異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収集つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~
アトランティアの伝統装束
 ところで、どうやら婚約者たちの間で、俺に同行するとむふふな展開になりやすいとか何とか、根も葉もない都市伝説レベルの噂話が広まっているらしく、余計に参加希望者が増えたようだ。
まったく……全部事実だけどね。その通りだけどね。否定できる要素ゼロだけどね。
でも、今回は観光目的ではないので、涙を呑んで、心を鬼にしてメンバーは最低限にしようと思う。入国に関しては、リリスがいるから基本フリーパスだし、別の機会に観光で訪れればいいだろう。
転移する方法もあるけど、不法滞在は心から楽しめないから出来るだけ使わないつもりだ。
結局メンバーは、俺、リリス、リノ、ミレイヌ、アリサ、セレスティーナ、美琴、そして食料品店のカミラさんとなった。カミラさんは、里帰りだよ。
リノ、ミレイヌ、アリサに関しては、この日のためにわざわざ苦労して休みを取っていたらしいので仕方なく。セレスティーナは護衛枠……というのは表向き。可愛くおねだりされたので断れなかっただけだったりする。美琴は勇者だから仕方ないし、いざというときにミコトさんがいるのは心強いからね。
ちなみに、いつものように、二人の専用メイドと契約精霊のミヅハとモグタンは数には入れていない。
というわけで、やっぱり結構な人数になってしまったけど、最後の条約参加予定国のアトランティアに出発だ。
***
『ふふふ、また我の力が欲しいようだな、主よ。よかろう、はるか東の果てにあるという理想郷に連れて行ってやる』
いや、クロドラさん……行先はアトランティアでお願いします。すっごく気になるけど、理想郷めっちゃ気になるけども。
フリューゲルがしばらく留守なので、クロドラの機嫌はすこぶる良い。
人型の竜人美女のはずなのに、尻尾をちぎれんばかりに振っているので、黒い犬にしか見えないのが罠だ。
「じゃあ、ちょっとカミラさんを迎えにいってくる」
「ちょっと待って下さい、御主兄様。私も行きます」
ジト目のクロエが付いてくるという。くっ、なぜだ。
ついでにカミラさんとイチャつこうなんて思っていませんよ?
***
二人でプリメーラの街を歩く。
「御主兄様、こうしていると、初めて街へ出た日を思い出しますね!」
無邪気に笑うクロエの言葉にはっとする。そうか……クロエはだから付いてきたんだな。
「そうだな。初めての街、初めての冒険者ギルド、初めての買い物。初めての依頼。あの時は、この世界のことが何も分からなくて、クロエがすごく頼もしかったよ」
お金の価値や使い方も教えてもらったんだよな。そんなに前のことじゃないのに、もう何年も昔のことのように感じてしまう。カミラさんのお店に行ったのも、その時だったっけ。
「ふふっ、私にとってあの日は人生最良の日だったんですよ。絶望の中で折れそうな心を御主兄様は救ってくださいましたから」
朝の陽射しを受けて輝く白銀の毛並みがそよ風に揺れている。彼女の横顔とどちらが美しいだろうか、なんて、答えの出ないことを思わず考えてしまう。
「俺も初めてクロエに出会った日は忘れられないよ。地上にも女神がいるんだって驚いたんだぜ?」
「……御主兄様は、もともと忘れない体質なのでは? でも……ありがとうございます。本気かどうか、私には匂いでわかりますから……」
頬を染め、潤んだ瞳で俺を見つめるクロエ。
「……クロエ」
「はい……御主兄様」
「……あそこに新しく出来たモーテルがあるんだが……」
「……悪い御主兄様です」
悪戯っぽく、それでいて嬉しそうに腕を組んでくるクロエ。
ちょっと寄り道散歩道。やはりこの街に居を構えるものとして、常に最新の情報を収集することは必要不可欠だよな。
***
「あら、カケルさん、クロエちゃん。待ってたわ。出発の準備は万端よ」
いつものように、食料品店『夢の食卓』店主のカミラさんが出迎えてくれる。
「「…………あの、カミラさん? その恰好は一体?」」
紫のビキニアーマーに身を固めた(……いや固めてないよね。防御力下がってるよね?)ハーフサキュバスに動揺する俺たち。
「ん? ああこれ? サキュバスの伝統装束よ。せっかくの里帰りだから、ちゃんと正装しないとね」
カハッ!? ば、馬鹿な……ビキニアーマーが正装だと。俺は……住む国を間違えたのかもしれない。
「すごく似合ってて、とってもエロ……いや、素敵ですよ」
「うふふ……カケルさんならそう言ってくれると思ってたわ。ありがとう」
カミラさん……その格好で抱き着かれると色々としんどいです。クロエも噛みつかないでくれ。
って、ちょっと待てよ!? もしかして……
「カミラさん! 正直に答えて欲しいんだ」
「ふえっ!? ど、どうしたの? そんな真剣な顔をして……何かしら?」
「サキュバス王族の正装もやっぱりビキニアーマーなのか?」
「「…………」」
あれ? なんか空気がおかしいぞ。おかしなことを言った覚えはないんだが。あ、やばい……そもそもビキニアーマーって完全に向こうの世界の言葉だよな。
「ぷっ、くくくく、そんなのリリス様本人に聞けばいいのに」
いや、本来はそうなんだが、どうも俺が知っているアトランティアと少し変わっているみたいなんだよな。だから多分リリスも知らない……いや知っているのと違う可能性があると思うんだ。
「残念だけど、王族はビキニアーマーじゃないわ。っていうか、よくこの衣装がビキニアーマーだって分かったわね? 知る人ぞ知るものなのに」
……ビキニアーマーで通じるんですね。たぶん広めた人が、異世界人だったか、あるいは勇者学院の出身なんでしょうね。いずれにしても偉人であることには違いないが。
「そう……ですか」
自分でもびっくりするくらい落胆した声が出てしまう。
何やってんの俺えええええええ!? なんでそんな悲しそうになってんの? これじゃまるでがっかりしたみたいじゃないかああああ!? まあそうなんですけどね。
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