異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収集つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~
キャメロニアの夜
深夜、キャメロニアの王宮にあてがわれた寝室に戻る。もちろん、分裂体たちは、それぞれの寝室で寝ている……いや、ほとんどがまだ絶賛活動中だが……。起きた時に隣にいなかったら可哀想だもんな。
(……さすがにみんなもう寝ているかな)
そう思っていたのだが、ベッドに入るなり、後ろからやわらかい感触に包まれる。
「んふふ~、お帰りなさい、先輩……」
美琴が眠そうに目をこすりながら首筋にキスをしてくる。耳をくすぐる甘い息に背筋がぞくぞくしてしまう。
「何か変わったことはなかったか?」
「先輩と一緒にいると変わったことしか起きてないから今更でしょ?」
「……それもそうだな」
むしろ何もないほうが事件だなと納得するしかない。それよりも背後から繰り出される勇者の容赦ない攻撃に対して無防備な背中を晒しているほうが、何倍も危険だ。
「ベルトナーにお嫁さんができたぞ、旦那様」
前から抱き着いてくるのはセレスティーナ。普段硬い甲冑を身に着けている彼女が柔らかいのは夜の間だけだ。そんな貴重なヤワラカティーナに顔を埋めながら堪能する。おそらく彼女の先祖にはわらびもちがいるに違いない。そうでなければ、この鍛え上げられた肉体がこんなに柔らかい説明がつかないではないか。
「うはっ!? 旦那様……くすぐったいです」
「ベルトナーにお嫁さんだと!?」
セレスティーナの柔らかさに溺れていたせいで、緊急事態を理解するのに一瞬遅れてしまった。邪神が現れたのと同じ程度の衝撃を受けている俺は、彼に謝るべきだろうか?
「ふふっ、今頃熱い戦いの最中に違いない……カケル殿、私もすっかり戦闘準備完了しています」
とろんとした目で両足を絡ませてくるのはもちろんミヤビだ。同志であるベルトナーくんが必死で戦っているというのに、ここで俺が逃げるわけにはいかない。彼女は生粋の戦闘狂、失神するまでは決して止まらない生まれついての戦闘民族、ファイターなのだから。
「お相手のリッタさまは、とても可愛らしくて素敵な方でしたよナイトさま」
空いている場所がそこしかないとはいえ、箱入りお姫様のノスタルジアが鎮座するのは、まさに俺の急所に他ならない。純真ゆえの行動に対し、俺は一体どんな反応をすればいいのか逡巡する。いや、よそう。考えてはだめだ、感じろ、頭を空っぽにして、あるがままを受け入れ開放するのだ。
「ふわあ……ナイトさまを強く感じます。熱いですわ……」
「……可愛いだと!?」
ノスタルジアの純真に浸っていたせいで、お相手の情報に遅れて反応してしまう。
いや、別に何も不思議なことじゃない。ベルトナーくんは、それなりに格好いいし、変態だけど根は優しいところあるし、むしろ、俺の傍にいることで、出会いの邪魔をしてしまっているんじゃないかって申し訳なく思っていたぐらいだ。こんな嬉しいことはない。だが、彼は変態だ。全力で自分を棚に上げて言うが、変態だ。心配してしまうのも許してほしい。
「大丈夫ですよ、御主兄様、リッタさんからは、ベルトナーさんへの好意的な匂いを強く感じましたから」
ほほう、俺がクロエをどれほど好意的に思っているか、ぜひ嗅ぎ取ってもらおうか。一心不乱にモフりながら妹メイドへの想いをぶつける。
「はううう……お、おかしく……なっちゃいましゅ……私も大しゅきでしゅ、御主兄様」
奇遇だなクロエ、俺もこの天国的な状況におかしくなりそうだぞ。
『なんでも、彼女は妖精王からの手紙を預かってきたそうですよ。個性的ですが、純粋な妖精さんでした』
わかっているさ、ヒルデガルド。もう場所がないんだよな? 全然かまわないよ、俺の顔の上に座っても全然かまわない。むしろありがとうって言いたいくらいだ。全く呼吸が出来ないが、俺にとってはなんら問題にはならないからな。
(そうか、お相手は妖精なのか、やるなあベルトナーくん!!)
『ひぃうぅ!? か、カケルさま、その状態でしゃべらないでください……』
(ヒルデガルド、悪いけどお尻から情報をもらうぞ?)
『へ!? か、カケルさま? 今なんと……うはあああ!?』
最近熟練度があがったせいで、情報伝達に関して頭部の接触でなくても可能になっているのだ。まあ、だからといって、普段はこんな濃厚接触は出来ないけどな。
な、なるほど……デュラハンか……またずいぶん個性的な……まあベルトナーくんらしいかもな。
『分裂!!』
待たせてしまったから、その分埋め合わせのサービスしないとな。
キャメロニアの夜はまだ終わらない。いや、始まったばかりなのだから。
***
「ねえお姉ちゃん……まだ起きてる?」
「もちろんよヴァニラ、今夜は興奮して眠れそうにないかもね」
「ふふふ……私も、マーリンお姉ちゃん大好き! でも、良かったの? 英雄さまと一緒に寝たかったんじゃないの?」
「ふえっ!? ななな何言ってるの、だだダンナさまとは……明日からね? もちろんヴァニラも一緒だからね!」
「ひぅ!? ななな、何で私も一緒なのよ!?」
「だって……できるだけ一緒に居たいし……」
「お、お姉ちゃん……分かったよ、ずっと一緒だからね!」
こちらの夜もまだまだ終わらない、ひとつのベッドの中、一晩中語り明かす姉妹であった。
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