異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収集つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~
美しさは女神がかってます
(くそっ、一体どうなってやがる……)
女体化したはいいが、全員失神してしまったので、訳が分からない。最後まで意識を保っていたノスタルジアも、言語明瞭意味不明なことを叫んで寝ちまったしな。
仕方がない。とりあえず世界樹の実を食って元に戻ろう。話はそれからだ。
『ま、待ちなさいカケル子』
「痛だだだだだああああああ!?」
先ほど切り分けた実に手を伸ばすと、ものすごい力で手首を掴まれ、捩じ上げられる。
「み、ミコトさん!? 何をするんだ?」
『……それはこちらの台詞。何をするつもり? まさか、元に戻ろうとか考えてない?』
狂気じみた迫力で、はあはあ息を荒くして迫る死神。こ、怖えええ!?
「……うん」
ミコトさんを直視できず思わず目を逸らしてしまう。
『こっちをちゃんと見なさいカケル子!』
ガシッと両肩を掴まれ、正面から向き合う俺とミコトさん。仕方なく、彼女を見つめ返す。
『うはあああ!? きゃ、きゃわいい……だ、駄目……おかしくなっちゃう……』
瞳を輝かせてぷるぷる震えるミコトさん。なんか反応が新鮮だな……こんな姿見たことないよ。
『ふ、ふふふ、い、いいよね? か、カケル子とあんなことしたり……こんなことしても……ぐふっ!?』
なにやら妄想していたかと思ったら、突然鼻血を出して倒れるミコトさん。慌ててお姫様抱っこで抱き上げる。
「ミコトさん、大丈夫?」
『う、うう……うわあ!? ち、近い、柔らかい、甘い、うはあああああ!?』
一瞬意識を取り戻したミコトさんだけど、すぐにまた失神してしまった。
(……よくわからんが、このままでは不味いよな? やはり元に戻ろう)
今度こそ世界樹の実に手を伸ばす――――
あれ……ここは?
『ふ、ふふふ……や、やっと逢えたわね……カケル子! 間一髪セーフかしら?』
はあはあ言いながら、目が血走っているイリゼ様がにじり寄ってくる。
「あれ、イリゼ様、神殿も聖女も使わないでいきなり呼ぶなんて、緊急事態ですか?」
媒介しないで直接呼び寄せると、莫大な神力を消耗するらしい。だから、よほどの事態でないと使わないと以前イリゼ様が仰っていたはずだけど。
『いやあああ!? きゃ、きゃわいい声……ね、ねえ、カケル子……わ、私のこと好きって言ってくれない?』
「え? 今ですか? 別にいいですけど……大好きですイリゼ様」
『ぐはっ!? た、たまんなあああい!』
脳天を撃ち抜かれたようにふらふら寄りかかってくるイリゼ様を抱きとめる。
「だ、大丈夫ですか?」
『あわわわわわ!? だ、大丈夫じゃないでしゅ。うはあ、やわらかい、えへへ、何かぷにぷにしてる……』
幼児退行してすりすりと胸に顔を埋める創造神様。あれ……反応がない?
「い、イリゼ様!? だ、大丈夫ですか? しっかりしてください!」
必死に揺さぶり、声をかけ続ける。
『……はっ!? ご、ごめんなさい。ちょっと刺激が強すぎたみたい……ここが神界で良かったわ……ごふっ!?』
突然吐血してぐったりしているイリゼ様が何かを伝えようと口をパクパクしている。よく聞こえないので、口元に耳を寄せてみる。
『ご、ごめんね……美の化身なんて名乗ってごめんね……これからは、貴女が名乗りなさい……いいわね……』
いや、そんなこと言われても名乗りませんけど!? っていうかなんで死にそうになってるんです?
『……さ、最後にお願い……ぶ、分裂して……抱きしめて?』
よくわからないが、とりあえず4人に分裂して、前後左右から余すところなく抱きしめる。イリゼ様が一番好きなやつだ。
『ふにゃあああああああ!? 女神転生しちゃうううううう!?』
叫び声をあげて今度こそ本当に動かなくなるイリゼ様。え? あれ? これじゃあ帰れないじゃないか!
「キリハさん! 助けて!」
死神召喚でキリハさんを呼び出す。
『まったく、忙しいっていってる――――ぎゃああああああ!?』
出会い頭に瀕死の状態に陥るキリハさん。
「あの、地上に帰りたいんですけど?」
『くっ……きゃわいらしい声で馬鹿なこと言わないで……ごふっ!?』
「き、キリハさん!?」
『や、やめて、そのきゃわいい声で話しかけないで……く、クレハ……駄目ね、返事がない……まったくだらしないんだから……』
話しかけるなと言われても、どうすりゃいいんだよ?
『いい? ちゃんと聞きなさい……私自身に地上への時限式転送術式をかけたわ。10秒たったら……術式が起動するから……私に掴まれば地上に帰れるわ』
こちらを見ないようにして、話す彼女は今にも死にそうなほど弱っている。でも、なんでそんな面倒なことをするんだろう?
『……貴女に触られる衝撃におそらく私は耐えられない。安心しなさい、私がいなくても術式はちゃんと機能するから……』
き、キリハさん……そんなことをしたら、貴女は……
『ふふっ、今更ね。私はとっくに覚悟を決めているんだから……さあ、そろそろ術式が起動するわ。早くしなさい!』
泣くな、彼女の想いを無駄にするな。術式が発動し始めたキリハさんを抱きしめる。
『ふにゃあああああああ!? や、やわらかあああい……』
崩れ落ちるキリハさんの屍と共に、俺は地上への帰還を果たした。あまりにも大きすぎる代償を払って。
(あ……よく考えたら、リュックに世界樹の実、いっぱい入っているんだった……)
今更な事実に気付くが、もう遅い。
***
『まったく……あんたね! あんなに神力まき散らすとか頭おかしいんじゃないの!?』
顔を赤くしたキリハさんにめちゃくちゃ怒られる。どうも、女体化すると魅力方面に全振りされてしまうようで、次はちゃんとコントロールしなさいよ! と言い残して帰って行った。ええ……次!? またやるんですか?
結局、女体化事件(カケルノクライシス)は、数多くの犠牲者を生む結果となったが、一つだけ良いことがあった。ルーザー王子の巨乳好きが治ったのだ。厳密にいえば、美乳まで守備範囲が広がったらしい。誰のおかげかって? さあな、考えたくもないね。
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