異世界行ったら、出会う女性みんな俺を好きになるので収集つかなくなっている ~スケッチブックに想いをのせて 死神に恋した男の無双&ほのぼのハーレム~

ひだまりのねこ

情報にしますか? それとも……キス?


 これから、イソネくんたちを追ってもらうにあたって、キタカゼたち冒険者パーティには、人間界の一般常識ぐらいは持っておいてもらわないと困る。

 実際に町に入り、生活してもらう場面があるかもしれないからね。

 俺の持っている知識がどれほど常識的かどうかは正直わからないが、まあ知識が多くて損することはないだろう。


「じゃあ冒険者として活動するのに必要な情報と、イソネくんたちの情報をまとめて渡すよ?」
『ふぇっ!? まとめてなんて……どうしましょう……私……壊れてしまうかもしれません』

 頬を染めて照れるキタカゼが愛おしい。関係ない情報まで渡したくなってくるよ。

 いつものように、キタカゼと唇を重ねて情報を渡してゆく。情報量が多いので、より長く、よりディープなものにならざるを得ない。これは彼女の希望だから仕方ないよな。濃厚なキスが終わると、すっかり腰砕けになってしまうキタカゼ。

『王しゃま……しゅき、大しゅきでしゅ……』

 毎回言っているような気がするが、ちょっとやり過ぎたようだ。ごめんねキタカゼ。


「ねえ刹那、先輩のあれって、絶対一瞬で終わるやつだよね?」
「間違いない……情報伝達にみせかけてキスしたいだけのやつ」

 刹那たちが何か誤解をまねくようなことを言っているような気がするが、気のせいだろう。


『……なあシュタルク、キタカゼの奴、主と俺に対する態度が違いすぎないか!?』
『ハハハ、仕方ないよシュヴァイン。だって君が主に勝てる要素ゼロだよ?』
『な!? そんなことないだろ? 俺の方が格好良いと思うぜ』

『そう思ってるのはお前だけだぞ? 強さだって比較にもならないしな。何と言っても、このハルクさまが認めている唯一のお方だ。キタカゼはたしかにいい女だが、諦めろシュヴァイン』

『くっ、確かに主は自分大好きな俺から見ても魅力的だからな……キタカゼが惚れるのも無理ねえか』
『元気出してよシュヴァイン。身長だけは主に勝っていると思うよ?』
『……全然慰めになってねえけど、ありがとなハルト……ん? どうした? そんなに怯えて』

 ハルトが真っ青な顔をしてガクガク震えている。

『う……うしろ』
『あん? 後ろが何だって?』

 振り返ったシュヴァインの顔面が陥没し、膝から崩れ落ちる。

『あがががが……』
『……私の名を呼び捨てにするなと言いましたよね? もう忘れたんですか? それともオークには難しすぎましたか?』

 絶対零度の視線で見下ろし、頭をゴリゴリと踏みつけるキタカゼ。

『ひっ、ひいぃぃ!? こ、殺さないで!?』
『安心しなさい。貴方は殺しませんハルト。ハルクは殺しますが』

『なっ!? ふざけるな、なんでこのハルクさまが殺されなきゃならないのだ』
『……聞いていなかったのですか? はぁ……何一つまともに出来ないとは。呼び捨てだけでも許せませんが、私を女として見たことは致命的です。あなた方の頭の中は女のことだけなのですか?』
 
『なっ!? 主だって似たようなものだろうが?』

『王さまは良いのです。むしろもっといやらしい目で見て欲しいくらい……って何を言わせるのです。どうやら先に死にたいようですね?』

 キタカゼの目が光るとハルクがモノ言わぬ氷柱に変わる。

『シュヴァイン、待たせましたね……さあ死になさい』

 巨大な氷の槍が数百本、シュヴァインに狙いをつける。

「はい、そこまでだキタカゼ」
『はーい♡』

『『『『…………』』』』


「よし、次はお前たちにも情報を渡すぞ」

『げ、まさか男同士で!?』
「なわけあるか? ほれ」

 男同士の濃厚接触は勘弁なので、頭突きをかます。ゴツンッという鈍い音がして、額を押さえてのたうち回るシュヴァインたち。 

 まあキタカゼに殺されるよりはマシだろ?


***

 
「じゃあお前たちは、冒険者パーティ『氷の翼』となってイソネくんたちを追ってくれ。俺もしばらくは手が離せないから、焦って接触する必要はないけど、陰ながらしっかり守ってやってくれ。あとフリューゲル!」

『呼んだか主よ?』

「ノルンまでシュヴァインたちを乗せてやってくれ。それとお前も出来るだけ『氷の翼』をサポートしてくれると助かる」
『承知した。任せてくれ……ってちょっと待って主!? 心の準備が……んむむむ!?』

 時間がないので、フリューゲルにも少し強引に情報伝達する。彼女の場合、加えて地図情報もあるので、必然的に長く濃厚なキスにならざるを得ない。
 
『も、もう……主の馬鹿あああ!? 飛べなくなるではないかあああ!』

 ふふふ、飛べないフリューゲルはただの美少女。可愛い可愛い。


「ねえヒルデガルド、御主兄様のあれって、絶対一瞬で終わるやつですよね?」
『間違いないです……情報伝達にみせかけてキスしたいだけのやつです』

 クロエたちが何やら誤解をまねくようなことを言っているような気がするが……すいません。おっしゃる通りでございます。


***


「ツバサ、スズカゼ、ソヨカゼ」

『お呼びですか?』

 キタカゼたちを見送ってから、リーダー格のハーピィを呼び出す。

「ああ、スキル保持者の行方だが、色々分かったから、情報の共有をしたいんだ。キタカゼたちがうまく見つけてくれればいいんだが、ツバサたちも加わってくれれば心強い」

『じょ、情報の共有……』

 ごくりと息を呑むツバサたち。

 え? なんかすごい期待のまなざしだ。これは応えなければなるまい。

 たっぷり濃厚な情報共有をしてから、ツバサたちを送り出す。頼んだぞみんな。


(お兄様、お忙しいところ申し訳ないのですが、皆さま情報共有しようとお待ちですよ?)
(げっ!? 本当だ……ふふふ、まったく困った婚約者たちだな)

 共有すべき情報など実際のところ特にないが、気にしない。 
 
(あの……お兄様、私も情報共有したいのですが……)
(ん? ミヅハは俺のすべてを知っているじゃないか?)
(もう……お兄様のばか……)
(ふふっ、冗談だよ。ミヅハだけちょっと長めにしようか? 二人だけの秘密だぞ)
(はいっ、お兄様……大好きです)


(むぅ……御主兄様が妹と二人だけの秘密を楽しんでいる匂いがしますね。この私を差し置いて!!)

 このあと、クロエにめちゃくちゃかじられた……とほほ。 

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