異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収集つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~

ひだまりのねこ

全部盛りは天国の味


「英雄さま、ぜひ私から!」
「いいえ、おでこ殿下、先に言ったのは私です。それに毒見は臣下の務めなれば」

 我先にと言い争う可愛いわんちゃん……いや、美少女たち。

 ふふっ、俺をそこらへんにいる英雄と一緒にしてもらっては困るな。何といっても、俺には神級スキル『並行動作』がある。使い方を間違っているような気もするが、今更だ。

「安心しろ、二人同時に味わってもらおうか、俺の全部盛りをな!」
「「ふえっ!? ど、同時?」」


「……なんか料理の話みたいになっとる」
「美琴さま、私も全部盛り、食べてみたいです!!」
「わ、私も!」

 無邪気に盛り上がるアリエスとノスタルジアに苦笑いの美琴。

 これはアレだな。今後全部盛りがはやりそうな気がしてきたよ。俺の婚約者界で。

「とりあえず、場所を移すぞ」

 二人を連れて、いつもの異空間に移動する。

 なんか連れ込み部屋みたいになってるけど、健全な使い方しかしていないので許して欲しい。誰に許しをこうているのかわからないが。


***


「こ、ここは?」

 英雄さまに連れてこられた場所は、見たこともない素敵な家具やインテリアが飾られた品のあるお部屋。どれをとっても、物の価値がわかる私にとっては、国宝級の価値があるであろうことは一目瞭然。思わず手足が震えてしまいます。

「俺の創り出した異空間だ。外の世界とは時間の流れが違うから、ゆっくりしていってくれ」
  
 異空間? その言葉だけで、英雄さまの規格外さがわかります。

 ノルン殿下はまるでわかっておられませんが、私にはわかるのです。あまりに桁違いすぎて差がわからないことがわかるのです。魔力の上限が見えない。スキルの数も多すぎてわからない。

 
 思えば生まれてからずっと、わからないことなんてなかった。出来ないことだって、ちょっと練習すればすぐにできるようになった。最初は嬉しかったし、楽しかったけれど、その分私は孤独になった。世界が退屈に思えてきた。

 結婚すれば何かが変わるかもしれないと思っていたけれど、話があう相手が見つからない。同じ世界を見れる人がいなかった。

 私に宿るこの『才色兼備』を恨んだこともあった。私から努力する喜びや、達成感という成長する実感を奪ってしまったのだから。  

 でも、今はスキルに感謝している。殿下を守ることが出来るし、英雄さまのほんのわずかだけれど、その力の一端を窺い知ることができるのだから。

 わからないことがこんなに嬉しいなんて知らなかった。あの優しいまなざしだけで天国へ登れそうなぐらい舞い上がってしまう自分に驚く。

 初めて殿方に抱く感情……これがきっと『恋』なのだろう。才色兼備の私が、唯一学べなかったもの。

 胸が苦しくて、顔が赤い。鼓動は早鐘のようだし、いやだ……汗が止まらない。とても普通ではいられません。

「じゃあ、そろそろ全部盛り、味わってもらうか」
「ひぅ!?」

 ここに来て、私は少し前の私をひっぱたきたくなる。事の重大さに気づいてしまう。

 何もしていないのに、こんな有様の私が全部盛り? 駄目だ……控えめに言って死ねる。微塵も耐えられる気がしない。罰だ、殿下をおでこ姫とか言った私に対する罰だろう。冷静に考えれば、おでこ一択だったはずなのに、あの時の私はどうかしていたんだ。

 くっ、今からでも変更を――――

 えっ、何で? 体がいうことを聞かない……まさか、私の魂が全部盛りを望んでいると言うの? ふふっ、そうね。自分に嘘はつけない。私はもうとっくに止まれない。心と身体が英雄さまを受け入れたがっている……ふわっ!? そ、それは……ちょ、ちょっと破廉恥な言い方でしたね。

 ま、まあ、よく考えてみれば、たかだか情報を渡すだけの簡単な作業じゃないですか。ちょこっと濃厚に触れるだけ……うはああ!? は、恥ずかしい……やっぱり無理かもしれません。



「それで、濃厚接触のレベルなんだが、初級、中級、上級、あと、あまりおすすめはしないけど、聖級も一応ある」

「……聖級でお願いします」

 うおおおおおおおおおい!? 何言ってんの私、そんなの死ぬって、死にたいの? 馬鹿? 馬鹿なの? 

「じゃ、じゃあ、私も聖級でお願いします!」

 だ、だめええええええええ!? 殿下が死んじゃう! 私のせいでえええええ!

「わかった、二人とも全部盛り『聖級』だな。気をしっかり持てよ?」

 そういってから、英雄さまの体が8人に増えた。え? なにこれ……

「これは『分裂』っていうスキルだ。全員本物の俺だから安心してくれ」

 安心できる要素がゼロな件……

 それぞれ4人の英雄さまが、私のおでこ、口、鼻、耳、私の敏感な部分を同時に濃厚接触するらしい。しかも聖級。いや聖級がどれほどのものか知らないけれど、ヤバいことはわかる。ああ、これは死んだ。間違いなく。

 うはあああああああああああああ!?

 理性は一秒も持たずに崩壊した。それでもすぐに意識を手放さなかったのは、この状況を少しでも長く味わいたいという命がけの執念のなせる技。そしてスキルの力であっただろう。

 おそらくは数秒。でも私には永遠にも等しい最高のひと時だった。

 もう思い残すことなど何もない。

 頭部を英雄さまに包まれながら、私は清々しい気持ちで意識を手放した。

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