異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収集つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~

ひだまりのねこ

転生サキュバス 王宮へ


「……落ち着いて聞けよ。長らく空席だった少子化対策特命担当大臣の就任が発表された」

「そんな…………嘘でしょ……」


 曲りなりにも、ようやく軌道に乗ってきた異世界生活が音を立てて崩れていくような気がして、私は目の前が真っ暗になるのを感じた。  


 『少子化対策特命担当大臣』 

 超深刻な少子化に喘ぐサキュバス王国の状況を何とかするために創設された特別職で、規格外の魔力と精力を持った人物に与えられるいわば名誉職だ。身もふたもなく言ってしまえば、子を成すための種馬といってもいいかもしれないが。

 実はサキュバスは種族的に圧倒的に女性が多く、アトランティアでは、5千人の男性サキュバスに対して、女性は1万5千人と、完全に女性が余っている状況。

 しかもその状況で、長らく宰相がサキュバスの出国を禁じてきたため、結果として未婚のサキュバスが増加。さらには、他国へのサキュバス流出を避けるために、他国人との婚姻を禁じる法が制定されたことが、一層の少子化に拍車をかけてしまっているのだ。

 当然、複数のサキュバスを相手にするなど、常人に務まるはずもなく、一時期女好きの騎士団長も兼任したことがあるのだが、三日と持たず辞職したほど過酷な役職なのだ。

 それゆえ、大臣には絶大な権限が与えられて、適齢期の独身サキュバスには拒否権はない。というよりも、国民の義務となっているので、そもそも断る方法がない。元々多数の独身女性たちからの要望で生まれた制度であるからなおさらだ。

 
 だが、どんな人物が就任したのかは知らないが、当然自分も対象者である以上、遅かれ早かれその時は訪れるだろう。せめて素敵な王子様だったらいいなとは思うけれど、問題はそこじゃない。

 『運命の赤い糸』によって、特命大臣に害を為してしまったら、間違いなく罪に問われてしまう。そうなれば、良くて一生牢屋の中、悪ければ処刑されてしまうかもしれないのだ。

 かといって、逃げ出そうにも、ここは空の上の要塞。アリの子一匹逃げ出すことはできない。

(……終わった。私の異世界人生詰んだわ……)


「ま、まあ元気出せヨツバ、俺の知り合いが王宮にいるからさ。事情を話せばきっと何とかなるさ」

 マスターの言葉がありがたくて泣きそうになるが、おそらくそう簡単ではないだろう。

 事情を話すということは、このスキルのことを説明しなければならない。

 もし、この国が宰相によって操られているなら、操作スキルが効かない私を危険視して消そうと思っても不思議ではないだろう。抵抗する手段がない以上、結局運命に身を任せるしかないのだが。


***


「え? 少子化対策特命担当大臣は異世界人なんですか?」

 その後、詳しい情報を調べてくれたマスターによると、新しい特命大臣は異世界人の英雄らしい。

『異世界人』

 この世界の歴史上、たまに現れて、偉業を成している人々。ようするに私の同郷の日本人たちだ。転生した私と違って、異世界人たちは転移する形でこの世界にやってくるので、見た目はそのまま日本人だと思う。

 様々な伝説やおとぎ話に出てくるので、知らない人はいないし、憧れの存在なのだが、まさか本当に存在していて、実際に会うことになるとは思わなかったよ。

 でも、宰相のゲスマルクが黒髪で異世界人ではないかと噂されていたけど、たしかにそれっぽかったから。その異世界人もあんなクズ男なのかもしれない。いやむしろその可能性が高いよね?

 普通に考えたらこんな役職に就任する時点でエロ魔人確定だし、きっとあっち系のチートスキルでハーレム作ってる人なんだろうなと想像してみる。

 駄目だ……一瞬同郷人で良かったって思ったけど、良いところが見つからない。あ、でも英雄っていわれているぐらいだから、話せば見逃してくれたり……うーん、せめてオラオラ系勇者タイプじゃないといいんだけど。

 ヨツバの苦悩は深まるばかりだった。


***


(なんで、私の順番がこんなに早いんだろう……)

 せめて少しでも時間が稼げればなんて思っていたら、その日のうちに招集がかかってしまった。もうなるようにしかならない。諦めの境地で王宮へと向かう。

 もちろん、無駄だとは思ったけど、王宮に行く以上、ちゃんとお風呂にも入って、正装である一番エッチなビキニアーマーを着る。なぜビキニアーマーが正装なのかと、宰相を小一時間ほど問い詰めたい気分だよ。まあ分かってしまうのが罠だけどね?

 
 王宮に到着すると、すでに多くの見目麗しいサキュバスたちが集まっていた。

「あっ、ヨツバ~! 久し振り!」

 声のする方を見れば、幼馴染の友人の姿が。うーん、エロい。未成熟ボディなのにその色気はなんなんだ。自分の貧相な双丘と見比べてため息が出てしまう。ええ、色気ゼロで悪うございましたね。

「楽しみだね。噂ではすごくカッコイイ人みたいだよ? 第一王女殿下と第二王女殿下のお婿さんになるんだって」

 何それ……王女ふたりとも娶るとか意味がわからないんだけど? それになぜそんなに嬉しそうなんだね? ミテラさん? 強制的に孕ませられるんですけど? ちょっとドキドキしてるのは内緒ですけど。

 そうか……格好いいのか……いやまて、私にはスキルがある。この場合は邪魔なスキルが!? 格好良かろうが悪かろうが、私には関係なかったね。

 
 でも、ひとつだけ気付いたことがある。ミテラの様子が以前の状態に戻っている? 一時的なのかわからないけど、操り人形めいたところが全く感じられない。もしかして、英雄のおかげ? 少しだけ希望の灯がともる。期待していいのかな?


***


 特命大臣の仕事場は、王宮の中でも一番上等な寝室らしい。

 それはまあいいとして、この人数はいったい? 集められたサキュバスの数はおよそ100名。

 過去のケースだと、多くても一日10人程度だったらしいから、まさに規格外。

 
 出来れば内密な話をしたかったから、一対一が良かったけど、国の現状を考えると仕方ないのかな。初めてなのに複数とか、妄想が止まらないけど、やっぱり現実となると怖いよ。


「では、一人ずつ順番でお願いします」

 係りの人の合図で順番に部屋に入ってゆくことになったけど、え? 結局一対一なの? 意味がわからない。

 中の様子は、防音がしっかりされているからか、全く窺い知ることはできないけど、1分おきに出てくる子たちは、全員夢心地で幸せそうな表情をしている。一体中で何が起きているんだろう?

「じゃあ、ヨツバ、お先に!」

 ミテラが呼ばれて入ってゆく。

 ――――1分後、

「……ヨツバ、ミテラ、カケルしゃまのお嫁さんになりゅの……ううん、専用サキュバスでもいいからなりたいにょ……」

 ミテラよ、何があったんだい? 目が完全にハートマークになってますよ?


「では、次、ヨツバさん入ってください」
「ひゃ、ひゃい!?」

 突然呼ばれて声が裏返ってしまう。


 口から心臓が飛び出そうなほどの緊張感と、一体どうなってしまうのかという不安。そして、中で待ち受けるシチュエーションに内心期待してしまっている自分に困惑しながら、ヨツバは足を踏み出すのであった。

 



 




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