異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収集つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~
妖精王フェリル
妖精宮は、一見すると世界樹っぽい雰囲気もある、緑あふれる癒し空間。
建物の素材は驚くべきことに半透明で、中が透けて見えそうだ。着替えとかトイレとかどうするんだろうと思ってたら、そういう場所はちゃんと透けない素材で作ってあるそうだ。
残念でならない。
「でも、不思議な素材だな。一体何で出来ているんだ?」
触ると僅かに弾力があり、固いゼリーのようにも思える。
「さ、さあ……なんでしょうね?」
『ふえっ!? し、知らないでしゅ!』
明らかに挙動不審なフェリスとリッタ。絶対知っているのだろうが、嫌ならあえて聞くまい。
『妖精の排泄物だ、英雄』
『わかりやすくいえば、う○こだ、英雄』
だが、羞恥心ってなに? って感じの妖精巫女たちがあっさりと暴露する。ここはフォローしなければいかんな、話を振った俺の責任だし。
「ははっ、すばらしいじゃないか! まさしくエコ! 俺たちの世界でも、昔はそうやってリサイクルしていたらしいからな。うん、感動した!! 妖精宮最高!! できることなら食べてみたいくらいだよ」
…………あれ? 周囲の視線が痛い。
え? なんで目をそらすの!? じょ、冗談だから!! 食べたいって言ったのは冗談だから!!
「……今夜のメニューに加えるようにシェフにつたえますわ、英雄さま……」
『……だから英雄しゃま、いつもリッタのお尻を見て……』
いかん、妖精に冗談は通じないんだったな。忘れていたよ。でも冗談は言うんだね、リッタ。
まあ、食糞はコアラ、豚、ウサギ、アリ等、自然界ではいくらでも例がある。妖精の場合は、食べられるかどうかは別にして、主食が魔力だから、汚いイメージはまったくないけどな。むしろ薬になりそうな気がする。
***
「えっ? フェリスが戻ったって? しかもハクシたちを連れたリッタと一緒に? わかった、すぐに会うよ!」
突然のディズリーの報告には驚いたよ。あのリッタが無事に役目を果たしたことも驚きだけど、異世界の英雄に勇者さま、あろうことか、宿敵巨人族の邪王バロールまで一緒だっていうんだから。
もうね、意味がわからない。なにがどうなってそのメンバーになったのか。
さらには、妖精巫女さまと神狼ララさまの娘ルルまで一緒らしい。それから一番のニュースは、アリエスがここに来ていること! もうね、久々に頭が痛い。どこから突っ込むべきか、それが問題だよ。
***
「妖精王フェリルだよ。ハクシ、よく来てくれたね。他のみんなも適当にくつろいで」
謁見スタイルだと時間がかかりそうだったし、おそらく公に出来ない話も多そうだから、ボクの私室へ案内した。
でも聞くのと実際に会うのでは全然違う。特に英雄と勇者さまがヤバい。なんていうか次元が違うのがわかるね。なんか神様と接しているような気持ちになるよ。会ったことないけどさ。
「はじめまして、異世界から来た英雄カケルです。お会いできて光栄です」
英雄であるカケルくんは、とても感じの良い好青年だね。このボクが惚れちゃうなんて初めての経験だ。惚れるっていっても変な意味じゃないけどね。
ただ好きって感じ。抱きしめたいだけ。残念、女性だったらキスできたのになあ……ってあれ?
それにしても、カケルくんの婚約者たち、みんな綺麗だな……しかも、全員ボクの魅力がまったく通じないとかどうなってんの? え? 妖精巫女さまもお嫁さん? え? フェリスも? そうか……って聞いてないよ!? え? これから話すところ? そうだったね。じゃあ話を聞くよ。
英雄殿……いや、カケルくんが、何があったのか、懇切丁寧に説明してくれた。
うんうん、なるほど、そんな馬鹿なって内容だったけど、信じるほかないよね。当事者全員この場にいるんだし。でもカケルくん、マジ尊敬。同じ男として、負けてられないね!
「ねぇカケルくん」
「なんでしょうか義父上?」
「義父上じゃなくて、パパって呼んで?」
「……なんでしょうかパパ?」
ぐふっ!? た、たまらん!
「……よく聞こえなかったんだけど?」
「なんでしょうかパパ?」
「なんでもな〜い♪」
「…………パパ?」
うはあ!? 死ぬ、死んでしまう! カケルくんめっちゃ可愛いんだけど!!
何かフェリスを筆頭にすごいジト目で見ているけど、気にしたら負けだよね! ボク王様だし。
その後、簡単な自己紹介が続いて、いよいよアリエスの番だ。
ああ……もう我慢できない。いいよね? そろそろいいよね?
「アリエスううううううううう!!」
愛しの我が妹に抱きつく。100年以上振りの再会だ。完全に妹成分が枯渇していたんだ。存分に補充しなければ。頬ずりをして妹の匂いを堪能する。ああ……このまま妹に包まれたまま死にたい。
「ち、ちょっと、お兄様、恥ずかしいです……」
妹が赤い顔で照れているが、気にしている場合ではない。重要なことに気付いてしまった。
カケルくんは、フェリスの夫であると同時に妹アリエスの夫でもある。つまり、ボクの息子であり弟でもあるんだ。
「カケルくん」
「なんでしょうかパパ?」
「これからは、パパ兄さまと呼んで?」
「…………わかりました、パパ兄さま」
パパ兄さまキタああああああ!?
***
「コホン、取り乱したりして悪かったね……」
アリエスを膝に乗せたまま話を続ける。
「バロール殿、状況は理解したよ。我々としても争いは好まないし、これからは仲良くしようね」
『フェリル殿、かたじけない。よろしく頼む』
がっしりと握手を交わす。早く終わらせて妹を愛でたいなんて、少ししか思っていないからね。面倒事は英雄と勇者に任せればいいやとかそんなには思ってないよ?
「エリック、事情はわかったけれど、惚れ薬欲しさに盗みを働いた罪は免れない。公爵家の身分剥奪の上、国外追放処分とするよ」
「はっ、寛大な処分、感謝いたします……」
うーん、エリックは悪い子ではないんだよな。
「ねえ、エリック、世界は広い、フェリス以外にも素敵な女性は沢山いるよ。勇者学院でそのことを学んでくると良い。頑張ってね」
「へ、陛下……あ、ありがとうございます……」
泣き崩れるエリックだけど、まあ色々計算もある。フェリスの被害者みたいなものだし、ボクも配慮が足りない部分もあったかもしれない。
さて、そろそろ今回の本題に入ろうかな。
「ハクシ、ハクア、リーニャが待ってる。一緒に来てくれるね?」
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