異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収集つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~
どうぞ2人でごゆっくり
「あの、カケルさんは日本人ですよね?」
思い切ってたずねてはみたものの、もし違っていたら恥ずかしい……どころではない。そのまま天に召されてしまう。
「ああ、そうだ。ん? もしかして、リリカは転生者なのか?」
良かった……やっぱりそうだった。だから何と言われてしまえばお終いなのだが。
「はい、あの……その……」
駄目だ、コミュ力が足りない。みんな私に力を分けておくれ! 男性と話すのなんてお父さまぐらいだから、どうしていいかわからない。レベル1なのに、いきなりラスボスに遭遇したみたいなものだよ? くっ、読んだ本の知識を総動員して……ってよく考えたら、お母さまいるじゃん。転生者だってバレちゃったよ……どうしようテンパってて何も考えてなかった。
「…………知ってた」
さらりと衝撃発言をかますお母さま。
「…………へ? 知ってたって、お母さま……何時から!?」
「…………生まれてから直ぐ」
「げっ!? もしかしてお父さまも?」
「…………もちろん」
何ということだ。バレてないと思っていた自分が恥ずかしい。
「で、でも、なんで? なんでわかったの?」
「ん…………寝言で異世界語喋ってた」
うわあ……マジですかそうですか……。
「でもなんで異世界語だって……?」
「…………ふふっ勇者学院卒」
自慢げに胸をカケルさんに押し付けるお母さま。そこは胸を張るところだと思うんだ……。
でも、そうだった。うちの両親勇者学院卒だった。しかも首席。まあ隠していたわけでもないし、結果的に良かったということで。
「で、でも、お父さまとお母さまのことは大好きです。産んでくれてありがとう」
比べることなんて出来ない。どちらの両親も、私にとって、かけがえのない存在だ。
「…………貴女は自慢の娘」
「…………お母さま」
そっとカケルさんを抱きしめるお母さま。そこは、私を抱きしめるところだよ?
「…………リリカもやってみて?」
出来るか!!
「それで、何を言いかけてたんだ、リリカ?」
はうっ!? わ、忘れていた。ラスボスがまだ生きていた。むしろ無傷だった。こっちはHPもMPもゼロだよ?
「あ、あああ……」
顔が熱い、頭が真っ白になる。冷静になろうとしても、心が暴走してしまってどうしようもない。
「うーん……仕方ないな、ちょっと失礼」
うはあああああ!? な、なにしてらっしゃるのですか? か、カケルさん!? おで、おで、おでこ……はわわわわ……おでこがくっついてるんですけど!!
一向に話せない私をみて、いきなりおでこ同士をくっつけるカケルさん。ち、近い近いっていうか、あと1センチでキスしちゃいますよおお!?
そこから先を私は憶えていない。おそらく意識を失っていたのだろう。
目を開けると、相変わらず近くにカケルさんのラスボススマイルがある。あやうく死にかけるが、なんとか踏みとどまることに成功する。
「いきなりごめんな。俺は頭部の濃厚接触で相手の情報を受け取ったり、逆にこちらから送ったりできるんだよ。リリカの言いたかったことだけ読ませてもらったよ」
へ? そんな好都合な能力が……いや、英雄ならそれぐらいできるのか? それなら私でも……ってちょっと待て。
まさか……私の気持ちとか考えてたことバレバレ?
「大丈夫、ちゃんと、これはマズイかなと思われるものは、選別しているから」
良かった……ちゃんと選んでくれたなら安心……って、駄目じゃん、選ぶ段階でバッチリバレバレじゃん!?
「うわああああ!! 忘れて! 忘れてください!!!」
カケルさんをガクガクと揺さぶる。
「ククッ、あははは! 冗談だって! 勝手に読んだりなんかしないよ?」
え? なんだ冗談だったのか……それはそれで少し残念な気が……解せん。
「…………リリカもやればできる娘ね」
ハッ!? 気付いたらカケルさんに抱きついている恰好になってる!?
慌てて手を離そうとしたら、カケルさんに、きゅっと両手を握られてしまった。
何コレ? 溶ける……溶けちゃうよ。あらゆる状態異常が私を襲う。もうこのイケメン魔王から逃げることすら叶わない。エヘヘ。
「……少しは緊張がとけたかな?」
「ふぇっ!? そ、そういえばそうかも……」
相変わらず、いやドキドキはむしろ激しくなっているけれど、なんだろう? 安心感がすごいんだね。だから大丈夫って思えるんだ。
「せっかくだし、少し話したいな、日本のこと」
「わ、私も! 私も話したいです!!」
嬉しいな。きっと生きていた場所も値観感も、生き方も、全部が違うだろうけれど。
それでも嬉しい。たまらなく嬉しいんだよ。
異世界に生まれ変わってわかった。当たり前の常識が当たり前じゃなかったってことを。それがどれほど孤独なことかってことも。
「…………ふふっ、どうぞ2人でごゆっくり」
気を利かせてお母さまが、そっと目を閉じる。
お母さま? 嬉しいんだけど、そこは席を外すか、せめて耳をふさぐところだよ?
「…………そんなことしたら聞こえない」
うん、わかってた。無視しよう。あれはぬいぐるみ……お母さまのぬいぐるみ。
「ほら、リリカにプレゼント。レーニャさんのぬいぐるみだ」
いつ作ったんですか? っていうかなんでお母さまが抱きしめてるんですか? それ私がもらったぬいぐるみなんだけど?
「じゃあ、簡単にまとめた俺の情報渡すけど、おでこ、鼻、口、耳、どれが良い?」
「…………おでこで」
いやいや、おでこ以外全部恋人の所業だよ!? 実質1択じゃん!! っていうか、おでこも大概だけどね!?
「……カケルさん? どうかしました?」
茫然としているカケルさん。え? 私、変なこと言ったかな!?
「そっか……そうだよな……うん、それが普通の反応だよな……」
何やら感慨深げなカケルさん。
「えっと……?」
「ありがとうリリカ。抱きしめて良いか?」
「うえっ!? だ、駄目です!!」
嫌なのではない。耐えられないだけだ。悔しいけれど。
「それな! ふふっ、やっぱり日本人だなリリカ!」
嬉しそうに抱きしめてくるカケルさんの魔手に抗うことなど出来ようか、いや出来ない。
結局、カケルの抱きまくら状態で羞恥に震えるリリカであった。
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