異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収集つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~
異空間は修行する場所という体
カケルにモフられる獣人たちを羨ましそうに眺める婚約者たち。
『ふふっ、眺めているだけじゃ何も変わりませんよ? 自分を変えたい。そんな皆様にぴったりの商品がこちら。身体に塗るとあら不思議、水の繊維がまるでモフモフの体毛のように……』
「「「「み、ミヅハ……なんですか?」」」」
自らモフモフになったミヅハが現れる。言われなければ獣人にしかみえないほどのクオリティだ。にっこり微笑むと、ちゃっかり身体モフ検査の列に並ぶ。
「ま、待ってミヅハ、そのクリームを頂戴!!」
『シルフィさま、それでは十万お兄様でお譲りしましょう』
「じゅ、十万!? 高過ぎるわよ?」
あまりの高額さに購入を躊躇するシルフィ。無理もない、シルフィの毎月のお小遣いは、百万お兄様だ。たかがクリームに、その十分の一を投入することを即断できるだろうか。
ちなみに『お兄様』は、ミヅハの開発した商品を購入するために必要な仮想通貨の単位だ。主に屋敷内で流通しているが、セレスティーナを始めとした大都市でも徐々に浸透してきている。ちなみにカケルはそのことを知らなかったりする。
『三ついただきましょうミヅハさま』
『ふふっ、さすが専用メイド長さま。本来なら三十万お兄様ですが、二十五万お兄様にしておきます』
『ふふふ、助かります』
さっそくモフモフになって列に並ぶヒルデガルド。
「くっ、先を越されたわ。わかりました、十万お兄様払います」
『ふふっ、決して無駄にはなりませんよ。使用後は美肌効果もありますからね』
「うわあ……すごい、モフモフになった」
「うわあ……すごい、ボクまでモフモフになった」
「……ちょっと、なんでサラまでモフモフになっているのよ?」
「さあ? 同期したんじゃないの?」
「……五万お兄様払いなさいよ?」
「へいへい」
るんるんで列へ並ぶシルフィとサラ。
「ミヅハ、私にも貰えるでしょうか? そのモフモフクリーム」
『? クロエお姉さまは必要ないのでは?』
もともとモフモフのクロエに、クリームが必要だとは思えない。ミヅハは首をかしげる。
「私はこの国の王女です。正体がバレてしまったら、民をがっかりさせてしまいますから」
『そ、そういうものでしょうか?』
「そういうものなのです」
完全に長毛種となったクロエも列の最後尾へと並ぶ。
『あら……エヴァさまはよろしいのですか?』
最後に残ったエヴァを気にするミヅハ。
「ククッ、心配無用じゃ。妾なら自力でモフモフになれるからの」
『え!? そうなのですか、エヴァさま?』
もともとムダ毛がまったくない吸血鬼であるエヴァ。モフモフとは対極にある存在。そんなことが出来るとは初耳だ。
「ふふふ、あまり使う機会はなかったが、見せてやろう、コウモリ変化!!」
みるみるエヴァの身体がコウモリ化してゆく。人化は維持しているので、コウモリ獣人といったところか。
『なっ!? け、結構モフモフなんですね……コウモリ』
ミヅハも驚くが、そう、コウモリはモフモフである。
意気揚々と列に加わるエヴァ。
「ふふふ、これまで使ったことはなかったが、ダーリンが喜ぶなら使ってみるか……」
カケルにモフられることを夢見る婚約者たち。しかし――――
「よし、美琴、ここから後ろはお前に任せたぞ」
「ふふふ、この副大臣にお任せだよ!!」
「「「「「……は!?」」」」」
「おっ、なんかやたらと可愛いモフモフが並んでるね。ぐふふ……」
ミヅハたちに気付いた美琴が下品な笑みを浮かべてロックオンする。
「「「「「い、嫌ああああああ!?」」」」」
わざわざ高いクリームまで使って、エロ勇者にモフられる散々な婚約者たちであった。
***
『お待たせしました黒影殿』
一旦屋敷に戻った俺の元へ忍者のごとく姿を現すカイ。元皇女付きの凄腕諜報工作員だけあって、毎日様々な情報がどんどん入ってくる。
「調査中に呼び出して悪かったな。トラキアについてなにか分かったか?」
カイの指揮する諜報部員たちには、人身売買組織の全容と帝国との関係を調べてもらっている。以前トラキアに関する報告があったので、組織と無関係ではないはずだとにらんでいる。
『さすがは黒影殿の慧眼。トラキアは完全に真っ黒でしたね。今のところ、帝国本国は別として、トラキアに人身売買組織の本部があるとみて間違いないかと』
「それは重畳。色々まとめて片付きそうだな」
ふふっ、異世界に来たら言ってみたかったんだよな。重畳って台詞。ありがとなカイ。
となると、下手に本部だけ潰すと面倒なことになりそうだ。帝国にも勘づかれるし、各支部に勝手に動かれると厄介だしな。
「カイ、組織を潰すのは国際会議の後になる。今日のところは偵察がメインだ。トラキアの近くには誰がいる?」
『トラキアの王都にソヨカゼがおります。乗り込みますか?』
「ああ、明日の会議の準備もあるからな。さっさと終わらせよう」
「あ、あの……黒影殿……その……」
顔を赤くして言葉を濁すカイ。
「カイ、異空間に行くぞ」
『……それは御命令ですか?』
「いや……俺のワガママだ」
『……お供させていただきます』
黙ってカイを抱きしめると異空間へ飛ぶ。
『あああ、黒影殿おおお!? て、手加減してくださいいい!』
「駄目だ。カイ、お前は敵にそんなことを言うのか?」
『も、申し訳ございませんンンン!?』
カイにたっぷり修行をつけてやった。これで彼女のメタモルフォーゼも進化したはずだ。
『カイさま、黒影さまと距離近くないですか?』
『主様? これはどういうことですか?』
屋敷に戻った俺たちをジト目で待ち構える、エルゼとソニア。
うん、たしかに不公平は良くないよな!
『黒影さま、異空間行きますよ!』
「ちなみになんで?」
『私のワガママです。言わせないでください、黒影さまのエッチ♡』
エルゼさん? 異空間は修行する場所という体ですよ?
「ちなみにソニアは――――」
『離れるなと命令したのは誰ですか? 駄目と言われても行きますよ?』
うん、聞くまでもなかったな。
『黒影殿、お供いたします!』
カイ……さすが、タフだな。
『えぇっ!? カイさまズルいです!』
『安心しろ。今回はサポートに回る。進化したメタモルフォーゼの力でな!!』
『主様!? カイさまが怖いんですけど、何をしたんですか!?』
さ、さあな? まあお楽しみってことで!
その後、異空間に、エルゼとソニアの悲鳴が響き渡ることになる。当然厳しい修行のせいである。
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