異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収集つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~

ひだまりのねこ

それなら愛してやってくれ


「ところでリッタ、妖精王からの手紙っていうのは、ホワイティアのハクシさんへ届ければいいんだよな?」
『はい、そうでしゅ、英雄しゃま』

 うーむ、いまだに身体と頭部のどちらに話しかけるべきか分からない。リッタによると、どちらでも良いみたいなんだけど、なんかモヤモヤするな。

 先ほどからリッタが離れてくれないので、ベルトナーくんの視線が痛い。

 ミヅハによると、どうやら俺の神力は、妖精にとっては極上のエネルギーらしく、カブトムシに樹液状態になるのも仕方がないんだとか。ベルトナーくんには悪いけど、そういうものだと割り切ってもらうしかないね。


 それにしても、わざわざこのタイミングで手紙か……元気にやってる? みたいな内容なら良いんだけどな。

「リッタは手紙の内容を知っているのか?」
『全然知らないでしゅ!』

 そりゃそうだな。手紙には封印が施されているみたいだし、本人しか読めないみたいだ。

「あの、英雄殿、その手紙、早く届けないとまずいですよ?」
「ん? どういう意味だアリエス」

 昨夜、ケルトニアに行くことを話したら、珍しく連れて行って欲しいとせがまれて連れてきたんだけど、よく考えたら、聖女になる前のアリエスは妖精族の王女だったんだよな。何か関係があるのだろうか? 

「いや、それで関係なかったら逆にびっくりだよ先輩!」
「……せやな」

「その手紙の封印ですが、時限式になっておりますので、配達期限が切れたら読めなくなります」
「そうなのか、リッタ?」
『……いろいろあって、すっかり忘れていたでしゅ……マズイでしゅ……』

 顔面蒼白っぽいリアクションのリッタ。頭部をみると、確かに青くなっている。実に面白い。

「それで? あとどれぐらい時間が残っているんだ?」
『それが……あと10分でしゅ……うわあああああ!?』

「リッタちゃん、それ無理ゲーなんだけど?」

 美琴の言う通り、確かに残り10分ではな。

「心配するな、リッタ! 大丈夫、絶対何とかして見せる……カケルくんが!」
『ベルトナー……ありがとうでしゅ……大好きでしゅ……』

 抱き合うリッタとベルトナーくん。

 良かったやっと離れてくれたみたいだし。カッコよかったぞベルトナーくん。

 あとは、俺が何とかすればいいんだからな。大丈夫、俺はチートだ。

「リッタ、手紙を貸してくれ」
『それが……手紙が私から離れないのでしゅ……』

 マジか……仕方ないな、せっかく離れてくれたんだけど、やむを得ん。

「リッタ、来い!」
『はい、英雄しゃま!』

 彼女の頭部が笑顔の花を咲かせて、再び身体が抱き着いてくる。

 ベルトナーくん、そんなこの世の終わりみたいな顔をしないでくれ。転移するんだから仕方ないだろ。

「じゃあ、一旦、手紙届けてから戻ってくるよ。みんなは、クロドラに乗って先に出発してくれて構わないからな」

 俺は、リッタを抱いて、ホワイティアへと転移した。


***


「どうだ、ハクア? この恰好でおかしくないかな?」

 昨日からずっとこんな調子だ……久し振りに母に逢えるからはしゃいでいるのだろうが、こちらはもういい加減うんざりしている。最初こそ、微笑ましかったのだが。

 私も忙しいのです! 英雄殿と一緒にお出かけなんですから、全力でおめかししなければならないのです。正直、父上に構っているひまなどないのです。

 女性の私から見ても見惚れてしまう婚約者の方々の中に入ってゆくのですから、手は抜けません。

「どうですか、ルルさま? この恰好でおかしくないですか?」

『……お前たち、間違いなく親子だな』

 うんざりしながら逃げ回るルルさま。
   
 
「二人ともよく似合ってますよ」
「「うひゃあ!?」」

 突然現れた人物に腰を抜かすハクシとハクア。

「え、英雄殿! お、お逢いしたかった……きゃああああああああ!?」

 俺が抱きかかえている首なしの女性に悲鳴を上げるハクア。うん、初見はビビるよな。


 時間が無いので、とりあえずハクシに手紙を渡す。残り時間1分、ぎりぎりだったな。

「ところで、もし間に合わなかったらどうなっていたんだ?」
『手紙は燃えて灰になるのでしゅ』

 おおっ、なんかカッコイイじゃないか。

『英雄しゃま、本当にありがとうでしゅ……大火傷するところだったでしゅ』

 ああ……そうだな、うん、それは熱そうだ。無事で良かったよ。

『そ、それででしゅね……何もお礼ができないので、わ、私を好きにしてくだしゃい!!』

 ああ……そうだな、うん、そうさせてもらおう……って、それは駄目ええええ!?

「リッタ、気持ちだけもらっておこう」
『ベルトナーのこと気にしてるんでしゅか? 大丈夫でしゅ、英雄はノーカンでしゅから! それにミヅハさまも、お兄様はノーカンっていってましたでしゅ』  

 そんな素晴らしいノーカン説が浸透していたのか……素晴らしきかな異世界。

「それでも駄目だリッタ。ベルトナーは俺と同じ異世界の価値観を持っている。俺は変態だが、友だちが悲しむようなことはしたくないんだ。ごめんな」
『え、英雄しゃま……分かりました。でも、妖精の誇りにかけて、貰いっぱなし、助けてもらうだけというわけにはまいりましぇん!』

 その気持ちはよくわかる。俺だってそんなの居心地が悪いもんな。

「だったら、ベルトナーをこれからもずっと愛してやってくれ、幸せにしてやってくれ。俺には出来ないことだから……頼んでいいかな?」
『……はい……はい、任せてくだしゃい。それなら私にも出来るから、絶対に幸せにして見せましゅから……』

 頭はないけど、表情はわからないけど、確かにリッタは笑顔だった。少なくとも俺はそう思ったんだ。

 ……ところで頭部何処行った?

「ルルさま、それはおもちゃじゃありません! お客様の頭ですから~!」

 ハクアの悲鳴が聞こえてくる。

 リッタの頭部大ピンチ!!

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