異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収集つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~

ひだまりのねこ

登場と同時に退場しそうなそんな予感


「ところで先輩、牛獣人って基本的に引き籠もりなんでしょ? どうやって見つけるの?」

 美琴に言われて初めてそのことに気付く。その辺の草原に寝そべっているイメージだったよ。

「…………クロエ?」
「ふふっ、御主兄様のことですから、その辺の草原に寝そべっていると思っていたんですよね?」

 図星だ。一言一句正確に図星だ。

「大丈夫です。食事を差し入れしてもらえる雇われ牛獣人と違って、野生の牛獣人は自力で食事をしなければなりませんから、その辺の草原で食っちゃ寝していますよ」

 寝そべってるじゃん!! その辺の草原で寝そべってるじゃん!! 

 いつになく冴えているな俺。これはモフキャットも手に入るかもしれない。そんな万能感、ふふふ。

「でも、牛獣人って戦う力を持っていないんでしょう? 危なくないのかしら?」

 シルフィが心配そうに俺にキスをする。意味不明だが、御礼だけは欠かさない。お返しのキスをする。

「ですので、牛獣人たちは、常に集団生活をしています。誰かが食べられている間に、逃げることが出来ますから……」

 厳しい現実に震える。まさに野生の王国、弱肉強食の掟に翻弄される牛獣人たちを思うと涙が止まらなくなるよ。

「とはいえ、実際は、籠絡した獣人をボディガード代わりにしていることが多いので、そんな悲惨なことはめったにないですけれど。むしろ――――」

 そこで一旦言葉を切り、俺にキスしてくるクロエ。珍しく動きが早い。やはりホームでは強いのか? 出番を奪われたサラが悔しそうにしている。

「むしろ、ボディガード役に襲われる方が多いくらいです。まあ牛獣人側も誘っているんですけどね……意外に肉食なんです」 

 顔を赤らめるクロエにお返しのキスをする。

「へえー、草食なのに肉食とか面白いね貴方様」

 サラが負けじと濃厚なキスをしてくる。こらこらまだ朝ですよ? お返しは当然特濃で。

「サラ、牛獣人は草食じゃないですよ?」

 キョトンとするクロエ。え? 違うの?

「じゃが草原で草を食べているのじゃろう?」

 エヴァの吸血との合わせ技、吸血キスは腰が抜けるほど強烈だ。お返しすると反動で腰が抜けてしまうエヴァ。

「それはお金が無いから仕方なくです……世知辛いですね」

 う……美味しいものをたべさせてあげたい。

「でも、草を食べてるほうが美味しい牛乳になるイメージが……」

 おいおい美琴、それはキスの範疇を越えてないか? え? 接触はすべてキス? まったくもってウエルカムな意見だな。

「そんなことないですよ美琴。なんでも、美味しいものを食べた方が、美味しい牛乳を出すらしいです」

 マジか? ならば甘やかそう。全力で。

「ところでクロエ、男の牛獣人は何しているんだ? 牛乳は女だけなんだろ?」

 セシリアさんが気になっていたことを、舌を突っ込みながら突っ込んでくれる。

 ……なんか牛タン食べたくなってきた!?

「男の牛獣人は……」

 クロエの表情が曇る。ま、まさか……嘘だよな?

 全員察して蒼白になる。言うな、その続きは聞きたくない。

「成人前に肉になります」

「「「「「「嫌ああああああ!?」」」」」」

 全員が絶叫する。


「……冗談です。ですが、肉を出すのは本当です」

 本当に悪い冗談だ。それにしても、肉を出す? なんだろうこの違和感は……

「牛獣人の男性は、付いたぜい肉が取れるのです。最高級の味ですよ?」

 な、なるほど……男女問わず、動く必要がないんだな。出来れば肉を取る場面は見たくないが、美味いのならセーフだ。

 ならば男の牛獣人も雇わなければなるまい。男女雇用機会均等、これ大事。


***


「……そろそろ、アルゴノートに入ります。あとは目視で探すしかないですね」

 クロエによれば、牛獣人の見た目は、以前俺が作った牛コスに近いらしい。それを聞いた時の俺の感動はいかほどか、とても言葉では伝えきれない。

 だが、共感してくれたのは美琴だけだ。おお、心の友よ。みんなの生暖かい視線に負けることなく、頑張ってだらしない牛姉さんを見つけような!!


「牛獣人の性格を考えると、災厄の際に避難した野生の牛獣人の多くが、いまだに避難先に留まっている可能性が高いです」

 たしかにクロエの言うとおりだ。きびきび動く彼らの姿が想像できない。

 だが、避難先となると山奥か深い森の奥だ。上空から目視で探すのは難しいだろう。

「ヒルデガルド、クロエいけるか?」

 こういう時は、有能な専用メイドたちにお任せだ。姿は隠せても、匂い鑑定と透視能力の前では丸裸。死角はない。

『ふふっ、お任せくださいカケルさま。クロエ、ミルクの匂いで大まかな方向だけ教えてください』
「……あちらの方角からミルク臭がしますね」 

 クロエの指し示す方向は、深い森の奥だ。やはり避難先でぐーたらしているんだな。無事でいてくれるといいんだが。

「カケルっち、良い感じでモフキャットもいそうな森だな」
「たしかに……クロエ、そもそもアルゴノートにモフキャットはいるのか?」

 肝心なことを聞いていなかった。生息地でないのなら、探しても望みは薄いだろう。

「おそらくいると思いますよ。モフキャットの好物は、牛獣人の牛乳ですからね」

 くっ、魔物なのに可愛い子猫かよ。


『カケルさま、牛獣人らしい集団を発見しました』

 報告がわりにキスをしてくる、いけないメイド。

「でかしたヒルデガルド」

 職務中にけしからん。お仕置きがわりにキスをするだめだめな俺。

「……御主兄様、どうやらキナ臭い雰囲気です」
『おそらく人身売買組織の連中かと……急いだ方が良さそうですね』

 なんだって!? 人身売買組織の連中……ふざけやがって。

「……みんな、準備はいいな?」

「「「「「「もちろんです!!」」」」」」

 全員が目標に向かって転移を発動する。

 人身売買組織の諸君、お前らの命運は風前の灯だ!!

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