「いいえ、私はカケルさま専属のメイドです。少なくともこの屋敷内では、このお役目を誰にも譲るわけにはまいりませんから」
アイシャは、その赤い瞳を揺らしながら、熱っぽく息を吐く。
「それとも……カケルさまは、やはりヒルデガルドかクロエの方が良かったですか? いつもご一緒のようですし?」
たしかに二人を連れてゆくことは多い一方で、アイシャを連れてゆくことは稀だ。もちろんそれは能力による適材適所に過ぎないんだが、不公平感はいなめない。一緒にいる時間が明らかに少ないのは事実だから。
それによく考えたら、アイシャと二人きりでデートしたこともなかったな。まあ、それどころじゃなかったのも事実だし、彼女だけでなくほとんどの婚約者たちとも二人きりデートは実現していない。
邪神のことが解決したら、もう少し彼女たちとの時間を作らないとな。
「そんなわけないだろ。俺はここに戻ってくるのが一番楽しみなんだ。アイシャ……お前のいるこの屋敷が一番落ち着くんだよ」
「か、カケルさま……ふえっ!?」
アイシャを抱き寄せて、膝の上に乗せるとグレーの柔らかな髪をそっと撫でつつ、長いウサ耳をモフる。
「あ、あの……お茶が冷めてしまいます」
真っ赤な顔で慌てるアイシャの口を唇でふさぐ。
『大丈夫。この部屋の中では、冷めないってわかってるだろ?』
キスしながら念話でアイシャに話しかける。
『ん……もう、カケルさまの……いじわる』
すっかり火がついてしまったアイシャが首に手をまわし積極的に抱き着いてくる。
『アイシャ……異空間で修行するか? 留守中が心配だからな』
『…………』
無言で頷くアイシャ。
……いやあ、アイシャがあんなに情熱的だなんて知らなかったよ。やはり、ウサギの獣人だけあって、淋しかったんだろうか? 実に充実した修行ができたよ。んふふ。
「カケルさま、はい、あーん」
アイシャはすっかりご機嫌になって、甲斐甲斐しく俺の口にお茶菓子を運んでくれる。
満面の笑みと幸せオーラにあてられて、俺も自然と笑顔になってしまう。それはとても嬉しいことなのだが……やっぱり全部口移しはやり過ぎじゃないのかな? ねえアイシャさん。
さらには、俺の手を取り、一番さわり心地の良い場所を同時にモフらせるという気遣いが嬉しい。
まったく……だんだんと変な気分になってきてしまうじゃないか。いや待てよ、それが狙いか……。
「アイシャ……」
「はい……カケルさま?」
「ごめん、また修行したくなった」
「ふふっ、いいのですよ。何度でも修行に耐えて、もっともっと強くなりたいのです。カケルさまの足手まといにはなりたくはないのです……」
アイシャがウサ耳で俺の頭を引き寄せキスをしてくる。
おお、ウサ耳って、そんな使い方ができるのか!? すげえな。
ウサ耳のビロードのような心地良い肌触りと、柔らかい唇の感触にクラクラしてくる。
結局、アイシャとめちゃくちゃ修行した。
「カケルさま、今の私なら、ベルトナーにも勝てそうですよ!」
可愛く力こぶを作ってみせるアイシャ。残念ながら力こぶは出来ていないが、可愛いは最強だ。
いや……アイシャ、ベルトナーどころか、今のお前なら、竜種でもワンパンで倒せると思うぞ?
特にウサギの獣人は、足腰が強い。アイシャの蹴りはとんでもない威力を放つことだろう。
「では名残惜しいのですが、私は一旦仕事に戻りますね」
アイシャが名残惜しそうに唇を離す。
俺も名残惜しいが、いつまでもアイシャをここに縛り付けるわけにもいかないからな。
「アイシャ、悪いんだけど、アリーセに部屋に来るように伝えてくれないか?」
「……別れ際に他の女性の話をするなんて、意地悪です」
くすくす笑いながら、すぐに呼んできますと部屋を出てゆくアイシャ。
俺もそう思ったんだが、これは必要なことだから許してほしい……なんて言い訳しながら、手に残る彼女の極上な毛並みの余韻にしばし浸る。
「大海原さん、入りますね」
かわいらしい声とともに部屋に入ってきたのは、魔人帝国皇女アリーセ。
ただし、俺の前では、同級生のありすに戻るけどな。俺をいまだに苗字で呼んでくれる貴重な存在だ。
「呼びつけたりしてごめんな、ありす。いつ邪神が現れるかわからないからさ」
ありすの持つユニークスキル『キャンセル』は、邪神の吸収に対抗する貴重な手段だ。イリゼ様から、必ずそばに置くように言われている。万一俺やイソネ君が吸収されてしまった場合、ありすのスキルだけが頼りとなるからだ。
「……ふ、ふーん、そうなんですね」
ちょっとだけがっかりしたような表情に変わるありす。
「馬鹿だな……確かに邪神のことは重要だけど、ありすと二人きりになりたかったのは本当だぞ?」
「ほ、本当ですか……ふえっ!?」
照れるありすを抱き寄せる。
細いな……少しでも力を入れたら折れそうだ。こんなありすを危険な邪神の前に連れて行かなければならないのは正直辛い。
だからせめて、俺にできることは、ありすを守るために、彼女を強化することだけだ。
決意を胸にありすを見つめるカケルであった。
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