異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収集つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~

ひだまりのねこ

クー・シー? かわいい犬の妖精です


「大丈夫か? 俺はカケル、異世界から来た英雄だ」 

 悪漢に絡まれている女性二人組。助けに入って驚いた。

 灰色と亜麻色の地髪に、メッシュのように所々混じる黒髪。だが、髪色よりも俺の視線を釘付けにしたのは、その大きく垂れた耳。ただの耳じゃない、犬耳だ。

 獣人か? いや、でも……種族は、クー・シー? ああ、犬の妖精か! 

 犬獣人より若干犬度が高く、獣人が耳と尻尾だけとすれば、クー・シーは、身体も半分モフだ。ベルトナーくん、これは事件だ。俺のハートを盗んだ窃盗事件の匂いがする。


「あ、あの……た、助けていただきありがとうございます。私は、ノルン、ノルン=ショタランドと申します。こちらが侍女のキラです」

 二人のうちの背が低い方の女性が慌てたように自己紹介する。くりくりっとした大きな目が可愛くて庇護欲をそそられる。

「き、キラでしゅ、あうっ、キラです。あわわわ……」

 もう一人のキラさんは、クール系美人さんだ。なぜか動揺しまくっているが、見た目とのギャップがたまらない。

「なるほど、ショタランド連合王国の王女さまでしたか」
「ふえっ!? な、なぜそれを……」

 バイキン族を率いていたヌー伯爵の話で知っているだけだが、たしか、すでに占領されているはずだったな。可哀想に。

「ノルン王女、キラさん、国が占領されて、二人きりでさぞ辛かっただろう。よく頑張ったな」

 王女と侍女がこんな異国で二人きり、見たところ、服もボロボロで着の身着のままで逃げたのだろう。どうやってここまで辿り着いたかはわからないが、とても放っておくことなどできない。

「あ、ああ……み、皆が命がけで私を逃がしてくれたのです……私なんかを助けるために……」

 ずっと抑えてきた感情が爆発したのだろう。みるみる大粒の涙が頬を伝い零れ落ちてゆく。

「ノルン王女……そのおかげで俺に会えた。みんなの頑張りが奇跡を生んだんだ。大丈夫、必ず国は取り戻してやる。捕まっている人たちも全員助ける。心配するな」
「うわああーん! 英雄しゃまああ……」

 泣き崩れるノルンとキラを優しく抱きしめる。

 もう大丈夫だと、安心してもらいたいから。せめて泣き止むまではそのままで。

 俺は背中ポンポンしながら、超高等技術『ナチュラルモフ』を発動する。相手にモフされていることを気取られないという、聖級難度のモフだ。対象と密着していることが発動条件のため、使う機会は少ないけれども。


「くっ、よりにもよって犬!? 御主兄様の愛犬はこのクロエだというのに……」

 またもや現れたライバルに歯ぎしりするクロエ。

『ふふっ、さっさと貴女が助けてしまえば良かったのですよ、クロエ』
「しかし、御主兄様のチャンスを奪うなど私には出来ませんから……」

 呆れるヒルデガルドだが、クロエにとっては、自分の感情より優先するものが存在する。ここは専用妹メイドとして譲れない一線なのだ。

『ふふっ、わかっています。貴女はとても優しくて素晴らしい忠犬ですものね』
「ヒルデガルド……嬉しいんですけど、やっぱりそこは狼で!」 

「なあ、ベルトナー殿、婿殿はいつもこんな感じなのかな?」
「えっと、まあカケルくんにしては大人しいほうですかね……ははっ……」

 楽しそうなハクシと諦め顔のベルトナーであった。


***


「なるほど、ショタランドが襲われたのは3日前か……」 

 ぎりぎり間に合うか。すでに本国に移送されていれば厄介だが、ホワイティア攻略作戦中に、そこまで移送に戦力を割くことはないはず……だったら。

「じゃあ、ちょっとショタランドを助けてくるから、場所を確認させてくれ。頭部の濃厚接触が必要なんだが、どちらか協力してくれないか?」

 最近は、お尻の濃厚接触でも可能だが、初対面の女の子にそんなことをしたら変態確定だからな。初対面じゃなくても駄目なものは駄目だけどね。

「わ、わかりました。ここは国を代表して王女であるこの私が協力させていただきます」
「いいえ、殿下、ここは侍女である私にお任せください。未婚の王女が殿方と濃厚接触などとんでもないことです」
「ぐぬぬ……ですが、恩人に対してそれでは筋が通りません。それに、英雄さまはノーカンですから問題ありませんからね!」

 正論をもって諭すキラに対して、王女も負けじと言い返す。そうか、俺はノーカンだったな。美琴が私も私も! とか騒いでいるが、見ないようにしよう。

「仕方がない、二人に協力お願いしようかな。おでこ、鼻、口、耳、どこが良い?」

 正直どこでも大丈夫なんだけど、俺の趣味が100%入った結果、このようになっております。

「わ、私は、お、おでこで……」

 真っ赤になってしまう可愛いノルン。わかった、おでこな。

「わ、私は、ぜ、全部盛りでお願いしましゅ……あうっ、お願いします」

 な、なんだと!? まさか伝説の全部盛りの注文が入るとは……!?

 もちろん理論上は可能だ。そういった可能性を考えなかったかと言われれば、首を振らざるを得ない。 
 だが、これまで幾多の婚約者や召喚獣たちの誰一人として、そのことに気付いたものはいなかったのだ。このキラという侍女、只者ではないと思ってはいたが……

「は? はあああああああ!? き、キラ、貴女、何考えているのよ!?」
「ふふっ、別にルール違反ではないですけれど? おでこ姫さまには刺激が強すぎかもしれませんが……」
「くっ、なんか悔しい……え、英雄さま、わ、私もぜ、全部盛りで!!」

 対抗意識むき出しで全部盛りをオーダーする王女。

「俺は構わないが、おそらく最後まで持たないと思うぞ? 大丈夫か?」
「私はこれでも誇り高き王女です。民のため、祖国のため、受けて立ちます!!」

 
 やれやれ、もはや、言っても無駄のようだな。

 脳内で、全部盛りの順番をシミュレーションするカケルであった。  

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