異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収集つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~

ひだまりのねこ

王族の務めと王妃の権利


『貴方様、晩餐会が終わったわ。迎えに来てね』

 シルフィから念話が届く。もうそんな時間かって普通は思うところだが、俺の場合は、まだ今日が終わっていないのかと驚いてしまう。なにせ100倍魔法使いまくってましたので……ええ、実に濃密な一日でしたよ? まだ終わってないけどね!?

「じゃあ、シルフィたちと、エルフの従業員たちを迎えに行ってくる」

 せっかく頑張って屋敷を準備したのだから、みんなに喜んでもらえるといいな。

「「「いってらっしゃいませ、ご主人様」」」」

 一糸乱れぬメイドたちの見送りに感心しながら王宮へと向かう。


***


「隊長、久しぶりのエルフ料理は最高でしたね。時代は変わっても変わらない。変化を好まない我々エルフの良い所じゃないですかね」 

 能天気に料理を堪能出来るお前が羨ましいよ。ルフラン。

「それは同意だが、俺はもう隊長じゃないぞ」
「あ、そうでした……じゃあ、エルヴィンさま?」
「……さまは止めてくれ」
「じゃあエルヴィンさん、俺たちどうなってしまうんですかね……」

 能天気なルフランも、さすがに今後のことは気になるらしい。

 俺たちは300年前に、世界樹の調査に派遣されたフォレスト王国の騎士団だったが、もう100年も前にフォレスト王国は滅びたそうだ。

 それを聞いた時は目の前が真っ暗になって崩れ落ちそうになったが、よく考えたら、どうせ知り合いすら誰も生存していないのだから、たいして意味が無いことに気付いてしまう。

 もちろん、帰る国が存在していないという事実は、胸にぽっかりと穴が空いたような気持ちにさせるのではあるが……

「何を言っているんだ? 俺たちは、今日から英雄カケルさまの元で働くのだぞ?」

 そう。行き場のない俺たちに手を差し伸べてくださったカケルさまには感謝しかない。

 廃エルフは、世界樹さまのおかげで歳を取ることも無く、楽園のような生活を送っていたけれど、最近加わったものたちと違い、俺たちのように古参の廃エルフは、すでに帰る国も場所もないのだ。

 突然厳しい現実に直面した俺たちにとって、カケルさまの提案は、まさに渡りに船であったといえる。


「いや、そうじゃなくて、怖いというか、ワクワクするというか……あまりにも規格外なお方でしたからね」

 呆れた様子で笑うルフラン。

 たしかにカケルさまは、なんというか……自由で……そうだな、たしかに規格外なお方だな。

 聞けば、ガーランドの王女二人と騎士団長が婚約者だとか。意味がわからない。おまけに世界樹さまと伝説のエンシェントエルフさまも嫁にしたそうだし、ますますもって意味がわからない。理解しようとしてはいけないのだろう。

「まあ、なるようにしかならないさ」


 そう言って笑うエルヴィンたちだったが、この後連れて行かれた屋敷に度肝を抜かれたのは言うまでもない。


***


 シルフィたちを迎えに行って、今はみんな一緒に大浴場で風呂に入っている。

 正直風呂はお腹いっぱいだが、婚約者たちと一緒なら別腹だ。

「ふわあ……! なんて素敵なお風呂なのかしら……ねえベルちゃん?」

 桜色に全身上気した王妃マーガレットさま。アラフィフなのに未成熟なボディってどういうことなんですかね。イリゼ様に感謝の祈りを捧げる。

「……あの、今更ですけど、なぜマーガレットさまが風呂に?」

 風呂に入るまで質問しなかった俺は悪くない。

「ふふっ、本当に今更ですね? 家族となれば、一緒にお風呂に入るのは当然です。ねえリーリエ?」
「ふぇっ!? そ、そうですね! そのような伝説を聞いたことがあるような気もしないでもないです」

 当然話を振られて挙動不審になるリーリエ騎士団長。

「そうですよ、カケル殿。アストレアでも当たり前ですから」

 アストレア王妃ベルファティーナさまが素晴らしい肢体を惜しみなくさらけ出しながら笑う。

 そして、ここに来て、俺は自らの失態を悟る。風呂水を入れ替えるのを後回しにすべきだったと。

 くっ、過去に戻る魔法はないのか? すぐさまイヴリースに念話で確認する。

 …………無いってさ。

 でも、よく考えたら、マーガレットさまがいるから、風呂で変なことは出来ないじゃないか。


「カケル殿……」

 うおっ!? いつの間にかマーガレットさまが隣にいた。どんだけ考え込んでいたんだ俺。

『私に構わず、いつも通りにしてください』

 身体を密着させて耳打ちしてくるマーガレットさまだけど、言葉が入って来ないんですけど!? 絶対記憶があるから安心だけどね。



(私ったら、何言ってるのかしら……)

 ベルちゃんに誘われて来たのはいいけれど、ドキドキが止まりません。こんなの樹粉症でも経験したことないです。

 ああ……凄いです……お風呂であんなことするなんて……たしかにいつも通りにとは言いましたけれど、もう少し遠慮した方がよろしいのではないかしら? 

 ああっ!? ベルちゃんたら、あんなに気持ち良さそうにして……もう我慢出来ませんわ。


「カケル殿、私もお願いします……せ、洗体」

 ベルちゃんの話では、カケル殿の洗体は、アストレア最高の洗体師を上回る腕前だとか。

「もちろん、良いですよ、マーガレットさま」

 カケル殿は一瞬キョトンとした後、素敵な笑顔でそう言ってくれました。はぁ……癒やされますね。

「はああああ!? 凄いですカケル殿おおぉ!?」

 は、恥ずかしい……皆さまの前でこんな……

 でも本当に気持ち良かったですね。本気で危険なレベルです。ふふふ。

 義理の息子にこんな感情を抱くなんて悪い王妃でしょうか? いいえ、英雄に尽くすのは王族の務め。浮気ではありません。ノーカンです。

 でも、これでは尽くすのではなくて尽くしてもらっただけではないですか……王族として、それでは許されませんね。

 きっちり、たっぷり尽くして差し上げないといけません。
 
 それに……シルフィとサラの母として、夫となる人物を確かめるのもまた、王妃の権利でもありますから。


 ふふっ、陛下に感謝しなければなりませんね。私を20年以上放置して、遊びまくっている悪い陛下に。おかげで何の罪悪感も無く、楽しめそうですわ。




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