異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収集つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~
堕天使の涙
神界から戻って来たけど、当然のように全く時間が経過していない。少なくとも、1週間は居たはずなんだけどな。
邪神に関しては、神界に残してきた深海が、頑張って呼びかけているけど、世界間の時差があるので、向うが認識するまで、早くても1週間はかかるそうだ。
イソネ君にはキタカゼたちが付いているから安心だし、まだ決戦まで時間に余裕はある。
邪神と戦う以上、万一ということもあるし、先にこの世界でやるべきことは、最低限済ませておくつもりだ。邪神にどこかへ飛ばされるとか、テンプレ展開になるかもしれないし。
「義兄さま? 私を部屋に連れ込んでどうするおつもりなんですか?」
赤い顔で上目遣いするリリア。元々幼い容姿が更に若返って、もはや犯罪臭がしますよ?
……くっ、イリゼ様、なんでリリアの記憶消したんです? ありがとうございます。
「ふふっ、そんなこと決まってるだろう? お勉強の時間だ」
「もうっ……義兄さまのケダモノ♡」
たっぷり義妹に勉強を教えてあげた後、イリゼ様から貰った漆黒の剣を取り出し眺める。
(これが、神剣クロレキシノート……)
禍々しい輝きを放ち、見ているだけで精神が削られてしまう。
触れるもの全てを吸収してしまう邪神に、唯一ダメージを与えることが出来る剣だ。
正直ありがたい。邪神と戦うのにイソネ君のスキルに頼りっぱなしというのも、申し訳ないと思っていたからな。
『でも、無理したら駄目だよ?』
「うわあ!?」
突然の声にベッドから転がり落ちる。
『酷いなあ、そんなに驚かれると傷付くよ?』
「り、リエル……なのか?」
ベッドの上にちょこんと座るシルバーブロンドの幼女。身体こそ幼いが、ヴァイオレットの瞳には確かな知性が宿っている。
『うん……他の誰に見えるのかな? やっと逢えたね……カケル君』
リエルは、背中の翼を軽く動かしながら妖艶に微笑む。
「人化……出来たんだな」
『もうっ、前に言ったよね? スケッチブックスキル確認してって?』
リエルによると、スケッチブックスキルの『擬人化』を使って器を作ってもらうつもりだったらしい。ごめんなさい。色々忙しくて。
『でも、カケル君が神気を使えるようになったから、いつでも逢えるようになったんだよ』
「神気?」
『あれ? 気付いてなかったんだ。まあいいや、さぁ始めよう、もう我慢出来ない……』
にじりよるリエル。目が怖いんですけど!?
「くっ、無理だ。いくらオールラウンダーの俺でも、わずかにストライクゾーンを外れている」
『……なるほど、でも、わずかなんだね!? この……変態♡』
呆れつつも嬉しそうなリエル。くっ、褒めても何も出ないからな?
『大丈夫だよ。僕に魔力……いや、神気を注げば、その分成長するからさ』
何だって!? そんな都合の良い話が?
早速リエルに魔力を注いでみるが、なるほど、これが神気か……。似て非なるものだな。神気とは創造のエネルギーそのもの。人間たちが使っている魔力は、その力のほんの一端に過ぎないことが良く分かる。
『くっ、来た……はうあああああ……駄目……もっと優しく……そう、さすがだね』
最初は少し戸惑いがあったけど、神界で鍛えたおかげかすぐに調整できるようになった。
『……ねえ、カケル君、なんかあんまり変わっていないような……』
リエルが自分の身体を見てジト目してくる。失礼な、ちゃんと変わってますよ?
「だから、言ったじゃないか。わずかに外れてるって」
『ごめん……聞いた僕がバカだったよ……変態オールラウンダー君』 
呆れるリエルを抱きしめ押し倒す。
『んふふ……意外と積極的なんだね? ドキドキしちゃうよ……ってうわあああああ!? お、堕ちる……堕ちちゃうからあああああ!?』
『……あのさあ、速攻で堕天使になっちゃったんだけど、どうしてくれるのかな?』
え……? 堕天使ってそういう意味じゃないと思うんだけど!?
「何言ってるんだリエル? お楽しみはこれからだぞ」
『ふえっ!? それってどういう……』
「せっかく成長させられるんだから、1歳ずつ楽しませてもらう」
きっと今の俺は、さぞかし悪い笑顔をしているんだろう。戦慄するリエルの両翼をがっしり掴んで離さない。
『あの……カケル君? 僕、まだ受肉したばかりだから……ね?』
「大丈夫だ。ケルベロスで慣れてる」
『うえっ!? 僕は犬じゃない……あ、翼……弱いから駄目えええええええ!?』
一つだけ言わせてもらおう。深海……天使は取り込むものじゃないぞ。愛でるものだ。
『……カケルくん。深海がなんで神になる資格をはく奪されたか知ってるよね?』
「ああ、たしか迎えに来た天使を吸収したからだろ?」
『うん……それって誰のことだと思う?』
悔しさと悲しさが混じったような表情で俺を見つめるリエル。
「誰って……まさか、それって――――」
『そう、僕だよ。辛うじて魂だけは分離して逃げることが出来たけど、こんな身体じゃ天使としての役目も満足にできやしないからね。どこにも僕の居場所はなかったんだ』
「……リエル」
『だからね、ミコトさまが声をかけてくれた時は嬉しかったんだ。僕にも出来ることがあるんだって。こんな僕も存在していていいんだって思えたんだ』
リエルの頬を涙が伝う。天使の涙はとても綺麗だけど、俺は二度と見たくはない。
「大丈夫だリエル。俺が必ず邪神を滅ぼして、リエルの身体を取り戻してやる。だから……もう泣かなくて良い」
『……ありがとう。でも無理したら駄目だからね? 君は……僕の最後の希望なんだから』
「わかった……絶対無理はしない。約束するよ」
(ふふっ、それにね。もう僕は十分幸せだから、このままでもいいかもって思い始めてるんだよ)
「なあ……リエル」
『なんだい?』
「そんな天使の微笑みを見せられたら我慢が出来ないんだけど、そんな俺って邪神に近いかもな?」
我ながら呆れるほどの強い欲求。一体どこまで傲慢なんだよ俺は。
『ぷっ……あははは、それで良いんだよ? そんな君に僕はぞっこんなんだから。でも、邪神というより変態神の方が近いよ?』
呆れ半分、嬉しさ半分。
カケルに飛び込んでゆくリエルであった。
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