異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収集つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~

ひだまりのねこ

生きて償え


 俺がひきこもってからどれくらい時間がたったであろうか?

 どうせ神界でいくら過ごしても時間の経過はほとんどないのだ。この機会に傷心を癒すことにしようと思う。たかがラッキースケベぐらいで何を大げさなと思うかもしれないが、なめてはいけない。

 たとえば同じエロい番組を見るとした場合、知っていて見る場合と、偶然つけたらたまたまやっていたのでは、感動の度合いが違う。すごく得した気分になる。

 それにだ、何といっても、ラッキースケベは無罪だ。わざとじゃないのだから、当たり前だ。となれば、世界中にチャンスが転がっていることになる。しかも生涯ずっとだ。それはとても素晴らしいことだと思うんだ。

 だが、よく考えてみれば、カンストしているわけだから、落ち込む必要はないのではないか? ラッキースケベ遭遇率でいえば、俺は人類最高ということなのだから。

 それでもあまり実感できないのは、俺の魅力値が高すぎて、おそらくラッキースケベの定義がおかしくなっているからだろうな。簡単に婚約者と出会うのだって立派なラッキースケベだろうし、実際スケベに関しても十二分以上になっている。やはり気の持ちようということか。


『んふふ、カケルくん、良いこと教えてあげよっか?』

 そんな俺の心を知ってか、イリゼ様がにやりと笑う。

「ぜひ、教えてください――――うわっ!?」

 慌てて駆け寄ったせいで躓いた俺は、そのままイリゼ様の柔らかいふくらみにタッチしてしまい、さらに勢い余ってそのままスカートの中に顔を突っ込んでしまう。

『いやああん、カケルくんのスケベ!! バカあああ!!』

 イリゼ様とて、ハプニングには弱い、顔を真っ赤にして叫ぶ。こ、これは……まさしくラッキースケベではないか?

『もうっ、説明しようと思ったそばからなんなのよ……あのね、確かに数値上はカンストしているんだけど、神界では実質制限がなくなるから、ちゃんと効果はあったのよ。だ・か・ら、泥団子は無駄じゃなかったってこと』

 マジか……地上では実感できなくても、神界では10倍になっているというわけか……ふふふ。

「イリゼ様、ありがとうございました。俺、そろそろ戻ります」

 帰ろうとする俺の両肩をがしっと掴む創造神。

『カケルくん、あんなことしておいて、サヨナラはないわよね? 10倍になっているかたっぷり確認しないとね』

 たしかに何事も数値がすべてではない。使いこなさなければ意味がないのだ。

 このあとイリゼ様とめちゃくちゃ修行してから異空間に戻ってきた。たぶん、またレベル500ぐらい上がったと思う。


***


「というわけで、フェリスとパルメだ。こっちがバロールとエリックだ。みんな宜しく頼む」

『ま、まさか……伝説の邪王とは恐ろしいでしゅ……』

 ガタガタ震えるリッタ。

『……バロール、どんな理由があったとしても、貴方のやったことは消えない』 
『……バロール、たとえ操られていたのだとしても、許されない』 

 ルクスとラクスは、実際にバロールと戦い、多くの仲間を殺されたんだ。俺たちが口を挟むべきではないよな。

『……分かっている。この命、英雄さまに償うために与えられたもの。到底釣り合わぬだろうが、好きにしてくれ……』

 土下座をするバロールだが、許しを乞うているのではない。自ら首を差し出しているのだ。

『ふん……今更そんな汚い首をもらったところで意味はない。せいぜい英雄に尽くせ』
『英雄が生きて償えと言うなら、そうすれば良い。これ以上の争いは望まぬ』

『かたじけない……このバロール、生涯妖精と巨人族の友好のために働くと誓おう……』

 土下座の姿勢のまま、地面を濡らすバロール。

 ルクス、ラクス……ありがとう。悪いな、俺の傲慢に付き合ってくれて。

『ふぇっ!? えへへ……英雄の手は温かい』
『ふぇっ!? ふふふ……英雄の手はいやらしい……ひいぅ!?』

 ルクスとラクスを抱きしめて頭を撫でる。ルクスが失礼なことを言うので、本当にいやらしいことをする。


「ま、まさか妖精巫女さままでお嫁さんとは……」

 目の前の光景が信じられない様子のパルメ。妖精巫女はいわば聖女だもんな。

「それより、リッタ、ごめんなさいね。手紙を押し付けるようなことをして……」

 頭を下げるフェリス。

『気にしていないのでしゅ、フェリスお姉さま。おかげでベルトナーと出逢えましたでしゅから』
「ふふっ、惚気けてくれるじゃない?」

 いくぶん呆れながらも、嬉しそうに笑うフェリス。危なっかしい妹をいつも気にかけていたらしい。手紙を頼んだのも、本当はそんな気遣いもあったのだろう。


「……リッタ。ありがとう……」

 感動で人目もはばからず涙するベルトナーがリッタをひしと抱きしめる。

『こ、こら、やめるでしゅ変態ベルトナー! 濡れるから泣くんじゃないでしゅ』 

 良い人と出逢えて幸せだな……ベルトナーくん。

「まったく……泣かせないでよね。ベルトナーのくせに……」
 感動的な抱擁に美琴も思わずもらい泣きしてしまう。

「おおっ!? とうとう美琴たんがデレた!!」

「はあああああ!? 調子に乗るな! うえーん先輩!! ベルトナーがキモいよぉ〜」
 
 逃げるように俺に抱きつく美琴。うん、これはベルトナーくんが悪い。

「大丈夫か美琴? 俺がベルトナーくんの毒を吸い出してやる」
「えへへ、んん……幸せ〜。先輩まだ少し残ってるかも……?」

 おねだりする美琴にもう一度キス……いや解毒を行うが、これは悪手だった。
 
「旦那様、私もベルトナーの毒が……」 
「御主兄様、ベルトナーが臭いです……」
「王子さま、ベルトナーの種が私の大事なところに……」
『カケルさま、私はベルトナーの脳内で酷い目に……』
「カケルさま、ベルトナーが弱いです!」
 
 途中から単なる悪口になっているような気もするが、ベルトナーくんの自業自得だろう。

 結局、全員の解毒をする羽目になったじゃないか! まったく……ありがとうベルトナーくん。

「あ、あんまりだ!! 助けてリッタ!」 
『よしよし、みんなベルトナーが悪い』
「慰められている気がしない!?」

「ハハハ、仲良きことは美しきかな。ところで早くリーニャに会いたいんだが?」 

 ……そうだった。ごめんなさい義父上。


 みんな揃ったところで、リーニャさんに会うため、妖精宮へ向かう。

 母との対面に不安そうなハクアの肩をそっと抱くカケルであった。
 

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