異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収集つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~
一番搾り召し上がれ
「大丈夫か? 俺は異世界の英雄カケルだ。貴女たちを助けにきた」
あわわわわ……どうしましょう、ひと目で恋に落ちてしまったわ。
鼓動が速くなる。胸が苦しい。何より私のユニークスキル『一目惚れ』が発動している。
『一目惚れ』は、運命の相手に出逢った時にだけ、状況に関わらず発動するらしい。たとえばすれ違っただけでも。今まで発動したことは一度もなかったから、すっかり忘れていたけれど。
スキルの能力はそれだけじゃない。運命の相手が私に望んでいることがわかるの。すごいでしょ? きっと気の利く良いお嫁さんになれると思うのよ。
ふんふん、私の英雄さまは、私にどんなことをお望みかしら?
ふえっ!? そ、そそそんなことを!? はうっ!? そ、それはさすがに恥ずかしい……ま、待って、心の準備が……!?
はあはあ……英雄さまったら、そんな優しげな笑顔の裏で、私にそんな欲望を秘めていらっしゃるのね。ああ……切ない。全部叶えて差し上げたくなってくる。
でも、やっぱり物には順序と言うものがある。たとえ運命の人であっても。いいえ、だからこそ大切にしたい。
「あの……もしよろしければ、私の牛乳……お飲みになりますか?」
今はこれで精一杯。誰にも飲ませたことのない一番搾り。ご堪能くださいね。
***
『きゃあああああああああ!?』
『た、助けてえええええええ!?』
突然の悲鳴に慌てて飛び起きる。
たくさんの男たちが姿を現し、あたりは騒然となるが、逃げ出すものはいない。
「お母さん、逃げなきゃ!! 捕まっちゃうよ!」
「諦めなさい。これも運命、大人しくしていれば、きっと痛い目にあうことはないわ」
たしかにそうかもしれない。逃げたところで、行くあてもないし、お母さんたちを連れて逃げるなんてもっと無理。
運が良ければ、一緒に暮らせるかもしれないのも事実。牛獣人をさらう人々は、比較的大事にしてくれると聞いたこともある。
でも……このまま運命に身を委ねるのは嫌だ。たとえ結果が同じでも、私は精一杯足掻いてみせる!!
スキル『一生のお願い』発動!!
私のユニークスキル『一生のお願い』は、願ったことが、たいてい何らかの形で叶うという、素晴らしいものなの。一生のお願いなのに1日1回使えるなんてすごいチートね。
精一杯足掻くなんて、格好の良いことを言ったけど、すごーく他力本願な私。
お願い、私たちを助けて!!!
「グヘヘ、可愛いねえ……オジサンに牛乳飲ませてくれよ?」
下品な笑顔で迫る男たち。怖い、恐怖で身体が動かない。
「待って! その子はまだ牛乳は出ません、飲みたいなら私が飲ませてあげるわ」
「お、お母さん……!?」
「ほう……これはまた色っぽい牛さんだな……たまらんぞ、いっただきま――――ぶべらっ!?」
お母さんに群がっていた男たちが、一瞬で地面に這いつくばる。
な、何が起きたの?
「大丈夫か? 俺は異世界の英雄カケルだ。貴女たちを助けにきた」
黒目黒髪の男の人……もしかして本物? うそ……私のスキルすごい。
頭が真っ白で、身体が熱い。心臓が痛いほど脈打っている。直視できないほどの眩しい笑顔。でも御礼だけは言わないと。それが英雄の血を受け継ぐ私の誇りだから。
「あ、あの……私はミクといいます。助けていただきありがとうございます」
「ミクか、良い名前だな。怖い思いさせてすまなかった。痛いところとかないか?」
ふわあ、英雄さまが頭を撫でて下さっている。い、癒される。あ、あれ? ぎゅ、牛乳が出てきた!?
「良かったわね、ミク。これで貴女も一人前の牛獣人よ」
わ、私が一人前に? 嬉しい……私だけ遅れていたから。
「さあ、初めての牛乳、英雄さまに飲んでもらいなさい」
「……ふえっ!?」
え? え? の、飲んでもらう? 英雄さまに? む、無理、は、恥ずかしい。
「飲んで良いんですか? お母さま」
「もちろんよ、英雄さまに飲んでもらえるなんて……羨ましいわ」
は!? 話が勝手に進んでいる。断れる雰囲気じゃない。
「もしよろしければ、お母さまの牛乳も飲ませていただきたいのですが?」
「まあ!! うれしい。では、飲み方のコツもありますから、まずは私から……」
なんかお母さんの牛乳を飲むことになってる……なぜだ?
「そ、そうです……うそっ!? う、上手すぎる……うはあああ!?」
お母さんがぐったりしているんだけど!? 怖いよ!?
「じゃあ次はミクのを飲ませてもらおうかな?」
はわわわわ……どうしよう、で、でも……英雄さまなら良いかな?
「ど、どうぞ、初めてなので、味は保証できませんけど……」
「……も、モウ駄目でしゅ……もう出ないでしゅ……」
「ご、ごめん。あんまり美味しいからつい……」
申し訳なさそうに頭を下げる英雄さま。
本当ですよ? まったく……どれだけ喉が渇いていたのやら。ま、まあ別にいいですけどね。
「英雄さま、それでは足りないでしょう? もう少しいかがです?」
「ありがとうございます、お母さま、いただきます!!」
あまりの飲みっぷりの良さに、他の牛獣人たちも集まってくる。
「英雄さま~!! 私のも飲んで~!!」
「喜んで~!!」
あの……英雄さま? もう10人目なんですけど!?
豪快に飲み続ける英雄の姿に戦慄を隠せないミクであった。
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