異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収集つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~
朝から天国
朝、心地良い感触とほのかな甘い香りに目を覚ますと、外がすでに明るいことに驚いてしまう。
 最近は暗いうちから朝の鍛錬を欠かしていなかったので、寝過ごしたことに少しだけ罪悪感を感じてしまうけれど。
(こんなに熟睡したのはちょっと記憶にないぞ……)
異世界に来てからは、どこか気を張り詰めていた部分があったからな……
それにしても、身体が軽い。頭も冴えているし、控えめに言っても絶好調だ。睡眠の大切さが身にしみるよ。
さて……それはともかく、この状況。一体何があった?
同行メンバーがいるのは、まあ分かる。顔に柔らかいものを押し付けながら乗っかっているルシア先生とシルヴィアも、重いけど、息が苦しいけど、なるほどと思わなくもない。首に巻き付いているモグタンは謎だが……
でも、何でここにいなかったはずのアリエスが隣で寝てるんだろう?
『おはようカケルくん』
(うわあ!?)
アリエスの寝顔を覗き込んでいたら、パチリと目が開いて思わず大きな声を出しそうになった。
「い、イリゼ様?」
『うふふ、貴方の可愛いイリゼよ?』
自分で可愛いと言っても全然OK。可愛いんだから仕方ない。ああ、抱きしめたい……けれど動けない。
『あら、良いのよ。カケルくんはそのままで』
身動きが取れない俺に、悪戯っぽく笑い、キスをしてくるイリゼ様。幸せのゲージが上限突破している。
『……カケル、こっち向いて』
反対側からはミコトさんがキスしてくる。ああ俺、明日死ぬな。幸せの過剰摂取で。
並みの男なら、どっちを選ぶか迷うところだが、俺には平行動作がある。
二人の女神にサンドイッチされながらの目覚めからのイチャイチャとか、最高だよね。
『あら、残念……時間切れね』
『カケル、たまには休みなさい』
天国のような時間は長くは続かなかった。二人の女神が消えて、入れ替わりでアリエスと美琴が目を覚ます。
「ふぇっ!? これはどういう……んむぅ!?」
「……おはよう先輩……って、んむぅ!?」
とりあえずキスをして黙らせる。みんなが起きたら面倒だからな。
……すまん。本当はなんとなく格好良いから言ってみたかっただけだ。キスで黙らせるとかヤバくない?
「英雄殿……突然でしたから心の準備が……もう一回お願いします」
「仕方ない奴だなアリエス。一回だけだからな?」
破壊力抜群の聖女の祈りに、敬虔な女神教信者の俺が応えない訳にはいくまい。
「先輩……おかげで色んなところが目覚めちゃったんだけど、責任取ってね?」
「仕方ない奴だな美琴。動けないから好きにしてくれ」
可愛い後輩勇者が困っているのに、英雄たる俺が協力しない訳にはいくまい。
***
「ねえベルちゃん、皆さまどちらにいらっしゃるのでしょうね?」
朝食の時間になっても降りてこないカケルたちが気になるマーガレット王妃。
「ふふっ、きっとカケル殿の寝室ね。朝から元気なんですから……」
想像力豊かに頬を染める王妃ベルファティーナ。
メイドが呼びに行くのを止めて、マーガレットと二人で様子を見に行くことに。
「ベルちゃん……何だかドキドキしますね」
「覚悟はいいかしら? ただでは済まないはずですからね」
期待と不安が入り混じった様子で、カケルの寝室のドアを開ける。ノックをしなかったのは、もちろんワザとだ。あわよくば混ざろうという深謀遠慮に他ならない。
「うわあ…………」
「あわわわ……」
二人の予想は概ね正しかったのだが、目の前の光景は完全に想定外。さすがの二人も絶句して固まる。
「カケル殿……これは一体?」
「べ、ベルファティーナさま!? これはその……朝の鍛錬……です」
「あら……そうなのですね」
疑うことを知らないマーガレットは、素直にカケルの言葉を受け入れる。
「マーガレット!? ま、まあ、たしかに鍛錬と言えばそうかしら……」
ベルファティーナもポジティブ王族メンタルで受け止めた。
「すいません、朝食の時間ですよね? 今、みんなを起こしますから」
(どう見ても、寝てるというより、足腰立たなくなっているだけみたいですけれど……)
「ちょっと待って下さいカケル殿、私たちも是非稽古をつけて欲しいのですが?」
せっかくの英雄から学べるチャンスを無駄にする訳にはいかない。それが王族としての責務であり、プライドでもある。
「……分かりました。そこまでおっしゃるのでしたら、アストレアとガーランドの為に一肌脱ぎましょう! すでに脱いでますが……」
「ありがとうございます、カケル殿!」
「感謝いたしますわ、カケル殿!」
「礼を言うのは早いですよ? 俺の鍛錬は厳しいですから、果たして耐えられるかどうか……」
王妃だからといって特別扱いしないというカケルの本気の言葉に気を引き締める二人。
「ふふっ、それこそ無駄な気遣いというものですよ。アストレアの誇りにかけて、弱音を吐いたりしません!」
「わ、私もガーランドを代表する以上、無様な真似だけはいたしませんわ!」
王族として国の名を出してしまった以上、後には引けない。
二人は、互いに顔を見合わせて頷くと、カケルの鍛錬を学ぶため、力強く足を踏み出した。
「あああ……カケルどにょ……も、もう無理でしゅ……』
あっけなく弱音を吐くベルファティーナ。
「あ、あ、あ……も、もう駄目でしゅ……カケルどにょ……あるけましぇん……おんぶ……して?」
幼児退行しておんぶをねだるマーガレット。
決して二人がだらしないのではなく、カケルが熟睡により超回復したことで、手が付けられなくなっているだけだ。
「いやあ、やっぱり朝の鍛錬は気持ちがいいな。さあ風呂で汗をながしましょうか?」
「へ? まさか……お風呂でも鍛錬を?」
「もちろんです。さあ行きましょう!」
婚約者たちと、二人の王妃を抱えて大浴場へ向かうカケル。
(……私、身体がもつかしら?)
(どうしましょう……これ以上鍛錬したらおかしくなっちゃいます……)
朝からしっかり運動をしたおかげで、風呂上がりの朝食はそれはそれは美味しくて、全員しっかりお代わりしたそうな。
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