異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収集つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~

ひだまりのねこ

まな板祭と大地の恵み


「ところで婿殿はまな板祭というものをご存知かな?」

 ま、まな板祭!? 唐突に放たれたパワーワードに圧倒されて、しばし沈黙を強いられる俺。

「い、いえ、存じ上げませんが……」

 それを聞いてニヤリと口角を上げる義父上。

「年に一度、豊穣を願って執り行われる神事だ。国中から独身の若い娘たちが集まって、微乳を競い合う祭りでな、優勝者には「微の化身」としての名誉と地位が保証されるのだ。王族や貴族に見初められて、玉の輿になる娘も多く、参加者は年々増すばかりなのだ」
「義父上、それがし、ぜひ見聞を広めたく、以前より各地の神事に興味がありまして……」

 国が祭司長として、五穀豊穣を女神に祈る。そして多くの国民がその素朴で尊い原初の祈りに共感し、ともに祭りを祝う。素晴らしいじゃないか。それこそ国のあるべき形、俺の理想とする国の姿だ。

「それがな……すまん、先日終わったばかりなのだ。また来年、必ず招待すると約束しよう」

 ……もしもし? イヴリース、数日程時間を戻したいんだが……え? そんな魔法はない? そういえばそうだったな……

「む、婿殿!? 大丈夫か? しっかりするんだ。いかん、脈が弱くなっている、くっ、私が余計なことを言ったばかりに……はっ!? そ、そうだ、婿殿、ラウラ祭なら、来月開催されるから! ホワイティア2大微乳祭りの一つだから!!」

「……本当ですか? 義父上」

「あ、ああ、ただ、こちらは神事ではあるものの、現在では美女を選ぶコンテスト的な性格が強いから、あまり興味はないかもしれないが……」
「義父上、いかなる先入観も持たない、それが英雄たる俺の姿勢です。物事に触れる前からこれは好きとか嫌いとか、役に立つとか立たないとか、くだらないとは思いませんか?」
「お、おおう。そ、そうだな、その通りだと思うぞ」
「ということで、ぜひ参加させていただきたく」

「そうか、では、婿殿には審査員をやってもらおうかな」
「義父上、それがし審査員スキルを持っておりますゆえ、全身全霊務めさせていただく所存です」

 ふふふ、まるで遠足を待ちわびる小学生のような気分だ。祭り当日まで指折り数えてしまうことになるだろうな。

「だがな……実は知っての通り、ホワイティアは歴史的な不作と干ばつで祭りが開催できるか微妙なところなんだ、期待させて申し訳ないのだが……」
「ふふっ、お任せください、義父上、俺の力をもってすれば、ホワイティアは豊穣の国となりましょう!」
「おおっ、実に頼もしい。だがそうなると祭りをやらなくてもよくなって……」
「義父上、それは違います。この大地を潤す水も、土も、太陽も、すべては女神イリゼ様の愛によるもの。感謝の気持ちを忘れた時、遠からず国も人の営みも潰えることになるでしょう。女神様は、いつでも俺たちを見守って下さっているのですから」

「む……これは私が間違っていたようだな。だが、ホワイティアの状況は深刻だ。英雄殿の力を疑うわけではないが、こればかりはな……」

 端整な彫りの深い顔を歪める義父上。これまで餓死者が出ていないのは、飢饉に備えて蓄えてきた穀物があったかららしい。本当に民のことを愛している有能な指導者なのだと思うよ。

 でも、たしかに食糧支援にも限界があるし、やはり大元を何とかしないと安心してお祭りを開催出来ないだろう。

 俺はもはや誰にも負けないぐらい強くなったけど、それだけだ。こんな時には、戦う力なんて役に立たない。だけど、俺には頼もしい仲間がいる。自分ひとりで解決する必要なんてどこにもないんだから。


「ふふっ、俺に策有りです義父上」


***


 一旦族長と別れて外へ出る。

「さて、まずは不作になっている原因を探らないとな。ミヅハ、モグタン、カステラいや、べステラ!」

『お任せ下さいお兄様』

 美しき有能の化身。俺の良き理解者ミヅハ。

『土の事なら任せろモグ!』

 何時になくやる気モードのモグタン。そして――――

『…………』
 
 ど、どうしたんだべステラ!? なんか元気がないじゃないか。慌ててその豊満なわがままボディを抱きしめる。主に慰めるために。

『主、これはきっと我のせいだ、すまぬ』


 べステラによると、ベヒーモスが目覚める際、周辺の大地の力を一時的に吸収するのだという。まるで深呼吸するかのように。

 目覚めた後、吸収した大地の力は、ベヒーモスの体内を循環して倍増された状態で再び還元されるので、トータルで見れば大きなプラスとなるのだが、人間にとって年単位の深呼吸はやはり長い。

「いいや、べステラのせいじゃない。誰も悪くなんてないじゃないか。それが世界の在りようなんだからな」
『主……ありがとう』

 べステラが抱きつくたびに、大地の恵みが、凄まじい破壊力で俺を圧迫してくるが、主として情けない姿は見せられない、涼しい顔で受け止める。ミヅハとモグタンの生暖かい視線も受け流す。

「じゃあ、とりあえずべステラが大地の力を還元すれば解決だな」

 元に戻るどころか、倍増するのだから、今後、不作は解消されることだろうし。


***


『では大地の力を還元する』 

 べステラが大地の力をホワイティアに還元してゆく。さらに――――

「ミヅハ、モグタン、頼む」

 ミヅハが水を、モグタンが土を。精霊の祝福を受けた土地は、豊作が約束されるという。

 大地が輝き、生命力に満ち溢れている。

『お兄様、素晴らしいです。精霊には人とは違った景色が見えるのですよ』 
『そうモグ……うっとりするほど綺麗モグ……』

 ああ、そうだな。俺は精霊じゃないけど、少しはわかる。でもな――――

「それでも、お前たちの方がずっと綺麗だよ」

 そんなクサイ台詞を言ってしまうのを許して欲しい。

『お、お兄様ったら……』 
『も、もギュッ!?』
『あ、あああ主……』

 真っ赤になって照れる精霊と大地の守護者を抱きしめる。

 俺は純粋で優しいお前たちが大好きだ。人とは違う価値観を持っているけど、それは同じ人間だって変わらない。みんな違っているから世界は面白く輝きに満ちているんだ。

 さあ、帰ろうか、みんなのところへ。

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