異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収集つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~
キャメロニアへ出発
エメロードラグーンは、朝もとびきり美しい。
幻想的な夜もいいけれど、青い空、エメラルドグリーンの海。白い砂浜、たわわに実った南国フルーツと色とりどりに咲き誇る花々……朝だって決して負けていない。
あと、この国が素晴らしいのは、どこででも、ごろ寝出来ることだろう。陸地部分を構成するスポンジサンゴのおかげで、まるでクッションで寝ているような快適さ。うん、この国の人々はなんでダメ人間にならないのか不思議だ。
「英雄さま、また来週お待ちしておりますね」
まぶしい笑顔のシェラザードさま。
結局、俺は、王妃専任&王族特命担当大臣に任命された。
王族の有り余る欲求を慰め、解消するという重要な役職だ。僭越ながら、謹んでお受けすることにした。そのおかげで、後宮が廃止となり、その分、国民たちに資源が再分配されることとなれば、皆に喜んでもらえるからだ。ウィンウィンって素晴らしいよね。
すでに各国で役職についている俺だが、当面は分裂スキルもあることだし、なんとかなるだろう。優秀な秘書ならぬメイドが管理してくれるからな。
「さてと、じゃあ行くか。準備はいいか、ベルトナーくん?」
「……ええ、いつでもどうぞ。どうせ準備もくそもないんですから!!」
少々荒れ気味のベルトナーくん。どうやら、予想通り、お見合いパーティーは散々な結果に終わったらしい。
「まあ、そんなに落ち込まなくても、大陸に戻ればより取り見取りじゃないか」
「……マジですか!? 詳しく!!」
おお、さすが現金前向きがモットーのベルトナーくん、清々しいほどの立ち直りっぷりだな。
「まあ、自慢するわけでもないが、俺は各国の公爵位をもっていて、さらには英雄だ。そのワタノハラ家に仕える雑用係となれば、超優良物件で間違いない。ただでさえ、ワタノハラ家は男が少ないんだからなおさらだ」
「……いや、あの、他のすべての要素が、雑用係っていうワードのせいで、台無しになっているんですが、それは?」
「だってベルトナーくんが、自分で雑用係やりたいっていったんじゃないか……」
「くっ、たしかに言いましたけど、もうちょっと何とかならないんですかね? ほ、ほらサーヴァントとか格好良いし?」
「うーん、転生者である同じ日本人の君を召使い呼ばわりするのは気が引けるから駄目だな」
「ぐっ、有り難いし、嬉しいんだけど、そこは割り切ろうぜ、カケルくん……」
「諦めなよベルトナー、あんたにはお似合いだと思うよ?」
「……美琴たん。って痛だあああああああああ!?」
「だから美琴たん言うなああああああああ!?」
「……執事とかは?」
「失礼ながら、経験はおありですか?」
「……いいえ。無いですアイシャさん」
「見習い執事になるだけでも、10年は下積みの修業が必要です。無理かと」
「俺、結構魔法が得意だったりするんだけど、お抱え専属魔導士とか?」
「ベルトナーくん、私も魔法が得意なもうすぐS級冒険者の半魔族だけど、カケルくんちだと、私より上がゴロゴロいるわよ? 専属魔導士? その程度の腕前じゃ無理無理」
カタリナさんに釘を刺されて撃沈するベルトナーくん。
「ベルトナーさん、雑用係ってそんなに嫌ですか? 私たち黒猫獣人族にとっては、喉から手が出るほど欲しかった憧れの職業でしたよ?」
ミレイヌが黙っていられなかったようで、思わず口に出してしまう。
そうだよな。長いこと迫害されてきた黒猫獣人たちにとって、たしかに雑用係なんて立派で輝かしい仕事だったに違いない。
「み、ミレイヌさん……す、すいません、俺そんなつもりじゃ……」
「別に気にしてないわ。私は事実を言っただけだから」
「あ、ありがとうございます~って痛だあああああああああ!?」
「何どさくさに紛れてモフろうとしてるのよ、この変態!!」
ミレイヌにぶん殴られるベルトナーくん。ああ、そうか、キャメロニアには、獣人は奴隷しかいないんだったな。モフるのはマナー違反だから覚えておけよ。って手遅れだったか。
「ベルトナーくん……俺の配下には、毎日下水道や便所掃除だけをしている者たちもいる(罰としてやらせてるだけだけど)彼らは、自分の仕事に誇りをもって堂々と働いているぞ? (召喚魔人だからだけど)」
「か、カケルくん……俺が間違っていたよ。与えられた仕事すら満足にできず、誇りを持てない人間が、どうしてモテるんだってことだよな」
「……ようやく分かってくれたか。ある意味うらやましいよ。だって雑用なんて可能性の塊みたいじゃないか? 英雄なんて、堅っ苦しくて、好きなこともできやしないものだぞ?」
「た、たしかにその通りかもしれない。ありがとうカケルくん。俺、世界一の雑用係目指して頑張るよ!! 雑用係王に俺はなる!」
雑用係王か……ゴロ悪いな!?
しかし、全員の視線が痛い。わかってますよ、好きなことができないってところですよね? ええ、おっしゃるとおり、好きなことしかしてません。ごめんなさい。
***
キャメロニアには、すでにクロドラが先行して飛行中だ。
今回同行するのは、美琴、クロエ、ヒルデガルドのいつものメンバーに加えて、アルカリーゼ代表として王女ノスタルジアと護衛のミヤビ。アストレア代表として、セレスティーナ。現地ガイドとしてベルトナーくんといった構成だ。
ユスティティアとサクラも連れていくか迷ったが、ユスティティアにはダンジョンの仕事があるし、サクラには、念願だったナスの栽培と、このエメロードラグーンの果実の研究をお願いしているから、そちらに専念してもらいたい。
「じゃあ、そっちは頼んだぞ、カイ、エルゼ、ソニア、イレブン、アサシーン」
『は、お任せください』
彼らには、人身売買組織の調査を任せている。いつでも叩けるように、組織の全貌を丸裸にするのだ。個別に潰しても、また別のところから伸びてきてはキリがないからな。
全員が俺に抱き着き、ベルトナーくんは、ヒモを握る。飛行中のクロドラの背に転移するという荒業を行うのだ。
「カケルくん……なんで俺だけヒモ?」
「我慢するんだな、そういう仕様なんだ」
「いくぞ、転移!!」
『おお、来たな主よ。我は気力がみなぎっている故、このまま飛び続けて、女性しかいないという伝説の国へ飛んで行きたい気分だ』
「……悪いがキャメロニアへ行ってくれ、クロドラ」
くっそおおおお!? なんでいつも気になるワードをちょこちょこ出してくるんだ、この博識ドラゴン娘。めっちゃ気になるんですけど! この後、帰りに寄ってみようかなって思ってますけど!!
え? なんで、クロドラが到着するのを待ってから転移しないのかって? だって竜にまたがって乗り込んだほうが格好良いいだろ?
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