異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収集つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~

ひだまりのねこ

牛獣人とモフキャット


 ケルトニアから戻った翌朝、といってもまだ夜も明けぬ暗い時間帯だが、俺はいつもの朝の鍛錬に励んでいる。

 正直、昨夜は人生で一番ハードな夜だったと言っても過言ではないだろう。なにせ、婚約者全員が揃う、しかも大幅に増えている、というかつてない条件だったのだ。

 しかし、そんなものは想定内。まとめて幸せにすると決めている時点で準備はしていた。そうでなければ、どうしてポンポン婚約者を増やせるだろうか?

 はっきりいって、俺の学習能力は異常だ。瞬間記憶でわかると思うが、基本見ただけでほぼ問題なくコピーできる。ましてや実践すれば、その習熟度は天井知らず。最初は8人が限界だった分裂も、今では200人でも余裕だ。おまけに時空魔法まで併用すれば、婚約者たちに淋しい想いをさせることなど、まずない。

 つまり何が言いたいのかというと、まだまだ余裕だということだ。これ以上増やすつもりはないが、今後どうなるかなんて誰にもわからない。誰に言っているのかわからないが、どうか安心して欲しい。


「なあカケルっち、今日はアルゴノートに行くんだろ?」

 セシリアさんが、魔法と剣撃を叩きこみながらたずねてくる。受けてもたいしたダメージにはならないが、丁寧に相殺し、捌いてゆく、そうしてこそ、俺もセシリアさんも互いに鍛錬になるからだ。

「はい、念願の牛獣人をスカウトしに行きます。セシリアさんも一緒に来ます?」

 そう、ようやくだ。やっと牛獣人のお姉さんたちに会える。だいぶ待たせてしまって申し訳ない。向うは待っていないだろうが。俺には首を長くして待っているたくさんの牛柄のケルベロスが見えている。

「もちろん私も行くよ。クロエに聞いたんだけど、アルゴノートは、獣人だけじゃなくて、普通の獣も多いらしい。あと、出現する魔物も獣系なんだとさ」

 なるほど、獣人が住みやすいということは、他の獣も住みやすいということなのだろうか?
  
「というわけで、私も幻のモフキャットを探そうかと思ったんだよ。アルゴノートならいるかもしれない」
「も、モフキャット!? なんですかその素敵生物は!!」

 もう名前だけでヤバい。すでに手に入れる気満々だ。

「名前のとおりネコの魔物なんだけど、長い白黒の毛がもふもふしていて、触り心地は最高らしい」

 ネコ好きのセシリアさんが、よだれを垂らしながら恍惚な表情を浮かべる。

 白黒はヤバい。モフモフの破壊力が違う。パンダ、牛、ウサギ、ネコ、バク、シマウマ、シャチ。白黒なだけで可愛さ5割増しだからな。パンダ柄でも、牛柄でも、しましまでも、まだらでも、なんでもかかってこい。

 あくまでも牛獣人のスカウトがメインではあるが、これは手が抜けない重要ミッションが増えたな。

「でもセシリアさん、幻って言うぐらいだから、結構レアなんじゃ?」
「警戒心が強くて目にも留まらぬほどすばしっこいらしいが……私たちなら問題ないはずだろ?」
 
「ふふっ、捕まえましょうモフキャット」
「ははっ、そう来なくっちゃな!!」
 
 力強く握手をかわす。


***


「というわけで、今日はアルゴノートで牛獣人とモフキャットを捕まえるぞ」

「御主兄様……牛獣人を捕まえるのは犯罪ですが!?」
「すまん……言葉の綾だ」

 アルゴノートへ向かうのは、俺、クロエ、セシリアさん、美琴、シルフィ、サラ、エヴァの7名だ。

 モフキャットを捕まえるために、ネコ枠で、ミレイヌとカトリイヌも誘ったんだが、なぜか引っ掻かれた。それぞれよくわからないプライドがあるらしい。まあ、二人とも仕事があるからな。

 シルフィ、サラ、エヴァは牛獣人には興味がないみたいだけど、単に俺と一緒に出掛けたかったらしい。最近別行動が多かったからな。

「貴方様、明日は国際会議があるというのに、大丈夫なの?」
 
 シルフィが至極もっともな懸念を表明する。

「だからこそだよ。牛乳はいろいろな料理に使えるし、デザートにもなるんだ。ぜひ会議に出す料理に間に合わせたいと思ってさ。シルフィたちにも美味しい牛乳を飲んでもらいたいんだよ」

「…………ふーん、まあそういうことにしておいてあげるよ、貴方様?」

 悪戯っぽく笑うと、背中に飛び乗るサラ。続いてシルフィも乗り込んでくる。

「ふふっ、このメンバーで出かけるのも久しぶりだの」

 エヴァは、頭の上に腰掛ける。この乗り物扱いされる感じ、なんか懐かしい……いや、そうでもないな……。

「くっ、また出遅れましたね……」

「何やっているんだクロエ。お前のために特等席を空けてあるんだからな」

 今回はクロエの母国に行くのだから、当然特等席がふさわしい。お姫様抱っこは彼女のものだ。

「ご、御主兄様ああああ!? クロエは嬉しいです!!」

 泣きながらお姫様抱っこされるクロエ。ああ、やはりクロエモフは最高だ。最近少し毛が伸びたせいで、手触りが神がかっている。

「先輩、乗る場所がないんだけど?」

 ふふっ、美琴がお怒りだな。

「ほれ、こっちの俺に乗れ。『分裂』!!」

 分裂した俺にお姫様抱っこされてご満悦の美琴。

「いいねえ、じゃあ私もこっちに乗るぞ」

 セシリアさんは背中に乗って首に手をまわす。

「みんな準備OKだな。じゃあ出発!!」

 クロドラを召喚する。

『……主よ、これから我に乗るのに、皆を抱える意味はあるのか?』

 呆れたようにジト目を向けるクロドラ。

「…………気分?」
『疑問形で返されても困るが……』

 ともあれ、皆を乗せて離陸するクロドラ。かなり距離があるので、今回は飛ばしめで。

 待ってろよ。野生の牛獣人。みんな根こそぎ雇ってやるぜ!! そしてモフキャットも絶対モフってやるからな!!

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