異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収集つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~
英雄皇帝カケル
「うむ、それでは満場一致でカケルくんをカケルノ連邦帝国皇帝とする!!」
大きな拍手が議場を埋め尽くす。スタンディングオベーションというやつだな。
「あの……そんな大事なことを、本人の了解なく決めていいんでしょうか?」
ものすごーく他人事で聞いてみる。
「ん? 婿殿は皇帝になるのが嫌なのか? 皇帝はいいぞ! 各国の美姫がよりどりみどり……」
いや義父上、それ今と変わらないんですけど……むしろ面倒が増えるだけなんですけど~。
「ちなみに……断ることは?」
「断るのは構わないが、もう決定したことなので、こちらは勝手に皇帝よばわりするぞ?」
なるほど……もはや退路は断たれ、外堀は埋められているということか。
「まあ皇帝と言っても、実際に何か権限があるわけではない。あくまで象徴。英雄に守られた国という体だ。皇帝の下では、すべての国は等しく同じ立場。素晴らしい構想だと思うぞ」
たしかにそんな形もありかなと漠然と考えていたのは事実だ。というか完全にそういう方向性だったからな。
でも、俺という存在が安全弁となって、世界平和が保たれたらいいなとは思っていたけれど、前面に出ることは考えてなかったんだよな。そのほうが世間的にわかりやすいのは理解できるけどさ。
まあ、やることは同じだし。どうせやるなら効果的なほうがいいか……
おそらくは、魔人帝国への風当たりを配慮したのだろう。一般の民に細かい事情などわかるはずもない。でも俺の傘下にあると分かれば、安心するだろうしな。
「わかりました。皇帝就任の件、謹んでお受けいたします」
***
「ふふふ、旦那様、素晴らしいな。カケルノ連邦帝国皇帝。特にカケルノが素晴らしい」
セレスティーナはそうだろうな……俺は嫌なんだけど、改名は難しいだろう……とほほ。
帝国の帝都は必然的にセレスティーナとなる。帝都セレスティーナ……ヤバいなんかカッコいい。
それはいいんだが、これから先、名乗るときは皇帝をつけなくてはならないのだろうか?
異世界から来た英雄皇帝カケル……おおっ、なんか今までより3倍ぐらい強そうだ。
あくまで名誉職なので、これといって特に決まった仕事はない。これまで通り、各国の支援と調整が主な役割だ。
ただし、今後はすべてに皇帝の名が冠されることになる。皇帝専用騎竜クロドラ、皇帝専用メイド長ヒルデガルド……いや待て、ヒルデガルドはもともと皇帝のメイドだったな。皇帝専用皇妹メイドクロエ……うむ、皇という字が入るだけでだいぶカッコいい。皇帝雑用係ベルトナー……うん、皇帝付いてもカッコ悪かった。
***
「……ところで、ミヅハ?」
『はい、皇帝ご即位おめでとうございます!! ミヅハはこうなることを確信しておりました』
我が事のように喜ぶ有能な妹の姿に怯むが、聞いておかなければならないことがある。
「ありがとう、ミヅハ。そういってもらえて嬉しいよ」
『ふふっ、お兄様大好き~チュッ!』
くっ、可愛い、だがいつものミヅハならこうはならない。勢いで誤魔化そうとしている気がする。
「ときにミヅハさん……『お兄様』とはなんだね?」
『? お兄様はお兄様ですわ?』
そんな可愛い顔をしてとぼけても駄目だぞ。ネタは上がっているんだ。
「……実は会議で、現在流通している通貨とは別に、仮想通貨が決まったんだが、その名称がなぜか『お兄様』なんだが……何か知らないか? っていうかお前以外考えられないんだが!? なんだよ『お兄様』って!?」
そもそも、仮想通貨という発想がおかしい。ギルドカードなどで支払ったり色々できて便利なのは認めるが、この世界の人間の発想ではない。名称はもっとおかしいけどな。
『……お兄様……怒りませんか?』
不安そうに上目遣いで見上げるミヅハ。
「馬鹿だな。俺がミヅハを責めるなんて俺がミヅハを嫌いになるぐらいあり得ない」
ぱぁっと笑顔の花が咲くミヅハ。
『実は、最初は屋敷内の人間内で決済用に使っていたんですが、先日オープンしたショップでも使えるようにしたところ、またたく間に広がりまして……』
なるほど……超人気のミヅハの店で使っていれば、真似したくなるのも仕方ないか。
だが、それとこれとは別問題、こんな恥ずかしい通貨名は断固抗議しなければ!!
「だがミヅハ、そもそもなんでこんな名称にしたんだ?」
『お兄様をこの世のすべてよりも愛しているからです。キッパリ!』
「そ、そうか、中々個性的で良いと思うぞ」
『はい、私もそう思います。うふふ、嬉しいです』
い、言えない……ミヅハの笑顔を曇らすことなど出来ない。だが、キッパリを口に出すのはおかしいんじゃないか? 可愛いからアリだけど。
『お兄様……』
「どうしたんだミヅハ?」
『これからお忙しくなりますね』
「そうかもな……」
『ご褒美にお兄様の皇帝としての初仕事を私にくださいませ』
「……行くか異空間」
『はい、お兄様!!』
抗議するはずだったのに、ご褒美とはこれいかに? だがそんなことは些細なことだ。
ミヅハは何時だって俺のために行動してくれている。
ありがとな、ミヅハ。皇帝という重圧を和らげてくれて。その気持ちに目頭が熱くなる。
お前と出逢えて本当に良かった。
ミヅハの華奢な肩を抱き寄せ――――熱ぢいいっ!?
ぐらぐらに沸騰したミヅハに、火傷しそうになる。
『もう……そんなこと思ったら駄目です。お兄様のためじゃなくなってしまいますからね!』
顔を真っ赤にして逃げるように異空間に消えた妹。
「たまには俺のため以外に行動しても良いとは思うんだけどな……なあ、セレスティーナ?」
「ふふっ、でもミヅハさまも最近はだいぶ欲望に忠実になってきたようですよ?」
それはそれで少し怖い気もするが……
「よし、行こうかセレスティーナ! 皇帝としての初仕事だ!」
「はい! 旦那様!」
セレスティーナをお姫さま抱っこして異空間に消えるカケルであった。
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